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第42話 アルVS王国第8軍団 3
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妙な空気になった戦場で、僕は改めて名乗った。
「僕は、アルフィ。魔物じゃないよ」
牢の鉄格子を掴み目を見開いている赤毛のトリスと、整列したまま腰を抜かしそうになっている子供の奴隷達に向かって説明した。
「〈…………汝、我の敵を焼け――《槍炎投擲》〉!」
肌をはだけた若い女が見える開いたままのドアの向こうから、小声の呪文が聞こえ、次の瞬間、目前まで炎の長槍が飛んできた。
僕の足元の白銀の円から《聖水封縛》の一部が伸びて、その炎の長槍を掴んだ。
ジャジャス・ルーティンの目が驚きに目を見開き、「設置型」と拘束された口の中で漏らすのがわかった。
やはり第8将軍――大魔術師から拘束したのは正解だった。
設置型は極めて強力で、聖女と相性の良い魔法だ。
古くは、自らの命と引き換えに魔王の魂を封じたという大規模な設置型魔法の逸話も残るほど。その際、聖女は尊い人柱となった。
平たくいえば、設置型魔法を発動した張本人はその場から1歩も動くことができない。動けば魔法は消滅するのだ。
拘束と防御に特化した魔法のため、攻撃能力は皆無。しかも自分の周囲に迫った脅威にしか効果を発揮しない。
「馬鹿な!? 火属性の魔法で水魔法が一切相殺されないだと!?」
相性の悪い魔法同士は打ち消し合うというのは、経験的によく知られている。
ちなみに、天使語と魔神語の相性の悪さは、使い手がほぼ存在しないためおそらく一般には知られていない。筆頭宮廷魔術師であるシャヒール・クルメスが自信満々に大勢の前で、術の3分の1が無駄になる魔法を使っていたので間違いないだろう。
「だがしかし! 相手が悪かったな! 魔術師のクラスと〈魔法連射〉のスキルの2つの天与を授かったダブルの俺ならば――」
それから炎の長槍が十数本も飛んできた。
騒ぎを聞きつけて、他の民家から出てきた魔術師達や丘の上に現れた魔術師達も、次々に魔法を放つ。
火魔法が効かないのかと、他の地水風聖魔無の6属性の魔法も降り注ぐ。
炎の長槍も、岩の砲弾も、風の透明の刃も、聖なる光線も、闇の飛礫も、無属性の矢も、あらゆる魔法が、僕の足元から出現する白銀の水の鎖によって弾かれたり、握り潰されたりする。
「嘘だろ!? これほどの大魔法を使えるなんて!」
「なんで魔力切れにならないっ!」
「……全属性に対処するとか……ありえん。……間違いなくランクA以上の魔法だぞ」
「余裕の態度で1歩も動かないぞ!」
最後のセリフはともかく、他はマナ式魔術のおかげだ。大気中のマナを変換して魔法の発動に使用しているため、自分の魔力は必要としないのだ。
(そもそも僕は魔力ゼロだしな)
彼らは自力式か、もしくは自力式とマナ式の混合魔術なのだろう。姿を見せた王国第8軍団――通称、魔術師軍団の100人ほどは、次々に魔力切れか魔力欠乏でぶっ倒れていく。
最初に威勢よく魔法を連射してきたダブルは、一気に魔力を失った際に陥る魔力欠乏によって口から泡を吹いて倒れていた。
(自称副官がそれでいいのか……)
いや。周囲に指示を出していたから、自称ではなく、本当に第8将軍ジャジャス・ルーティンの副官だったのかもしれない。
得体の知れない魔法を使う存在と、前衛のいない戦闘。こんなことは初めてなのだろう。
1歩も動かない――というか動けない僕は、他にすることもないので、100人の魔術師達を観察していた。
(杜撰だな……)
本当に、ただ魔法を各自の判断で好き放題放っているだけなのだ。それでも並みのモンスターなら掃討され、森ならば空き地に変わっているほどの威力はあった。
(……この王国第8軍団と互角以下なら案外魔王軍もたいしたことないかもしれない……――いや、さすがにそう判断を下すのは早計だ)
自分を戒める。
魔王軍側に何らかの切り札が存在する可能性は十分にあるし、魔王の力さえ未知数なのだ。もしかしたら第8軍団にいいようにやられたのだって何かの作戦の一環である可能性さえあった。
しばらくしてようやく王国第8軍団は沈黙した。
いるのは、地面に四つん這いになって汗を滴り落としている者やぜいぜいと荒い呼吸を繰り返して倒れている者だけだ。
もう魔法が飛んでくることはない。
「さて。これでお互いの実力差はわかってもらえたかな?」
僕は余裕ぶった態度でそう話しかけた。
