聖教の器

1：はじめに ガブリエル教とは？

　ガブリエル教とは、元となる「星教」の中でも特に聖人かつ神の使者であるとされている「聖ガブリエル」様の教えを中心として信仰するものです。
　ガブリエル教について深く理解するために最も重要なのは、もちろんまず「聖ガブリエル」様について知ることでしょう。

　聖ガブリエル様は上述した通り、ガブリエル教の教祖または開祖とされる聖人です。聖ガブリエル様が「神の使者」であるというのは、とある逸話に由来します。

　彼が聖人とされる前、当時8歳だった少年ガブリエルは、星教の聖歌隊の一員として、主に修道士イヴァンの下で歌による布教活動に参加していました。
　しかし、その人を魅了する歌声と美貌から、別の宗教の手の者に狙われ、あるとき、命を奪われてしまいます。3日間の調査のあと、ガブリエルの亡骸は修道士イヴァンと教徒たちの手で教会のそばへ埋葬されました。
　修道士イヴァンは本当の家族のように大切に思っていた弟分の死を悼み、ピアノの演奏を捧げたのち、まるで後を追うかのように、その日のうちに亡くなったそうです。

　それから4日後、少年ガブリエルの死からちょうど1週間が経った頃、教徒たちが墓の前で安らかな眠りを願い、祈りを捧げていると、そのうちの一人が土の中からほのかに漏れる光があるのを見つけました。
　もしやと思った彼らは必死に墓を掘り起こし、棺を開けると、そこにはまばゆい光に包まれたガブリエル様の御姿があり、光がガブリエル様の御体の中へ吸い込まれたかと思うと、ついにその目を覚まされたのです。
　ガブリエル様はその御体を起こされると、自らが神の使者であることを告げられました。
　そして、教徒たちから修道士イヴァンの死をお知りになると、彼の死を悼み、これからは彼を教えに殉じた「聖人」として尊ぶように、と定められ、また、今後は彼の遺志を継ぎ、自らが教会・教徒らを守ることとする、と宣言されたのでした。

　この出来事によって、修道士イヴァンは「聖イヴァン」（現在の聖イヴァン卿）となり、また、ガブリエル様も「聖ガブリエル」として人々に知られるようになっていきました。

　これが、「ガブリエル教」が生まれる、すべてのはじまりとなったとされています。