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私がアルベルト殿下と近づくことで流れ始めたエルメア様の悪い噂には、作戦上そのままにしなければならないとはいえ腸煮えくり返る思いだった。必死に我慢していたが、ムカつくものはムカつく。あんなにかわいくて真面目でアホなエルメア様が、私の事をいじめるわけねえだろ!!と声を大にして伝えたかった。作戦だからそんなこと出来ないけど!何も出来ない自分が憎い!!でも事件解決の為だ!
また、エルメア様の悪評が流れ始めると同時に、学園内のご令嬢から私への風当たりは強まっていった。もちろんこれは予測済み。だってエルメア様はご令嬢方にとてつもなく好かれているからだ。
しかし私はそんなことは気にならない。
だってすべてのご令嬢はアルベルト殿下とともにいる私への嫉妬ではなく、エルメア様を傷つける者は許さないという信念のもと私に立ち向かってくるからだ。ありがとう同志たちよ。私もエルメア様を傷つける者は許さない。いつか語り合いたいものだ。
「貴女エルメア様の婚約者である殿下と懇意にするとはどういうつもりなのかしら」とか「エルメア様が傷ついたら貴女を決して許さないわ」とかいう言葉に対して「わ、私そんなつもりじゃ…!アルベルト殿下がよくお声をかけてくださるのでご一緒させていただいてるだけです……!」という言い訳を使う私。我ながら名演技だと思うが、私がご令嬢の立場であればひっぱたく。
また皆さんおもしろいのが、アルベルト殿下はあくまでエルメア様の婚約者と捉えているところ。主体はエルメア様。徹底されている。本当に仲良くなれると思う私達。
「アルベルト殿下にサーラント公爵令嬢はふさわしくない。愛ある二人が結ばれるべきだ」という私に味方してくるふりをしたご令嬢もいたり「サーラント公爵令嬢なら悪質ないじめをやりかねない」と、噂に惑わされて話をしている令息達がいるが、そいつらの顔はばっちり覚えている。君達!あとちょっとで地獄を見ることになるよ!私は全部アルベルト殿下に報告しているから、今後立場が悪くなっても知らないよ!!
そしてそんな周囲の人間模様などどこ吹く風で普通に学園生活を謳歌しているエルメア様が図太くて鈍くてたくましくてますます大好きになってしまう。決して貶していない。褒めている。
平気な顔して学園内闊歩してるし、こんなことがあってもちゃんとアルベルト殿下には会いに行っているというのだから、真面目でかわいい。ただただ自分のするべきことに真っ直ぐ。まあそのせいで父からエルメア様をもっと遠ざけろと指令が出てしまって、アルベルト殿下がエルメア様に暴言を吐くに至るのだが……。図書室で遭遇した後にあからさまにエルメア様から避けられるようになっているアルベルト殿下がかわいそうで、お腹抱えて笑った。心の中で。
マリアベル・モーブは健気で頑張り屋の純真な女の子なので、お腹を抱えて笑ったりしない。
そうして私は伯爵家の人間としてエルメア様を追い落とす悪女の皮を被り、学園ではアルベルト殿下と仲睦まじい女として行動し、その合間に推しを陰から眺めて癒され、伯爵家での情報を殿下達に渡し、中々真相に辿り着いてくれないアルベルト殿下やコーネリアス公爵にしびれを切らして前世の記憶を小出しにしながら、右往左往していた。そうしてやっと全員で真相に辿り着いたという体で悪役たちを追い詰める作戦に持っていくことができた。
そう、やっと王弟ロードレイや父を追い詰める算段がついたのである。アルベルト殿下、王国騎士団、そして私が一丸となって、学園の卒業式の日に作戦の決行が決まった。
学園の卒業式で悪役どもを追い詰めて、なおかつエルメア様の名誉を回復するために「悪役令嬢エルメア・サーラントを断罪」みたいなシーンを作らなきゃいけなくなったことに対しては少し気になりはしたが、私はこれば終わればやっとエルメア様と対面できるとウキウキだったので、少しの疑問は頭の隅に追いやられ、決着の時を迎えた。
しかしまあ、この作戦はうまくはいかなかった。こちらの思い描く通りにエルメア様は動いてくれず、自分は追放で構わないと会場を去っていき、意気揚々と出てきたロードレイや父はアルベルト殿下にボコボコにされ、捕らえられた。いや私の暗躍の意味とは……?となった。というかあんな感じで解決するなら、1年もかけて演技する必要性あった!?というかアルベルト殿下めちゃくちゃ強いな!王国騎士団もドン引きだよ!
