執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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初恋は香りとともに

小話 カフェ店員の失敗

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お気に入りしてくださり、読んでくれる方、ちらっと流し読みしてくれる方に感謝を込めて
小話 カフェ店員のつぶやきに出てきた副店長のお姉さんの続編です。
お時間ある方は読んでみてください。

いつもありがとうございます。


今日もそろそろかなと、フロアを見渡すと13時を過ぎたぐらいにあの子がやってきた。
「お姉さーん!会いたかったよ」キラキラスマイルで挨拶をする忠犬が一匹。
うちは、指名制のあるお店ではありませんよ。周りに誤解されるような挨拶をするのはやめてくれ。
お前が会いたいのは、肉汁滴る大きめハンバーグのロコモコだ。
「いらっしゃいませ。特製特大ロコモコですね?」
聞くまでもないが、一応聞くのはお仕事だから。
フロアの子の案内を断り、一直線にカウンターへ足早にたどり着き着席したキラキラ忠犬はうんうんと笑顔でうなづき、実際には見えないが後ろのしっぽがバタンバタンと左右に揺れ周りの物を破壊しそうだ。
あ、あちらの落ち着いたお姉様グループがキラキラ忠犬の笑顔に赤面して悶えている。。。。
そうだね。この笑顔はよしよししたくなる可愛さだよね。しかし、この子はなでなでより食べ物を欲しているようですよ。
ランチよりひとまわり大きめのハンバーグを冷蔵庫から出しつつ、あの日から前にも増して頻繁にやってくるキラキラ忠犬に笑いがもれた。
占い師上司とキラキラ忠犬が遅めのランチに来た次の日、ランチの戦場に余裕が出てくる時間帯にほっとした私はキラキラ忠犬の再来店に気づいた。
フロアの空いてる席に案内されたキラキラ忠犬は、着席したがすぐに立ち上がりこちらへ歩いてくる。
トイレかな?なんて思っていると、カウンター前までやってきて、
「昨日の大きなロコモコを食べたいんですけど、ダメですか?
すごく美味しかったから食べたくて今日も来ちゃったんですけど。」
捨てられた子犬のような目で訴えてきた。
カウンター横で出来上がったものをサーブしようとしたホールの子が、「はうっ!」と言って悶えていた。
あのホールの子犬派だったね。スマホの待ち受けはペットのコーギーの子犬タロウ君。
お腹を出して、短い後ろ足をぱかっと広げ、これまた短い前足が飾りのように折りたたまれて胸の上に。そして、舌がはみ出ちゃってるけどニッコリ笑ってるような顔。大きなくりくりお目目とよく聞こえそうな大きな耳は確かに可愛い。
スマホ画面を見せつつ、可愛いでしょう!?と前のめりに訴える在りし日の彼女を思い出した。
そんな彼女が、キラキラ忠犬の願いを叶えないはずはないのだ。
「副店長!ありますよね!ハンバーグ。なんならランチ用のロコモコ2個あげちゃえばいいんじゃないですか?すごくお腹が減ってそうですよ!」また、前のめりに訴えてきた。
ロコモコが2個だと、ランチ代2倍だよ。ちょっと落ち着こうね。どうどう。。
「ランチ代300円プラスで、昨日と同じ感じでいいですか?」
優しい私は彼の要望をきいてあげることにした。
キラキラ忠犬は満面の笑みで、
「お姉さん、大好き!」と言った。
フロアの子が羨ましそうにこちらを見ていた。
今なら飼い主の権利、差し上げます。

