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 汚れたシーツを洗っている間に風呂を沸かして、久しぶりに兄弟で風呂に入る。

 互いの汗と精液をシャワーで洗い流した。
 シャワーヘッドを持って俺の体に石鹸の泡を撫でつけ流しながら、陽翔が笑う。

「兄貴、べとべと~」

「うっせ、誰のせいだ!」

 そして大人二人にはだいぶ狭くなった湯船につかる。
 浴槽の中で足を伸ばす陽翔の股の間に、俺が座って後ろから抱っこされるような形で。

「な、なんでこんな体勢……」

「狭いから仕方なくない!?まさか兄貴と両想いになれるなんて、今日は最高の日だ」

 ちょっと待て、今なんか言われたな。

「誰が両想いだって!?」

「だって素股させてくれたでしょ!え、兄貴、好きでもないやつに素股させるの!?そんな淫乱なの!?」

「う……」

 ああいえばこういう、口の達者なやつ。俺が返答に困っていると、

「俺のこと、まだ嫌い……?」

 陽翔の声音が急に変わった。
 滅多に聞くことのない、陽翔の頼りなく不安げな声。

 俺は振り向いて焦って否定する。

「嫌いなわけないだろ!」

 ていうか「まだ」ってなんだ、俺はお前のこと嫌いだったことは一度もないぞ。
 コンプレックス故にちょいちょい邪険にしてたけど、「嫌ってる」と思っていたのか?

「じゃあ、好き?俺のこと好きになってくれた?」

 首をかしげる陽翔の瞳はキラキラとして、でも底の方が不安そうに揺れている。
 胸にちくりと痛みを感じる。
 俺がぶつけてきた幼稚なコンプレックスが、陽翔にこんな顔をさせているのか。

「……好き、だよ。嫌いとか思ったことは、一度もねえよ……」

 俺は恥ずかしくて目を泳がせながら、正直につぶやく。

 その途端、空が晴れ渡るように、陽翔は笑顔になる。

「両想いだね!」

「りょっ……。もういい、そういうことでいい。ていうかお前、彼女……とか……」

 俺は再び陽翔に背を向け、ぼそりと尋ねる。
 こんな高身長イケメンだ、彼女がいないわけがない。……と、ずっと勝手に彼女持ちだと思っていたのだが。

「兄貴、俺のことどんな奴だと思ってるの!?いたら兄貴とこんなことするわけなくない!?」

「そう……か……」

 なぜかほっと安心してしまう自分に戸惑う。

「彼氏ならいるけど」

 え……?

 俺はその言葉に硬直する。
 さーっと己の血の気が引く音が聞こえた気がした。
 彼女はいないけど、彼氏ならいる?
 