王国騎士団に拘束されながら私を口汚く罵ってくる父を冷めた目で見送り、私の役目はあっという間に終わった。……エルメア様に褒めてもらう為に頑張ってきたのに……エルメア様いなくなっちゃったんだけど……。
コーネリアス公爵は事態の収束を待たずエルメア様を追いかけ、その少し後アルベルト殿下はそれを追いかけていった。ちなみにこの時のアルベルト殿下の顔は一生忘れられないと思う。思わず「こっっっわ」と言いそうになった。今まではどちらかというと優しいお兄ちゃん感あったくせに、その時は目がギラギラで王子様がしていい顔じゃなかった。
そして私は一部の王国騎士団の人達と会場に取り残され、その場にいた人々への説明に追われることとなり、気づいた時には朝だった。本当に散々な日だった。
また、エルメア様の悪評が流れ始めると同時に、学園内のご令嬢から私への風当たりは強まっていった。もちろんこれは予測済み。だってエルメア様はご令嬢方にとてつもなく好かれているからだ。
しかし私はそんなことは気にならない。
だってすべてのご令嬢はアルベルト殿下とともにいる私への嫉妬ではなく、エルメア様を傷つける者は許さないという信念のもと私に立ち向かってくるからだ。ありがとう同志たちよ。私もエルメア様を傷つける者は許さない。いつか語り合いたいものだ。
「貴女エルメア様の婚約者である殿下と懇意にするとはどういうつもりなのかしら」とか「エルメア様が傷ついたら貴女を決して許さないわ」とかいう言葉に対して「わ、私そんなつもりじゃ…!アルベルト殿下がよくお声をかけてくださるのでご一緒させていただいてるだけです……!」という言い訳を使う私。我ながら名演技だと思うが、私がご令嬢の立場であればひっぱたく。
また皆さんおもしろいのが、アルベルト殿下はあくまでエルメア様の婚約者と捉えているところ。主体はエルメア様。徹底されている。本当に仲良くなれると思う私達。
「アルベルト殿下にサーラント公爵令嬢はふさわしくない。愛ある二人が結ばれるべきだ」という私に味方してくるふりをしたご令嬢もいたり「サーラント公爵令嬢なら悪質ないじめをやりかねない」と、噂に惑わされて話をしている令息達がいるが、そいつらの顔はばっちり覚えている。君達!あとちょっとで地獄を見ることになるよ!私は全部アルベルト殿下に報告しているから、今後立場が悪くなっても知らないよ!!
そしてそんな周囲の人間模様などどこ吹く風で普通に学園生活を謳歌しているエルメア様が図太くて鈍くてたくましくてますます大好きになってしまう。決して貶していない。褒めている。
平気な顔して学園内闊歩してるし、こんなことがあってもちゃんとアルベルト殿下には会いに行っているというのだから、真面目でかわいい。ただただ自分のするべきことに真っ直ぐ。まあそのせいで父からエルメア様をもっと遠ざけろと指令が出てしまって、アルベルト殿下がエルメア様に暴言を吐くに至るのだが……。図書室で遭遇した後にあからさまにエルメア様から避けられるようになっているアルベルト殿下がかわいそうで、お腹抱えて笑った。心の中で。
マリアベル・モーブは健気で頑張り屋の純真な女の子なので、お腹を抱えて笑ったりしない。
そうして私は伯爵家の人間としてエルメア様を追い落とす悪女の皮を被り、学園ではアルベルト殿下と仲睦まじい女として行動し、その合間に推しを陰から眺めて癒され、伯爵家での情報を殿下達に渡し、中々真相に辿り着いてくれないアルベルト殿下やコーネリアス公爵にしびれを切らして前世の記憶を小出しにしながら、右往左往していた。そうしてやっと全員で真相に辿り着いたという体で悪役たちを追い詰める作戦に持っていくことができた。
そう、やっと王弟ロードレイや父を追い詰める算段がついたのである。アルベルト殿下、王国騎士団、そして私が一丸となって、学園の卒業式の日に作戦の決行が決まった。
学園の卒業式で悪役どもを追い詰めて、なおかつエルメア様の名誉を回復するために「悪役令嬢エルメア・サーラントを断罪」みたいなシーンを作らなきゃいけなくなったことに対しては少し気になりはしたが、私はこれば終わればやっとエルメア様と対面できるとウキウキだったので、少しの疑問は頭の隅に追いやられ、決着の時を迎えた。
しかしまあ、この作戦はうまくはいかなかった。こちらの思い描く通りにエルメア様は動いてくれず、自分は追放で構わないと会場を去っていき、意気揚々と出てきたロードレイや父はアルベルト殿下にボコボコにされ、捕らえられた。いや私の暗躍の意味とは……?となった。というかあんな感じで解決するなら、1年もかけて演技する必要性あった!?というかアルベルト殿下めちゃくちゃ強いな!王国騎士団もドン引きだよ!
王国騎士団に拘束されながら私を口汚く罵ってくる父を冷めた目で見送り、私の役目はあっという間に終わった。……エルメア様に褒めてもらう為に頑張ってきたのに……エルメア様いなくなっちゃったんだけど……。
コーネリアス公爵は事態の収束を待たずエルメア様を追いかけ、その少し後アルベルト殿下はそれを追いかけていった。ちなみにこの時のアルベルト殿下の顔は一生忘れられないと思う。思わず「こっっっわ」と言いそうになった。今まではどちらかというと優しいお兄ちゃん感あったくせに、その時は目がギラギラで王子様がしていい顔じゃなかった。
そして私は一部の王国騎士団の人達と会場に取り残され、その場にいた人々への説明に追われることとなり、気づいた時には朝だった。本当に散々な日だった。
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