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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
新米たち 完結
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「さて」
黒髪黒眼の青年は、三人に目を向けた。
「俺はフウマ。この山岳都市ヘブンの都市長だ」
「あ、あなたが……」
想像以上に若いことに三人は驚いた。
「そして、もう一つあるグループの……頭領をやっている。今日一日見させてもらったけど、三人ともいいチームだ。……ほんと、憧れるほどに」
フウマは、羨ましそうに三人を見つめた。
「いい幼馴染みで、仲間だな」
「はい!」
三人の元気な声に、嬉しそうにフウマは笑った。
「んじゃあ、三人が離れ離れにならず、冒険者も続けられる名案がある」
「そんなものあるんですか?」
「途中で老人に出会っただろ? 山の斜面を登る」
「え、あの人と関係あるんですか?」
「ああ。彼も俺が頭領をするグループの一員だ。イヌガミもな」
「その……グループっていったい……」
フウマは、黒髪を掻いた。どうやら癖のようだった。
「まず一つ約束してほしい。この職業のこと、グループのこと、修行方法などすべて秘密だということだ。もししゃべったら……君たちが見たような老人が地の果てまで追って来ると考えてくれ」
三人の顔が青くなった。
「それでも聞くか?」
「…………」
三人は顔を見合わせた後、互いの意思を、言葉にせずとも確認した。
フウマは、「本当に羨ましいな」と呟き、返事を待った。
言葉にせずとも、彼らの目の輝きが、返答の内容を伝えてくる。
「聞きます!」
三人の声が重なる。
「じゃあ、話をしよう。百年以上も前から、歴史の陰に存在したものの話を――」
フウマが厳かに話の続きをしようとした時、三人がこの都市に来てから聞き慣れた声が響いた。いきなり声がするのも、半ば慣れた。
「若様! お腹が減ったであります! 今日は人助けまでしたであります! 褒めてほしいであります!」
元気に報告するイヌガミの口元は、どこかで何かを食べてきたばかりらしくテカっていた。宴会場の方から、セーレアやイーサーなどの悲鳴が聞こえてきた。取っておいた肉料理がなくなってるとかなんとか……。
「……はぁ。ほんと締まらないな」
フウマは溜息を吐いた後、イヌガミと三人に向けて告げた。
「とりあえず飯にしよう。話はその後でもいいさ」
きょとんとした三人だったが、フウマとイヌガミが歩き出したので、一緒に宴会場に向かう。賑やかな声が聞こえてくるせいか、宴会場の雰囲気が近づいてくるせいか、三人にあった悲壮感はもうなくなっていた。
――それから数年後。新米のシノビが三人誕生した。
幼馴染みだという彼らが仲良くいつまでも一緒にいるのを見て、フウマは満足げに頷いていた。
そんなフウマを見つめるイヌガミも、また満足そうであった。
◇◇◇あとがき◇◇◇
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
まだ後日談を書く可能性はゼロではありませんが、これにて完結です。
過去に二度完結させた時は解放感を感じたのですが、今は若干の寂しさを覚えています。
編集を担当してくださったお二方やイラストを描いてくださった布施龍太様など、『最難関ダンジョン』を通じて、多くの方々にお世話になりました。心より感謝申し上げます。
ここまで書き上げるまでに一番悩んだのは、「まとめ方」と「蛇足ではないのか」という部分でした。起承転結の観点から見ると、最後の方の展開が蛇足なのは間違いないと思います。クライマックスが過ぎてから「結」に当たる部分がだらだらと長く続きますから。
ただ、フウマの心理を考えると、そうそうすぐに見切りをつけたり、考えを改めて行動が変化したりはしないよな、と思いました。リアリティーを求めた結果、物語の構成のバランスは悪くなったように思いますが、結構自分では納得しています。
以前どこかでも書きましたが、これほど長い長編(一般的な公募の上限文字数をオーバーする分量)を書いたことはなかったので、10万文字過ぎた辺りからいろいろと手探りでした。
