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第28話 桜岡さん視点④

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 そう言って私のパンツを投げる様に返した。

 気持ち悪い。誰かの触ったパンツなんて。でもそんな事言っていられない。

 私はパンツを履いて、振り返らない様に教室へと戻った。



 ご飯を食べる気力が湧いて来なかった。誰とも喋りたくなかった。

 ただ、何故自分があんな奴のいう事をきいたのか。

 分からない。でもそれが普通だし当然だと思った。

 
 
 そして気が付くと放課後になっていた。皆はもう帰った。

 一人になると、自然と涙があふれて来た。

 何なのよ……。

 帰らないと。でも、身体が動かない。思い出したくないのに、さっきの光景が目の前に蘇る。

 気持ち悪い。



 もう訳わかんない。

 

 その時、机の上に缶が置かれた音がした。

 イチゴミルクだ。

 何か喋っているけど、頭に入って来ない。それに目線を上げるのが怖い。視界に入って来るのは目の前に居る人のズボンだけ。男子生徒な事だけは分かる。

 ポケットティッシュを机の上に置いて、その男……男子生徒は教室を出て行った。その後ろ姿だけは目線で追う事が出来た。

 と言っても、見覚えがある訳では無かった。

 誰だろう。


 さっきの男子生徒が教室を出てから暫くして、有難くポケットティッシュを使わせてもらった。

 最近オープンしたコンビニのチラシのポケットティッシュだった。


 それと一緒に置かれたイチゴミルクを手に取る。缶の表面に浮かんだ水滴は殆ど机の上に落ち水溜まりを作っていた。

 水溜まりもティッシュでふき取る。

 少し温くなってしまったイチゴミルクの缶を開け、一口飲む。

 甘かった。

 そう言えば、私が泣いてる所見られちゃったんだよね……。でも、アレを舐めさせられる恥ずかしさに比べれば。

 そしてまた一口イチゴミルクを飲み、一息つく。


 今はイチゴミルクが想像以上に甘かった事だけが頭の中に残っている。
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