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私はまず母をなだめすかして事情を説明、私に協力させる事から始めたのだが、それがとてつもなく面倒だった。
まあ「私が母さんをイゼルド王国の尊い身分の女性を救った栄誉ある人にしてあげる」と言うと、即刻目の色を変えて、さすが私のマリアベルと言っていたが。本当に現金な人間だな。清々しいわ。
そして私は父の指示のもと伯爵家に引き取られ、そしてエルメア様達が通う王立学園に入学するように指示をされた。自分が思っていた通り過ぎて怖い。
母には学園入学後、説明役としてだけ協力してもらう予定なので、父から何か言われたら必ず私に報告すること、そして何も余計なことはするなと強く言い聞かせた。「マリアベルは私の事を救ってくれる。私のかわいいマリアベル」と生まれた時から聞き飽きた言葉をずっと言っていたので、多分大丈夫。あの人あれが通常運転だから。
そうして私は学園に入学するまで、父のもとで日々を過ごすことになる。学園入学までに叩きこめと言われて様々な知識を得ている中、事件についてや父に味方をしてくれているとあるお方……王弟ロードレイの話も散々聞かされた。
ロードレイのことは置いておき、事件詳細について聞きながら思ったのは、事件はそこそこ原作に沿う形で進んでいるということだ。悪党達が捕まっても変わらないところは変わらないのか、親玉ロードレイの執念さが引き起こしてるのか……。面倒だなあと思いながらもそんなことは表に出さずに私は父に従順に過ごした。
また、父から説明されるエルメア様やアルベルト殿下の話を聞きながら私はおや?と思っていた。
エルメア様は何故か普通科にいるというのだ。
小説ではアルベルト殿下と同じ特進科のはずなんだが……?成り代わりエルメア様の何かしらの意図かな??
そして私はアルベルト殿下にも接触しやすいようにと特進科への入学を指示され、見事に特進科に入ることができた。まあ前世の記憶ありますし!楽勝よ!
そして学園に入学してすぐに、まずはどうにかして隠れてエルメア様に接触しようと、私はエルメア様の観察を始めた。
初めて生で見るエルメア様は、見た目は小説のまま、それはそれは美しいお姿だった。はあ、推しが動いてるのやばいな。中身違っても全然ありかもしれないな、とほくほくした気持ちで見ていたのだが、私にとって良い意味で衝撃的なことが起こる。
数日観察して気づいたのだが、成り代わりエルメア様は何故か小説のエルメア様以上に圧倒的光属性のお人好し令嬢だったのだ。
何故か普通科で悠々自適に過ごしているエルメア様。公爵令嬢という威厳はない、親しみやすさ全開のエルメア様。食堂で肉を頬張り幸せそうにするエルメア様。勉強が難しくて図書館で唸ってるエルメア様。困っている人に近づいていくエルメア様。多くのご令嬢達に慕われているエルメア様。
あ、あれ?成り代わりエルメア様かわいいぞ?
小説とありとあらゆる事が違うので、中身は確実に別人だ。とりあえず最も違うところは、本物のエルメア様はもう少し賢いが彼女はアホかわいい。一応褒めてる。
推しとは別人。それなのに、それなのにだ。
推しの中身が違う人間のはずなのにその推し以上にかわいい。こんなこと想像してなかった。衝撃だった。こんな気持ちにさせられるなんて。心臓がギュンギュンする。
守りたい。あの笑顔、守りたい。
成り代わりエルメア様、この世界にやってきてくれてありがとう。貴女最高です。私の知ってるエルメア様がかわいさレベルアップして目の前に現れてくれるなんて、そんなの幸せでしかない。
そして私はエルメア様を観察する中で気づいた。エルメア様は確実に転生者だが、小説について何も知らなのでは、と。
ロードレイ追放に一役買ったということを聞いていたから、賢くて計算高い人間なのかと思っていたのに。ただアホかわいいだけだった。
恐らく何も知らないでたまたまロードレイを追いやってしまっただけで、だからその後何もしなかった、いや知らないのだから出来なかったのでは?だから父は捕まらなかったし、そして今回の事件は起こってしまった。
……というか事件について知っていたら、容疑者にされてるのにあんな呑気に学園生活謳歌できない。
私はそのエルメア様を見て、再びやる気に火がついた。
あのかわいい成り代わりエルメア様に悲しい思いをさせてはいけない。守らなければ、あの笑顔。
自分の為にも事件解決を頑張る気ではいたが、推しの為とあらば、やる気が漲る。私は作戦を決行するべく、すぐさまアルベルト殿下に近づいた。
私は母を使い事件の全てを説明、そしエルメア様が大恩人であるというありもしない作り話のもと、真摯で健気な少女を装い、エルメア様を救いたいのだと伝えた。……ある意味で大恩人ではある。転生してから生きる糧をくれた推しだからな。
もしアルベルト殿下達に信じてもらえなくても、行動で示そう。私のエルメア様の為だ。私はやってやる、という気持ちでいたのだが、特に厳しく追及されることもなく、結構あっという間に私と母をすぐに受け入れた王太子殿下とコーネリアス公爵に、私は少し心配になった。
いくら実行犯の証言と私達が伝えた情報が一緒だからってそんな簡単に信じていいのか?チョロすぎるのではないか?
そんなことで……そんなことで今後エルメア様守れると思ってる!?だから小説では殺されるんだよ!甘い!甘すぎる!!今回ばかりはありがたいけど!
