執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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初恋は香りとともに

心と身体

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冴木課長視点

「課長!私は課長の外見も中身も好きですよ!」

彼女は前かがみになりながらこちらに訴えかけるよう迫って言った。


もう、ガブっと彼女を食べていいよね?


彼女は言い切った後、はっと自分の言葉の意味を自覚して、じわじわと顔を赤くしキリッとした目元を困ったようにしならせ、あたふたと何か言っている。
きっと俺の顔もじわじわとつられるように赤いだろう。そんな事はどうだっていい。

彼女が俺を好きだと言った。俺も彼女が好き。しかもかなり重めに。
こんなカフェのカウンターで襲いかかったら、君の痴態を多くの人に見せてしまう。俺は、宝物は独り占めしたいタイプだからそんな事はしない。こっそり一人でじっくりと愛でるんだ。あ、この場合は君と二人か?
腹は空いているが、このまま今すぐ彼女を抱えて店を出て、会議室に飛び込み鍵をかけ、まずは君のかわいいつるりとした膝小僧を思いっきり舐め回す。そして両手を彼女の太ももに滑らせ、スカートの中に差し入れる。そして、、、、、、、
以下自主規制


昼だからね。分かってるよ。午後は会議があるし。
「分かってる。大丈夫だ。」
彼女にも優しく笑顔で答える。間違っても、本心は言わない。
俺の今の頭の中身は君に好いてはもらえないだろう。残念だが。
君の言う『好き』はどうせ俺のとは違う。
分かってる。
すごく分かってる。
本当によく分かってるんだけど、にやけた顔を戻せないぐらい嬉しい。
彼女が俺の為に、また言い返そうとしてくれたから、嬉しくて、うっかり、膝小僧の感触を堪能してしまったが、俺の頑張りを彼女にもっと知って欲しくなった。できれば、その俺を認めてくれる気持ちが男として意識してくれる様にと願いつつ。

俺の言ってもしょうがない苦労を彼女に話す。見目の良さは若い頃はまだ良かった。
女の子はほっといても次から次に来るし、勉強だって、あいつ顔だけだって言われるのが嫌で必死にやったら、有名大学に受かり、就活だって楽勝だった。
でも、就職してからは見目は煩わしいものになった。同期の女やキラキラ女子が騒ぐから、先輩にいじめられるし、上司にチャラチャラすんなと叱られる。努力して必死に契約をとっても、見目のおかげと言われる。そして、極めつきは重役の親族の女に言い寄られ、手厳しく断ったら、ストーカー化され、2課に左遷された。
もう、女はこりごりだった。
彼女に会うまでは。

「俺も加藤が好きだよ。外見も中身も。」
伝わらない思いを込めて、爽やかな笑顔で言う。
俺の『好き』は、君を熱くドロドロにして、二人で溶け合ってしまいたいんだ。
君の『好き』とは種類もレベルも違う。

でも、今日一つ分かったこと。
俺は身体だけじゃなくて、彼女の心も欲しい。彼女の心と身体、全部。

「っ!あ、ありがとうございます。。。」
真っ赤な顔で彼女は言う。
その赤く染まった美味しそうな頰もいつかは舐め回したい。。。
だめだな。健全な理性よ、戻ってこい。お前の出番は今だろう。

ほかほかと美味しそうな彼女のパスタと、俺の玉子が二つ乗せられたロコモコがやってきた。違和感を感じてカウンターで作業する店員を見ると、
「サービスです。カウンターにお座りいただいたので。」
にっこりと言われ、彼女には生クリームの乗ったプリンが出された。
。。。これは、カウンターに座っただけじゃないんだろうな。カウンターだから会話が聞こえたんだろう。
「ありがとう。」
気恥ずかしさを感じつつ好意に礼を述べる。
彼女も礼を言うが、きっと気づいてない。そんなところも可愛く思えるのだから、俺は彼女に溺れてるんだろう。

半熟玉子がとろりとかかった肉汁の滴るハンバーグをガツガツと口の中に放り込みながら、横目に彼女を見つめる。彼女が、行儀よくスプーンとフォークでトマトパスタを口に入れる。くるくると器用にフォークを使うが、唇についたトマトソースをペロリと赤い舌で時折舐める。
彼女の心が欲しいと言いつつ、その可愛らしい舌に性懲りも無く色々と妄想する俺。
いろいろと無自覚な彼女が悪いのか、それとも俺の頭がおかしいのか。

川上部長の言った言葉を思い出す。
「せいぜい振り回されろ」
めちゃくちゃ振り回されてますよ、部長。
でも、振り回されるのに幸せを感じてます。




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