僕に向けられる魔術師達と孤児達、村人達の視線は、明らかに人外の存在を見る者に変わっていた。
天与ランク最高クラスSである聖女の魔法は、それほどまでに凄まじいものだったのだろう。僕もCランクの魔術師相手とはいえ、100人相手に無双できるとは思ってもみなかった。
無論そんな驚きは顔に出さない。
落ち着いた僕の態度に反比例するかのように魔術師達の動揺は大きくなっていく。8歳という幼さが、むしろここにきて、不気味さの絶妙なスパイスになったようだ。
(よし……あともう少しで――)
「――ぶはっ! 設置型だっ!! よく見ろっ! 確かに超高位の魔法だが、どのような魔法であれ、魔法法則を逃れることはできん!」
自力で《聖水封縛》を口元だけとはいえ解除した大魔術師にして第8将軍ジャジャス・ルーティンが叫んだ。
「魔力切れも魔力欠乏も起こさないのは、マナ式魔術だからだっ!」
上官の言葉に、魔術師達は別の動揺に包まれる。
「マナ式!?」
「天与ランクだとA+相当だぞ……!」
「シャヒール・クルメス卿と同じ!?」
ジャジャス・ルーティンの口を塞ごうと、《聖水封縛》が動くが、それをジャジャス・ルーティンの炎の短剣が切り刻む。
その炎を纏った闇色の短剣は、握られてもいないのに勝手に動くらしい。
ジャジャス・ルーティンのあごの下辺りに、設置型魔法の赤い円が存在していた。おそらく僕の注意が他の魔術師達に向き、《聖水封縛》の処理能力に負荷が最大限にかかった辺りで、口を覆っていた《聖水封縛》を切り裂いたのだろう。
《聖水封縛》には魔法を封じる効果があり、いかに大魔術師といえども詠唱破棄で設置型魔法は使えなかったはずだった。
《聖水封縛》を口元だけとはいえ切り裂き、再度封じられないように設置型魔法を小型とはいえ設置したのはさすがだといえた。
「よく見ろ! 身体を拘束されているのは、ワシと奴隷商人だけだ! すぐそばにいる者しか封じることができんのだっ!」
「確かに」や「なるほど」という声が戦場のあちこちで上がる。
(……まずい! このまま流れを変えられると……)
大雑把に見て1対100という状況だ。
こっちのことを魔物か何かだと誤認しているので、奴隷の子供達や村人達を人質に取ったりはしないだろうが、それも時間の問題に思える。
(……やっぱ使うしかないか――)
手に持っていた禁書を見る。
膠着状態で構わないのなら、自分の身さえ守れればいいのなら、《聖水封縛》で十分そうだった。
――けど、
(助けるって決めたんだ!!)
「僕は、アルフィ。魔物じゃないよ」
牢の鉄格子を掴み目を見開いている赤毛のトリスと、整列したまま腰を抜かしそうになっている子供の奴隷達に向かって説明した。
「〈…………汝、我の敵を焼け――《槍炎投擲》〉!」
肌をはだけた若い女が見える開いたままのドアの向こうから、小声の呪文が聞こえ、次の瞬間、目前まで炎の長槍が飛んできた。
僕の足元の白銀の円から《聖水封縛》の一部が伸びて、その炎の長槍を掴んだ。
ジャジャス・ルーティンの目が驚きに目を見開き、「設置型」と拘束された口の中で漏らすのがわかった。
やはり第8将軍――大魔術師から拘束したのは正解だった。
設置型は極めて強力で、聖女と相性の良い魔法だ。
古くは、自らの命と引き換えに魔王の魂を封じたという大規模な設置型魔法の逸話も残るほど。その際、聖女は尊い人柱となった。
平たくいえば、設置型魔法を発動した張本人はその場から1歩も動くことができない。動けば魔法は消滅するのだ。
拘束と防御に特化した魔法のため、攻撃能力は皆無。しかも自分の周囲に迫った脅威にしか効果を発揮しない。
「馬鹿な!? 火属性の魔法で水魔法が一切相殺されないだと!?」
相性の悪い魔法同士は打ち消し合うというのは、経験的によく知られている。
ちなみに、天使語と魔神語の相性の悪さは、使い手がほぼ存在しないためおそらく一般には知られていない。筆頭宮廷魔術師であるシャヒール・クルメスが自信満々に大勢の前で、術の3分の1が無駄になる魔法を使っていたので間違いないだろう。
「だがしかし! 相手が悪かったな! 魔術師のクラスと〈魔法連射〉のスキルの2つの天与を授かったダブルの俺ならば――」
それから炎の長槍が十数本も飛んできた。
騒ぎを聞きつけて、他の民家から出てきた魔術師達や丘の上に現れた魔術師達も、次々に魔法を放つ。
火魔法が効かないのかと、他の地水風聖魔無の6属性の魔法も降り注ぐ。
炎の長槍も、岩の砲弾も、風の透明の刃も、聖なる光線も、闇の飛礫も、無属性の矢も、あらゆる魔法が、僕の足元から出現する白銀の水の鎖によって弾かれたり、握り潰されたりする。