もちろんそんなことは言わずに、協力させてくれることに感謝の意を述べるに留めたけど。ここは私がしっかりしないといけないと強く思った。
そうして私はエルメア様を救う為、アルベルト殿下と恋に落ちた少女を演じながら学園で過ごし、事件解決の為に奔走することとなる。
まあ「私が母さんをイゼルド王国の尊い身分の女性を救った栄誉ある人にしてあげる」と言うと、即刻目の色を変えて、さすが私のマリアベルと言っていたが。本当に現金な人間だな。清々しいわ。
そして私は父の指示のもと伯爵家に引き取られ、そしてエルメア様達が通う王立学園に入学するように指示をされた。自分が思っていた通り過ぎて怖い。
母には学園入学後、説明役としてだけ協力してもらう予定なので、父から何か言われたら必ず私に報告すること、そして何も余計なことはするなと強く言い聞かせた。「マリアベルは私の事を救ってくれる。私のかわいいマリアベル」と生まれた時から聞き飽きた言葉をずっと言っていたので、多分大丈夫。あの人あれが通常運転だから。
そうして私は学園に入学するまで、父のもとで日々を過ごすことになる。学園入学までに叩きこめと言われて様々な知識を得ている中、事件についてや父に味方をしてくれているとあるお方……王弟ロードレイの話も散々聞かされた。
ロードレイのことは置いておき、事件詳細について聞きながら思ったのは、事件はそこそこ原作に沿う形で進んでいるということだ。悪党達が捕まっても変わらないところは変わらないのか、親玉ロードレイの執念さが引き起こしてるのか……。面倒だなあと思いながらもそんなことは表に出さずに私は父に従順に過ごした。
また、父から説明されるエルメア様やアルベルト殿下の話を聞きながら私はおや?と思っていた。
エルメア様は何故か普通科にいるというのだ。
小説ではアルベルト殿下と同じ特進科のはずなんだが……?成り代わりエルメア様の何かしらの意図かな??
そして私はアルベルト殿下にも接触しやすいようにと特進科への入学を指示され、見事に特進科に入ることができた。まあ前世の記憶ありますし!楽勝よ!
そして学園に入学してすぐに、まずはどうにかして隠れてエルメア様に接触しようと、私はエルメア様の観察を始めた。
初めて生で見るエルメア様は、見た目は小説のまま、それはそれは美しいお姿だった。はあ、推しが動いてるのやばいな。中身違っても全然ありかもしれないな、とほくほくした気持ちで見ていたのだが、私にとって良い意味で衝撃的なことが起こる。
数日観察して気づいたのだが、成り代わりエルメア様は何故か小説のエルメア様以上に圧倒的光属性のお人好し令嬢だったのだ。
何故か普通科で悠々自適に過ごしているエルメア様。公爵令嬢という威厳はない、親しみやすさ全開のエルメア様。食堂で肉を頬張り幸せそうにするエルメア様。勉強が難しくて図書館で唸ってるエルメア様。困っている人に近づいていくエルメア様。多くのご令嬢達に慕われているエルメア様。
あ、あれ?成り代わりエルメア様かわいいぞ?
小説とありとあらゆる事が違うので、中身は確実に別人だ。とりあえず最も違うところは、本物のエルメア様はもう少し賢いが彼女はアホかわいい。一応褒めてる。
推しとは別人。それなのに、それなのにだ。
推しの中身が違う人間のはずなのにその推し以上にかわいい。こんなこと想像してなかった。衝撃だった。こんな気持ちにさせられるなんて。心臓がギュンギュンする。
守りたい。あの笑顔、守りたい。
成り代わりエルメア様、この世界にやってきてくれてありがとう。貴女最高です。私の知ってるエルメア様がかわいさレベルアップして目の前に現れてくれるなんて、そんなの幸せでしかない。
そして私はエルメア様を観察する中で気づいた。エルメア様は確実に転生者だが、小説について何も知らなのでは、と。
ロードレイ追放に一役買ったということを聞いていたから、賢くて計算高い人間なのかと思っていたのに。ただアホかわいいだけだった。
恐らく何も知らないでたまたまロードレイを追いやってしまっただけで、だからその後何もしなかった、いや知らないのだから出来なかったのでは?だから父は捕まらなかったし、そして今回の事件は起こってしまった。
……というか事件について知っていたら、容疑者にされてるのにあんな呑気に学園生活謳歌できない。
私はそのエルメア様を見て、再びやる気に火がついた。
あのかわいい成り代わりエルメア様に悲しい思いをさせてはいけない。守らなければ、あの笑顔。
自分の為にも事件解決を頑張る気ではいたが、推しの為とあらば、やる気が漲る。私は作戦を決行するべく、すぐさまアルベルト殿下に近づいた。
私は母を使い事件の全てを説明、そしエルメア様が大恩人であるというありもしない作り話のもと、真摯で健気な少女を装い、エルメア様を救いたいのだと伝えた。……ある意味で大恩人ではある。転生してから生きる糧をくれた推しだからな。
もしアルベルト殿下達に信じてもらえなくても、行動で示そう。私のエルメア様の為だ。私はやってやる、という気持ちでいたのだが、特に厳しく追及されることもなく、結構あっという間に私と母をすぐに受け入れた王太子殿下とコーネリアス公爵に、私は少し心配になった。
いくら実行犯の証言と私達が伝えた情報が一緒だからってそんな簡単に信じていいのか?チョロすぎるのではないか?
そんなことで……そんなことで今後エルメア様守れると思ってる!?だから小説では殺されるんだよ!甘い!甘すぎる!!今回ばかりはありがたいけど!
もちろんそんなことは言わずに、協力させてくれることに感謝の意を述べるに留めたけど。ここは私がしっかりしないといけないと強く思った。
そうして私はエルメア様を救う為、アルベルト殿下と恋に落ちた少女を演じながら学園で過ごし、事件解決の為に奔走することとなる。
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