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番外編 キスとぬくもり 安藤課長編
2 明るみになるもの 安藤課長編
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週明け月曜日、朝からうだる様な暑さの中最寄りの駅から会社までの通りを歩く。
始業9時前でも暑すぎる日差し。
そんな中小ぶりの黒レースの日傘を差し7センチヒールで軽やかに歩くのは、本日も麗しい安藤課長。
本日は夏らしい白のワンピースタイプのスーツで武装した安藤課長は、周りの皆が汗を拭きつつ歩く中涼しげな笑みを浮かべ、社内の人間にも気軽に挨拶に応える。周囲はついそんな姿に目を惹きつけられてしまう。
安藤課長視点
「おはようございますっ。」
「・・おはよう。」
少しだけ首をかしげるのも忘れない。
既に何人目か分からないが名前も知らない男性社員に挨拶を交わす。
このクソ暑い中挨拶なんぞ社内で十分だというのに、律儀な事だ。
でもにこやかにお応えするにはそれなりの経験と理由があるからだ。
そこそこ綺麗な女が挨拶もそこそこに冷たくしたら・・
「なんだよ、気取りやがって!」という事態を引き起こす。
で、にこりと甘い笑みを浮かべれば、
「もしかして、俺のこと・・。」という事態もよくあるので、選挙の立候補者の様に皆平等に全ての生き物に愛を持って接するのが私の処世術だ。
だって無闇に敵を作りたくないし、それなら嫉妬ぐらい可愛いもんよ。
まあ、どうしたってこの外見は変えられないしね。
口元に笑みを浮かべつつそんな事を考えつつぎゅうぎゅうなエレベーターを降りると、すっかり癒しの空間となった二課のドアを開ける。
「おっはよー。」
ゆるーく皆に挨拶をする。
今日は谷口さんもお休みだし、のんびりモードよねぇ。
「おはようございます。」と既にお仕事モードな山城。
「あ、おはようございまーす。アイスコーヒー入ってますよ。」とキラキラな忠犬宮本。
ゴクゴクとアイスコーヒーを飲み干し、「はあ・・、生き返る。」なんてため息をついた時、
「・・あれ、佐々木さんは?」と気づく。
いつもなら「今日もどれだけ惑わしてきたのっ!?」なんていうツッコミが入るのに。
「あー、なんかあったらしいですよ。」と苦笑いの宮本。
?なにか?トラブル?そう思い給湯室を覗くと、
プルプルと震える背中。
え?まさか泣いて?
「どうしたんで「安藤課長!!!!」
ものすごい勢いで腕を掴まれた。
「えっ、な、何?」
あまりの勢いにたたら場を踏むと、
「これ!」
顔を赤く染めた佐々木女史がずいっと目の前に出したのはピンクのカバーが可愛い彼女のスマホ。
その画面いっぱいに広がるのは・・。
「なっ・・!」
中折れハットを目深にかぶりながら、至近距離で隣の女の顔を覗き込み口元に笑みを浮かべる・・あのかわい子ちゃん。
画面には移り切れていないが、そんなかわい子ちゃんと手を繋ぎエレベーターで部屋まで行ったのは・・
間違いなく私だ。
な、なんで佐々木女史がこれを!?
え、あのホテルに泊まって?
いや、結婚式帰りにあのホテルに泊まるって言ったら
「いいなあ、いいなあ。オトナ女子がホテルで一人・・。これは妄想爆発しちゃうっ!!」って悶えていたけど、旦那さん迎えに来てたし。
・・じゃあ、他の誰か?
驚きに表情が抜け落ち、頭の中が高速回転していると、
「やっっぱりぃ!?もうっ!もうっ!文子大興奮っ!なになに、やっぱり出会いはバーなの?
「帰したくないな」←いい男風な佐々木女史の自演。
的な?いやーんっ!KAIはやっぱりかっこいいの!?ですよねぇぇっ!!!」
佐々木女史の興奮マックスに、ポカンと真顔になる。
「・・えーっと。KAIって・・誰?」
「!!!」
・・お目目落ちそうですよ、佐々木さん。
そこから佐々木さんからあのかわい子ちゃんの個人情報が明らかに。
名前はKAI
年齢24
職業モデルでデビューしたそうだが・・、
「パリコレ出た時にね、日本の映画監督に見初められてちょい役ででたのよ。小説が原作で主人公の過去の男役。死んじゃうんだけどさっ、もうっそれがやばいのっ!今度見て!!