 青ざめうつむく俺の背中を、陽翔が後ろから抱きしめた。
 たくましい腕で俺の体を抱き込んで、俺の両肩をクロスした手で力強くつかむ。

「今日、できた。今さっき、できた。兄貴が俺の彼氏になってくれた」

「って俺かよ!」

「兄貴以外、いないじゃん!十年越しの片想いが実って嬉しい俺」

 陽翔はちゅっちゅと後ろから、濡れた耳に口づけしてくる。
 俺はくすぐったくて首をすくめる。

「そ、それやめろ!ていうか俺はお前の彼氏になったのか!?」

「両想いでえっちしたらもう彼氏でしょ!」

「なっ……!も……もういい、そういうことで、いい……」

 十年越しの片想いとか、彼氏とか。
 顔が熱いのは風呂のせいだけじゃない。
 なにキュンキュンしてんだ俺。

 陽翔は俺の背中を抱きしめたまま、耳元につぶやく。
 またさっきと同じ、不安げな声で、こわごわと。

「兄貴と……キスしたい……」

 背中からダイレクトに、陽翔の速すぎる心音が伝わってきた。

 おいおい。
 なんでそこで、心拍数爆上げすんだお前。
 これだけ大胆なことしておいて、両想いとか彼氏とか強引なこと言っておいて。

 キスのおねだり一つに、なにびびってんだよお前。

 そしてなんで「可愛い」とか思ってるんだよ俺。

 俺は振り向くと、片手を伸ばして陽翔の頭を引き寄せた。
 驚く陽翔の唇を、下から乱暴に奪う。

 想像より柔らかい唇に、強く自分のものを押し付け続け、ゆっくりと離した。

「……キスくらいでびびってんじゃねえよ」

 肌を上気させた陽翔が、呆けたように俺を見てる。
 俺は照れて目を伏せる。 

 だから、あんだけ色んなことしておいて、初心うぶな反応するんじゃねえ。
 こっちが恥ずかしくなるじゃないか。

 陽翔が情けなく眉を下げて、感情を吐露するように言う。

「俺、兄貴のことが好き。好き過ぎてどうしたらいいのか分かんない。無茶苦茶、好きなんだ」

 まっすぐ過ぎる告白に、俺は赤くなりながら、うんとうなずく。

 陽翔が俺の顎を持ち上げて、再び唇を重ねてきた。
 舌が侵入してきて、俺の舌と絡み合う。唾液が混ざり合い、思考がとろけていく。 
 陽翔と口内で繋がる気持ちよさに俺は酔う。

 ようやく唇を離した陽翔が、荒い息をつきながら、湯の中の俺の太ももに不埒な動きで手を這わせる。

「今度は、お尻に入れたい……」

「お、お前はっ……!」

 初心モードはもうおしまいか。
 俺は小声で答える。

「そっ……そのうち……な!まだちょっと、心の準備とか……」

 って「そのうち」ってなんだよ俺、なにあっさりOKしてんだ俺。
 「嫌だ」とか「無理だ」とか言えよ。

「わかった!じゃあもう一回、素股させて!今やろ、ここでやろ?ここでやればシーツ洗う必要なくない?」

「う……。うん……」

 俺は前のめりの陽翔にこくりと首を縦に振った。
 やっぱり、嫌だとか無理だとかは、言えない俺だった。

[完]
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みんなの感想(4件)

ももみー
2023.05.19 ももみー

私の大好きなテーマ「1人プレイ」と苦手なテーマ「近親」が合わさってマイルドな味わいでした!(なんのこっちゃw)ラブコメっぽくて面白かったです😆弟可愛いな〜💕グイグイ積極的で良かったです。

空月 瞭明
2023.05.20 空月 瞭明

ももみー様!!
きゃーそうだったんですね、一人プレイが大好きテーマだったんですね!?一人プレイが!!(そこに食いつかない)
そして近親苦手だった~!
さーせんです😂読んでくれてありがとうございます、マイルドになっててよかったぁ🤭✨

一人っ子育ちのせいか、「兄弟」という響きに何かとても麗しい耽美な夢と希望とファンタジーを抱いてしまうほうで、夢と希望とファンタジーを詰め込みました😂
(え、本当の兄弟ってこんなんじゃないの!?)

きゃあ弟気に入ってもらえてよかったです~😍

解除
涼風
2023.05.09 涼風

はああ……可愛い💗💗💗💗💗💗💗💗
弟、夢邪鬼で可愛いし、兄貴!おい兄貴!🤣🤣🤣
いいぞ、もっとやれ!👍
あら?もう終わり?名残惜しいわ〜
これからもお幸せに🤣💗
楽しい兄弟をありがとうございました😆💖

空月 瞭明
2023.05.10 空月 瞭明

涼風さま!

読んでいただきありがとうございました、こんな素敵な感想までいただけてとっても嬉しいです😍
弟可愛いと言ってもらえて嬉しいです、兄貴ちょろインてやっつです🤣
「いいぞ、もっとやれ!👍」ありがとうございます🤣🤣

>これからもお幸せに
くう、嬉しいお言葉!
こちらこそありがとうございました😊✨

解除
ごえもん風呂

自慰見ちゃってからが早かった!😆
ぐいぐいの陽翔と押され気味の樹だから、間もなく“おちり🍑”で合体だあ💕

空月 瞭明
2023.04.25 空月 瞭明

ごえもん風呂さまぁ~!
わあ感想くださっていた!!
気づくの遅くてすみません、私ったら私ったら😭

読んでもらえて幸せです、この二人の感じ、絶対にすぐおちり合体までいきますよね🤣

とりあえず、全部、スーツが悪いのだっ!!

解除

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