「嘘だろ!? これほどの大魔法を使えるなんて!」
「なんで魔力切れにならないっ!」
「……全属性に対処するとか……ありえん。……間違いなくランクA以上の魔法だぞ」
「余裕の態度で1歩も動かないぞ!」
最後のセリフはともかく、他はマナ式魔術のおかげだ。大気中のマナを変換して魔法の発動に使用しているため、自分の魔力は必要としないのだ。
(そもそも僕は魔力ゼロだしな)
彼らは自力式か、もしくは自力式とマナ式の混合魔術なのだろう。姿を見せた王国第8軍団――通称、魔術師軍団の100人ほどは、次々に魔力切れか魔力欠乏でぶっ倒れていく。
最初に威勢よく魔法を連射してきたダブルは、一気に魔力を失った際に陥る魔力欠乏によって口から泡を吹いて倒れていた。
(自称副官がそれでいいのか……)
いや。周囲に指示を出していたから、自称ではなく、本当に第8将軍ジャジャス・ルーティンの副官だったのかもしれない。
得体の知れない魔法を使う存在と、前衛のいない戦闘。こんなことは初めてなのだろう。
1歩も動かない――というか動けない僕は、他にすることもないので、100人の魔術師達を観察していた。
(杜撰だな……)
本当に、ただ魔法を各自の判断で好き放題放っているだけなのだ。それでも並みのモンスターなら掃討され、森ならば空き地に変わっているほどの威力はあった。
(……この王国第8軍団と互角以下なら案外魔王軍もたいしたことないかもしれない……――いや、さすがにそう判断を下すのは早計だ)
自分を戒める。
魔王軍側に何らかの切り札が存在する可能性は十分にあるし、魔王の力さえ未知数なのだ。もしかしたら第8軍団にいいようにやられたのだって何かの作戦の一環である可能性さえあった。
しばらくしてようやく王国第8軍団は沈黙した。
いるのは、地面に四つん這いになって汗を滴り落としている者やぜいぜいと荒い呼吸を繰り返して倒れている者だけだ。
もう魔法が飛んでくることはない。
「さて。これでお互いの実力差はわかってもらえたかな?」
僕は余裕ぶった態度でそう話しかけた。
僕に向けられる魔術師達と孤児達、村人達の視線は、明らかに人外の存在を見る者に変わっていた。
天与ランク最高クラスSである聖女の魔法は、それほどまでに凄まじいものだったのだろう。僕もCランクの魔術師相手とはいえ、100人相手に無双できるとは思ってもみなかった。
無論そんな驚きは顔に出さない。
落ち着いた僕の態度に反比例するかのように魔術師達の動揺は大きくなっていく。8歳という幼さが、むしろここにきて、不気味さの絶妙なスパイスになったようだ。
(よし……あともう少しで――)
「――ぶはっ! 設置型だっ!! よく見ろっ! 確かに超高位の魔法だが、どのような魔法であれ、魔法法則を逃れることはできん!」
自力で《聖水封縛》を口元だけとはいえ解除した大魔術師にして第8将軍ジャジャス・ルーティンが叫んだ。
「魔力切れも魔力欠乏も起こさないのは、マナ式魔術だからだっ!」
上官の言葉に、魔術師達は別の動揺に包まれる。
「マナ式!?」
「天与ランクだとA+相当だぞ……!」
「シャヒール・クルメス卿と同じ!?」
ジャジャス・ルーティンの口を塞ごうと、《聖水封縛》が動くが、それをジャジャス・ルーティンの炎の短剣が切り刻む。
その炎を纏った闇色の短剣は、握られてもいないのに勝手に動くらしい。
ジャジャス・ルーティンのあごの下辺りに、設置型魔法の赤い円が存在していた。おそらく僕の注意が他の魔術師達に向き、《聖水封縛》の処理能力に負荷が最大限にかかった辺りで、口を覆っていた《聖水封縛》を切り裂いたのだろう。
《聖水封縛》には魔法を封じる効果があり、いかに大魔術師といえども詠唱破棄で設置型魔法は使えなかったはずだった。
《聖水封縛》を口元だけとはいえ切り裂き、再度封じられないように設置型魔法を小型とはいえ設置したのはさすがだといえた。
「よく見ろ! 身体を拘束されているのは、ワシと奴隷商人だけだ! すぐそばにいる者しか封じることができんのだっ!」
「確かに」や「なるほど」という声が戦場のあちこちで上がる。
(……まずい! このまま流れを変えられると……)
大雑把に見て1対100という状況だ。
こっちのことを魔物か何かだと誤認しているので、奴隷の子供達や村人達を人質に取ったりはしないだろうが、それも時間の問題に思える。
(……やっぱ使うしかないか――)
手に持っていた禁書を見る。
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