書き続けられたのは、読者の皆様の存在が大きいです。
長い間ありがとうございました。
黒髪黒眼の青年は、三人に目を向けた。
「俺はフウマ。この山岳都市ヘブンの都市長だ」
「あ、あなたが……」
想像以上に若いことに三人は驚いた。
「そして、もう一つあるグループの……頭領をやっている。今日一日見させてもらったけど、三人ともいいチームだ。……ほんと、憧れるほどに」
フウマは、羨ましそうに三人を見つめた。
「いい幼馴染みで、仲間だな」
「はい!」
三人の元気な声に、嬉しそうにフウマは笑った。
「んじゃあ、三人が離れ離れにならず、冒険者も続けられる名案がある」
「そんなものあるんですか?」
「途中で老人に出会っただろ? 山の斜面を登る」
「え、あの人と関係あるんですか?」
「ああ。彼も俺が頭領をするグループの一員だ。イヌガミもな」
「その……グループっていったい……」
フウマは、黒髪を掻いた。どうやら癖のようだった。
「まず一つ約束してほしい。この職業のこと、グループのこと、修行方法などすべて秘密だということだ。もししゃべったら……君たちが見たような老人が地の果てまで追って来ると考えてくれ」
三人の顔が青くなった。
「それでも聞くか?」
「…………」
三人は顔を見合わせた後、互いの意思を、言葉にせずとも確認した。
フウマは、「本当に羨ましいな」と呟き、返事を待った。
言葉にせずとも、彼らの目の輝きが、返答の内容を伝えてくる。
「聞きます!」
三人の声が重なる。
「じゃあ、話をしよう。百年以上も前から、歴史の陰に存在したものの話を――」
フウマが厳かに話の続きをしようとした時、三人がこの都市に来てから聞き慣れた声が響いた。いきなり声がするのも、半ば慣れた。
「若様! お腹が減ったであります! 今日は人助けまでしたであります! 褒めてほしいであります!」
元気に報告するイヌガミの口元は、どこかで何かを食べてきたばかりらしくテカっていた。宴会場の方から、セーレアやイーサーなどの悲鳴が聞こえてきた。取っておいた肉料理がなくなってるとかなんとか……。
「……はぁ。ほんと締まらないな」
フウマは溜息を吐いた後、イヌガミと三人に向けて告げた。
「とりあえず飯にしよう。話はその後でもいいさ」
きょとんとした三人だったが、フウマとイヌガミが歩き出したので、一緒に宴会場に向かう。賑やかな声が聞こえてくるせいか、宴会場の雰囲気が近づいてくるせいか、三人にあった悲壮感はもうなくなっていた。
――それから数年後。新米のシノビが三人誕生した。
幼馴染みだという彼らが仲良くいつまでも一緒にいるのを見て、フウマは満足げに頷いていた。
そんなフウマを見つめるイヌガミも、また満足そうであった。
◇◇◇あとがき◇◇◇
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
まだ後日談を書く可能性はゼロではありませんが、これにて完結です。
過去に二度完結させた時は解放感を感じたのですが、今は若干の寂しさを覚えています。
編集を担当してくださったお二方やイラストを描いてくださった布施龍太様など、『最難関ダンジョン』を通じて、多くの方々にお世話になりました。心より感謝申し上げます。
ここまで書き上げるまでに一番悩んだのは、「まとめ方」と「蛇足ではないのか」という部分でした。起承転結の観点から見ると、最後の方の展開が蛇足なのは間違いないと思います。クライマックスが過ぎてから「結」に当たる部分がだらだらと長く続きますから。
ただ、フウマの心理を考えると、そうそうすぐに見切りをつけたり、考えを改めて行動が変化したりはしないよな、と思いました。リアリティーを求めた結果、物語の構成のバランスは悪くなったように思いますが、結構自分では納得しています。
以前どこかでも書きましたが、これほど長い長編(一般的な公募の上限文字数をオーバーする分量)を書いたことはなかったので、10万文字過ぎた辺りからいろいろと手探りでした。
書き続けられたのは、読者の皆様の存在が大きいです。
長い間ありがとうございました。
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