で、そしたらっあの美貌でしょ!?あのスタイルでしょ!?一気にあの子は誰だってなって、今回スペシャルドラマに主演が決まって帰国してきたのよっ!」
興奮して前のめりになる佐々木女史。
「・・。」
頭痛がしてふわっと天を仰ぐ私。
や、やべえのに手ぇ出した・・。
気は遠くなりかけたが、画像について気になったので確認すると、ファンらしき子が土曜日の夜ツイッターに載せたらしいが後ろ姿じゃ確証はなくガセかと過ぎたものの、日曜日の朝の生放送番組にゲスト出演した時の服装が、この服だったそうで一気に画像が回ったと。
朝、焦ってたのは生番組に遅刻しそうだったからか。
頭に不穏な着信音が鳴り響く・・。
ネットニュースには、
「KAI、帰国早々お持ち帰りか!?」
「美貌のモデルの熱帯夜!」
「注目の大型俳優の夜遊び」面白おかしく記事が踊る。
・・目にも頭にも痛い。
っつーか、勝手に写真撮って、勝手に記事書いて・・。
まあこれが彼らの仕事か。
「はぁぁぁ。」
自分の甘さにため息が出た。
私、これ逃げ切れるの?・・ゲーノージンめんどくさすぎるでしょ。
始業9時前でも暑すぎる日差し。
そんな中小ぶりの黒レースの日傘を差し7センチヒールで軽やかに歩くのは、本日も麗しい安藤課長。
本日は夏らしい白のワンピースタイプのスーツで武装した安藤課長は、周りの皆が汗を拭きつつ歩く中涼しげな笑みを浮かべ、社内の人間にも気軽に挨拶に応える。周囲はついそんな姿に目を惹きつけられてしまう。
安藤課長視点
「おはようございますっ。」
「・・おはよう。」
少しだけ首をかしげるのも忘れない。
既に何人目か分からないが名前も知らない男性社員に挨拶を交わす。
このクソ暑い中挨拶なんぞ社内で十分だというのに、律儀な事だ。
でもにこやかにお応えするにはそれなりの経験と理由があるからだ。
そこそこ綺麗な女が挨拶もそこそこに冷たくしたら・・
「なんだよ、気取りやがって!」という事態を引き起こす。
で、にこりと甘い笑みを浮かべれば、
「もしかして、俺のこと・・。」という事態もよくあるので、選挙の立候補者の様に皆平等に全ての生き物に愛を持って接するのが私の処世術だ。
だって無闇に敵を作りたくないし、それなら嫉妬ぐらい可愛いもんよ。
まあ、どうしたってこの外見は変えられないしね。
口元に笑みを浮かべつつそんな事を考えつつぎゅうぎゅうなエレベーターを降りると、すっかり癒しの空間となった二課のドアを開ける。
「おっはよー。」
ゆるーく皆に挨拶をする。
今日は谷口さんもお休みだし、のんびりモードよねぇ。
「おはようございます。」と既にお仕事モードな山城。
「あ、おはようございまーす。アイスコーヒー入ってますよ。」とキラキラな忠犬宮本。
ゴクゴクとアイスコーヒーを飲み干し、「はあ・・、生き返る。」なんてため息をついた時、
「・・あれ、佐々木さんは?」と気づく。
いつもなら「今日もどれだけ惑わしてきたのっ!?」なんていうツッコミが入るのに。
「あー、なんかあったらしいですよ。」と苦笑いの宮本。
?なにか?トラブル?そう思い給湯室を覗くと、
プルプルと震える背中。
え?まさか泣いて?
「どうしたんで「安藤課長!!!!」
ものすごい勢いで腕を掴まれた。
「えっ、な、何?」
あまりの勢いにたたら場を踏むと、
「これ!」
顔を赤く染めた佐々木女史がずいっと目の前に出したのはピンクのカバーが可愛い彼女のスマホ。
その画面いっぱいに広がるのは・・。
「なっ・・!」
中折れハットを目深にかぶりながら、至近距離で隣の女の顔を覗き込み口元に笑みを浮かべる・・あのかわい子ちゃん。
画面には移り切れていないが、そんなかわい子ちゃんと手を繋ぎエレベーターで部屋まで行ったのは・・
間違いなく私だ。
な、なんで佐々木女史がこれを!?
え、あのホテルに泊まって?
いや、結婚式帰りにあのホテルに泊まるって言ったら
「いいなあ、いいなあ。オトナ女子がホテルで一人・・。これは妄想爆発しちゃうっ!!」って悶えていたけど、旦那さん迎えに来てたし。
・・じゃあ、他の誰か?
驚きに表情が抜け落ち、頭の中が高速回転していると、
「やっっぱりぃ!?もうっ!もうっ!文子大興奮っ!なになに、やっぱり出会いはバーなの?
「帰したくないな」←いい男風な佐々木女史の自演。
的な?いやーんっ!KAIはやっぱりかっこいいの!?ですよねぇぇっ!!!」
佐々木女史の興奮マックスに、ポカンと真顔になる。
「・・えーっと。KAIって・・誰?」
「!!!」
・・お目目落ちそうですよ、佐々木さん。
そこから佐々木さんからあのかわい子ちゃんの個人情報が明らかに。
名前はKAI
年齢24
職業モデルでデビューしたそうだが・・、
「パリコレ出た時にね、日本の映画監督に見初められてちょい役ででたのよ。小説が原作で主人公の過去の男役。死んじゃうんだけどさっ、もうっそれがやばいのっ!今度見て!!
で、そしたらっあの美貌でしょ!?あのスタイルでしょ!?一気にあの子は誰だってなって、今回スペシャルドラマに主演が決まって帰国してきたのよっ!」
興奮して前のめりになる佐々木女史。
「・・。」
頭痛がしてふわっと天を仰ぐ私。
や、やべえのに手ぇ出した・・。
気は遠くなりかけたが、画像について気になったので確認すると、ファンらしき子が土曜日の夜ツイッターに載せたらしいが後ろ姿じゃ確証はなくガセかと過ぎたものの、日曜日の朝の生放送番組にゲスト出演した時の服装が、この服だったそうで一気に画像が回ったと。
朝、焦ってたのは生番組に遅刻しそうだったからか。
頭に不穏な着信音が鳴り響く・・。
ネットニュースには、
「KAI、帰国早々お持ち帰りか!?」
「美貌のモデルの熱帯夜!」
「注目の大型俳優の夜遊び」面白おかしく記事が踊る。
・・目にも頭にも痛い。
っつーか、勝手に写真撮って、勝手に記事書いて・・。
まあこれが彼らの仕事か。
「はぁぁぁ。」
自分の甘さにため息が出た。
私、これ逃げ切れるの?・・ゲーノージンめんどくさすぎるでしょ。
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