そんな感じで、キラキラ忠犬はほぼ毎日13時過ぎにやってくる。
常連客の確保に成功したようで、何よりだ。もともと、常連だったけどね。頻度がさ。
そして、カウンターに座る。
キラキラ忠犬は私がハンバーグを焼く姿をヨダレを垂らして待っている(ように見える)
ハンバーグが大きい為、普通のランチのロコモコより多めのソースにちょっとマヨネーズと粉チーズを追加し、味が飽きないようにする。そして、極め付きはトロトロとしたオレンジ色の半熟玉子。玉子にスプーンを差し入れたら、ハンバーグの上にトロッとオレンジ色が広がります。
キラキラ忠犬は出来たよーと出すと、ものすごい勢いでかぶりつく。
作る身としては、その勢いはつい微笑むほど嬉しいんだ。
しかし、毎日食べて飽きないんだろうか?それに野菜、足りないよね。
心配になった私は、ついディナータイム用のサラダを小皿に入れて
「たまには野菜も食べないとダメよ。」と出してしまう。
毎回はまずいから3回に一回ぐらいにしてるけど、キラキラ忠犬の健康が気になるぐらいには私もだいぶ飼い主化してきてしまったようだ。

そういえば、キラキラ忠犬に言ってないことがある。もぐもぐ食べてる忠犬に

「私、来週で他店に異動なんですよ。異動って言っても、山手線の駅ですけど。」
と私の予定を告げる。

キラキラ忠犬は驚いて目を開いた。口はもぐもぐしてるけど。
「ん、モグ、、そうなんですか!!いつですか!あ、来週?来週のいつですか?」

キラキラ忠犬はあたふたしながら聞いてきた。
大丈夫だ。君の心配をお姉さんは取り除いてあげたから。
「金曜日なの。ディナータイムの手伝いをちょっとして、店長が来る18時ぐらいかな?
あと、君が食べてるロコモコはメニューに載せるように店長に頼んだから心配しなくていいよ。」
にっこり笑顔で伝える。

私は思ったのだ。おしゃれカフェとしては女子の来店を予想して普通サイズのハンバーグを載せていたが、実際、場所柄リーマンも結構くる。身体の大きな男子はこのサイズ感では物足りないんじゃないか。であれば、メニューに大きめのロコモコを載せれば、客単価が上がり、お客様も満足という素敵なスパイラル。
そう思い先日、店長に相談した。
店長はハンバーグの数が人的理由でこれ以上増やせないのにどうするんだと言ったので、
「肉好きには、ステーキでも出したら良いんですよ。」と言ったら、
「お前、ステーキに謝れ!」と怒られた。
塩胡椒で味付けして、美味しそうなソースつけて出したらいいじゃんと思ったが、なかなか難しいようだった。
ステーキだと焼き加減もあるし、柔らかさを求めると原価が上がる、原価が上がるとお客様は悲しい。そして、客単価下がって、店悲しい。あ、負のスパイラル。。。

「まあ、ランチの件は、おれも思うところがあるから、メニューに大きなロコモコを載せてもいいと思う。ステーキについてはディナータイムの調理スタッフと相談する。」
店長は一応意見を聞いてくれたようだ。
これで安心して異動できる。私がいなくてもキラキラ忠犬がお腹を空かせる事はなさそうだった。

「えー!なんだか急ですね。。。せっかく仲良くなれたのに。」
キラキライケメンがしょんぼりした。見えない耳がぺこりと下を向いたように見える。
その後、ガバッと顔を上げ
「金曜日、送別会とかありますか?なかったら打ち上げしませんか?僕いいお店知ってるんですよ!」
キラキラ忠犬はまた子犬のような目をした。
うーん、どうしようかな。キラキラ忠犬に誘われ悪い気はしないが。。。
「こないだ飲み会した場所なんですけど、すごくオシャレで、ご飯も美味しかったし、デザートもケーキとかタルトとかがてんこ盛りで出てくるけど、めっちゃ美味しいんです。割引券もあるし、ぜひ行きましょうよ!」
畳み掛けるキラキラ忠犬に、ちょっと絆され「じゃあ、送別会は別日だし、行ってもいいかな。」そう言ってしまった。別に、デザートと、割引券につられたわけじゃないよ。

