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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
新米たち 10
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「いやぁ、ラインハルト殿の部隊は強いな。寄せ集めだとは思えねぇ」
「寄せ集めとは言ってくれるな。我が部隊は、あの水産都市エレフィンの暴動を乗り越えた戦友。しかも、今では正式に水産都市エレフィンの警備隊に所属しているんだ。こうして独立した部隊として、裁量権を与えてくれた都市長には感謝だな」
ラインハルトという美形の若者は、爽やかに笑って、イーサーと固い握手をしている。
そこにゆっくりと歩いてくる二人の人物がいた。
片方はエーデたちもよく知っているラスク――ベテラン冒険者で、イーサーと同じく新人の指導に当たっている教官役の冒険者だった。
もう一人は、平均よりやや上くらいの美人だった。腰に短剣と短い杖を装備しているという変わった格好だ。
「おう! ラスクとリリィさん! どうでした?」
イーサーが声をかけると、ラインハルトも二人に駆け寄る。戦っていた他の者たち――どうやら両陣営とも二十人ずついたらしい――は、興味深そうな顔をした。
「上から見てましたけど、いい動きでしたよ、どちらも」
ラスクは朗らかに笑って、ラインハルトに顔を向けた。
「特にラインハルトさんの勇敢さは凄いですね」
そう褒めるラスクに、リリィが苦言を呈した。
「美人に甘いのでは?」
美人? と話をなんとなく聞いていたエーデたち三人は疑問に思った。もしかしたらラインハルトは男装の麗人なのだろうかとエーデが思い当たる。
「フルフェイスの兜もつけていないのに、前に出過ぎです。万が一、矢で射られたり、魔法で攻撃されたりしたら、自分の部隊が混乱に陥ります」
「いやいや、前職の経験からそういう判断になるのかもしれませんが、あれは正しいですよ。どのみち混戦では危険は避けられません。だったら士気を高め、一気に勝負を持っていく方が安全です」
「さすがにそれは暴論では?」
どうやらラスクとリリィは、模擬戦には参加せず、離れて観察し、考察を述べる立場のようだった。二人共意見が大きく食い違っているらしい。
「……まあ、いいでしょう。フウマさんにも一応見ていただくよう頼んでおきましたし、彼の判断こそがもっとも正しいでしょう」
「そうですね。フウマさんの意見だったら、私も納得します」
なんでここで都市長? と不思議に思ったエーデだったが、「そういえば」と思い当たることがあった。
ここの都市長は、もともとこの険しい山で育ち、偶然身体能力が優れていた元最高位冒険者だという話なのだ。それが本当なら、ランクでいえばB級であるラスクが意見を聞くというのは正しい。
「んじゃ! あとはパァーッと親睦を深ますか! 『しのびゆ』をほとんど貸し切りにしたんでしょ? あそこのオゥバァさんの料理、美味いんすよねえ!」
髭面を緩ませて、くいっと一杯やる仕草をして見せるイーサー。
「おお! いいねいいね! それが一番の楽しみさ」
彼の部下として先程の戦いに参加していた男たちが口々に声を上げる。
かすかに呆れたように笑った後、リリィもラスクと顔を見合わせて、「じゃあ、引き上げましょうか」と話をまとめた。
「いやぁ~楽しみだなあ~」などという声が遠ざかった後、エーデはハッとして仲間の二人を見つめた。
「ちょっと、どうしよう!? なんか責任重大なんだけど」
「まさか、俺たちが山菜を採って戻らないと、指導教官たち腹をすかせるんじゃ……」
「いや、まさか……大丈夫だろ」
そう希望的観測を述べるヤンも青褪めていた。
三人は、脇目も振らず、山奥に突き進んだ。
すっかり忘れ去られたイヌガミは、やれやれというように溜息を吐き、三人の後を追った。
「寄せ集めとは言ってくれるな。我が部隊は、あの水産都市エレフィンの暴動を乗り越えた戦友。しかも、今では正式に水産都市エレフィンの警備隊に所属しているんだ。こうして独立した部隊として、裁量権を与えてくれた都市長には感謝だな」
ラインハルトという美形の若者は、爽やかに笑って、イーサーと固い握手をしている。
そこにゆっくりと歩いてくる二人の人物がいた。
片方はエーデたちもよく知っているラスク――ベテラン冒険者で、イーサーと同じく新人の指導に当たっている教官役の冒険者だった。
もう一人は、平均よりやや上くらいの美人だった。腰に短剣と短い杖を装備しているという変わった格好だ。
「おう! ラスクとリリィさん! どうでした?」
イーサーが声をかけると、ラインハルトも二人に駆け寄る。戦っていた他の者たち――どうやら両陣営とも二十人ずついたらしい――は、興味深そうな顔をした。
「上から見てましたけど、いい動きでしたよ、どちらも」
ラスクは朗らかに笑って、ラインハルトに顔を向けた。
「特にラインハルトさんの勇敢さは凄いですね」
そう褒めるラスクに、リリィが苦言を呈した。
「美人に甘いのでは?」
美人? と話をなんとなく聞いていたエーデたち三人は疑問に思った。もしかしたらラインハルトは男装の麗人なのだろうかとエーデが思い当たる。
「フルフェイスの兜もつけていないのに、前に出過ぎです。万が一、矢で射られたり、魔法で攻撃されたりしたら、自分の部隊が混乱に陥ります」
「いやいや、前職の経験からそういう判断になるのかもしれませんが、あれは正しいですよ。どのみち混戦では危険は避けられません。だったら士気を高め、一気に勝負を持っていく方が安全です」
「さすがにそれは暴論では?」
どうやらラスクとリリィは、模擬戦には参加せず、離れて観察し、考察を述べる立場のようだった。二人共意見が大きく食い違っているらしい。
「……まあ、いいでしょう。フウマさんにも一応見ていただくよう頼んでおきましたし、彼の判断こそがもっとも正しいでしょう」
「そうですね。フウマさんの意見だったら、私も納得します」
なんでここで都市長? と不思議に思ったエーデだったが、「そういえば」と思い当たることがあった。
ここの都市長は、もともとこの険しい山で育ち、偶然身体能力が優れていた元最高位冒険者だという話なのだ。それが本当なら、ランクでいえばB級であるラスクが意見を聞くというのは正しい。
「んじゃ! あとはパァーッと親睦を深ますか! 『しのびゆ』をほとんど貸し切りにしたんでしょ? あそこのオゥバァさんの料理、美味いんすよねえ!」
髭面を緩ませて、くいっと一杯やる仕草をして見せるイーサー。
「おお! いいねいいね! それが一番の楽しみさ」
彼の部下として先程の戦いに参加していた男たちが口々に声を上げる。
かすかに呆れたように笑った後、リリィもラスクと顔を見合わせて、「じゃあ、引き上げましょうか」と話をまとめた。
「いやぁ~楽しみだなあ~」などという声が遠ざかった後、エーデはハッとして仲間の二人を見つめた。
「ちょっと、どうしよう!? なんか責任重大なんだけど」
「まさか、俺たちが山菜を採って戻らないと、指導教官たち腹をすかせるんじゃ……」
「いや、まさか……大丈夫だろ」
そう希望的観測を述べるヤンも青褪めていた。
三人は、脇目も振らず、山奥に突き進んだ。
すっかり忘れ去られたイヌガミは、やれやれというように溜息を吐き、三人の後を追った。
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