after school rainy

闇猫古蝶

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Chorus

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次の日、あの女達はなにもしてこなかった。
先生に目でもつけられて自重したのだろうか…?

放課後までなにもない、というのは逆に怖いものである。

昨日一時的に晴れたものの、今日も朝から雨が降り続いていた。

この雨ではさすがにあの場所に優希はいないだろうし…旧校舎の空き教室、行ってみよう。

ぬかるんだ道を一人歩いて旧校舎へ向かう。

ゆっくりドアを開けると、窓側を向いて歌うシオンさんがいた。

どうやら私には気づいていないみたい。

床にカバンを静かに置いて、正座する。

力強くて勇気が湧いてくるような、そんな歌声。

低くて少し掠れていて、でもどこか甘くて優しい声。

歌い終えたシオンさんに、私は思わず立ち上がり拍手をおくっていた。

「カノン!?いつからそこにいたんだよ!」

「いい声だね!」

「話を…」

「歌うの、好きなの?」

「まぁ、な。」

シオンさんは照れたように頬をかいた。

てっきり歌を聴くことが好きなんだと思っていたけど、歌うのも好きなんだ…

「今のなんて歌?」

「曲名なんてねぇよ。カノンが歌ってたみたいに、俺が作った歌だからな」

「え!?こんないい歌作れるなんて…すごいね!」

心からそう思う。

「んなことねぇよ…」

ほんのりと、シオンさんのその顔は赤くなっているようにみえる。

「どうでもいいけどカノン」

「ん?」

「敬語、やめたんだな」

「え?あ…」

いやだったのかな…

「ごめんなさい…」

「なんで謝んだ?」

シオンさんは不思議そうに問う。いやではないのかな…?

「だって敬語…」

「敬語じゃなくて、いい。」

「え?」 

「あと、呼び捨てでいいからな?さん付けとか、なんかやだ…」

「うん…!」

なんかやだ、なんて。案外かわいいことを言うものだ。

「カノン。俺と歌わないか?」

「いいの?」

「つか、歌いてぇから。カノンの歌」

真っ直ぐな瞳でそう言われ少しドキっとしてしまう。

「歌詞覚えてるの?」

「まぁ、なんとなくは」

それから私達は、何度も何度も歌い続けた。

シオンが歌詞もリズムも完全に覚えるくらい。

「シオン…」

「ん?」

「明日もきていい?」

「いつでもこい」

「うん…!」

シオンなら私の夢を笑わないで聞いてくれるのかな…

明日はもっと色々な話がしたい。
歌うだけじゃなくて、シオンの話を聞きたい。

シオンのこと、もっと知りたい。

そう思うのはいじめられているだとか、歌うことが好きだからだとか…つまり、共通点が多いからなんていう…

そんなことじゃない気がした。


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