しかし、その判断が失敗だったと後悔したのは、このお店での最終日、仕事を終えキラキラ忠犬が18時過ぎにカフェに迎えに来て、おしゃれ居酒屋に飲みに行った翌日の事。。。

「。。。やばい。。これはやり過ぎた。」

目の前には全裸ですやすや眠る、キラキラ忠犬。今は、汗をかき、髪は乱れおでこに張り付いている。目元は赤くなり、口は半開きだがなんだか満足そうに笑っている。ベッド脇には脱ぎ散らかした服達。キラキラ忠犬の体躯に見合ったブツにはゴムが付いたままで、先ほどまでの元気さは無くなっている。

私は、全裸のまま頭を抱え昨日の夜を思い出した。
昨日は最終日で、5年務めた店舗からの異動にちょっと感傷的になりつつも花束なんかもらっちゃって、ちょっと涙目になっていた。そんなところに、キラキラ忠犬が迎えに来て恵比寿のお洒落な居酒屋へ行った。
うん、ここまでは大丈夫だった。
そのあと、明日から有休を消化してからの新店舗への異動に私のテンションは盛り上がってしまい、いつもより飲んだくれたかもしれない。
これがいけなかった。
忠犬もなんだかかわいく呑んだくれ、フラフラだったのでタクシーに押し込んだが、なんだかんだと一緒に乗り、忠犬の部屋まで来てしまった。そして、暑い、苦しい、服脱がせて、そんな感じで、ベッドの上で服を脱がせてあげると、綺麗に引き締まった細マッチョの肉体が。
最後に致してからだいぶ経っていた27才女子には目に毒だった。
つい引き締まった腹筋を両手でなで、ついでに胸筋も優しくなでさすってしまった。
「はあ、気持ちいいです、お姉さん。」
キラキラ忠犬が顔を赤らめ、切なげに言った。
なんだかかわいい。。そう思った私は大胆になり、首筋を舐めあげ胸筋を楽しんだ手で忠犬くんの乳首をクルクルしてみた。
「っ!!お姉さん、やばいっす。たまんない。もう、俺、、。」
真っ赤な顔で泣きそうになる忠犬。
ベッドの上で忠犬くんにまたがっていた私は彼の下半身の事情に気がついた。
やべえ、そそる。そう思った私は、酔っていたんだと思いたい。
そのあとは、
「お姉さんにゴムつけてもらうなんて、、、ぐっ。はぁ、、。やばい。」とか、「そんなとこ、やばいから」とか、「気持ちよすぎて死ぬ、いやまだ死ねないっ」とか、、、、
めくるめく自分の乱行と忠犬くんの痴態。

やり過ぎた。。
何も、彼の後ろの秘密の場所をこしょこしょくすぐったら、焦って「ダメ、ダメだから!」って言うのに、私の中に入ってる忠犬くんが本人の気持ちとは裏腹にビクビクしてるのが可愛くて、小指の先をちょっと入れてみて、忠犬くんの上で艶めかしく腰をグラインドさせ攻め立てたことじゃないよ。
相手が寝落ちするまでヤッてしまった事だ。
忠犬君のかわいさゆえに調子に乗ってしまったのだ。

「許せ、忠犬。」
そう言いつつ、後ろめたさから忠犬のブツからゴムを取り、タオルで拭き綺麗にしてやり掛け布団をかけてあげる。脱ぎ散らかした服をたたんであげ、自分はささっと身支度を整える。
部屋の鍵は先程、テーブルにあったと思い出し、鍵をかけたらドアポケットから入れてあげることにした。
まあ、もう会うこともないし、忠犬も気持ちよさそうだったし、、、大丈夫だよね?
そう思うことにして、すやすや眠るキラキラ忠犬の家から駅へ向かい、始発前の駅でタクシーを捕まえ家に帰った。



作者から
書いててたのしくなってしまい、長くなりました。
最後までお読みいただいた方ありがとうございました。



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