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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

新米たち 8

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「で、こっちが山菜のうどん」

 丼に入った白い麺と、醤油の香りがする汁。そして細長い皿には、山菜がいろいろと盛り付けられていた。

「うどんはお代わり自由。あと、山菜はよく見ておいてね、後で採りに行くんだし」

「は、はい!」

 三人は同時に返事し、とりあえずうどんを啜った。啜り始めてしまった。

「うまっ! はふはふ……っ! こっちの天ぷらってのもうめぇ……っ!」

「ああ! この緑のやつ、まるで肉みてえにもちもちした食感してやがる!」

「私、こっちの葉っぱがいい。まるでその辺に生えていそうな葉っぱなのに、香り高くて、まるでハーブみたい……ずずず……汁ももうなくなっちゃった」

 およそ一分程度で完食した三人だった。

「じゃあ、さっき食べた五種類の山菜を適当に山で採ってきて。そんなに奥まで行かなくても見つかると思うから。はい、これ籠ね。できれば夕方の早い時間までに。夕飯時は結構混むのよねえ……」

 オゥバァが三人の食器を下げにやってきて、下げる食器と交換するように小さめの籠を一つ置いていった。

 呆然とそれを見つめる三人。

「おい……」

「ええ……」

「覚えたか?」

「いや」

 青褪めた顔をする三人は互いの顔を見合わす。

「聞きに行くべきじゃないの?」

「マジか? 俺ら、ここに来てから、ろくなことしてねえぞ。ツケにしてもらったり、ちゃんと食べる前に注意してもらったにもかかわらず、がっついて平らげちまうとか……」

「うっ……」

 リーダーであるラックの言葉に、エーデは詰まる。先程オゥバァが来た時に聞き出せなかったのに、今厨房で忙しく下拵えなどを始めたオゥバァを呼び出して聞くことなどできるはずはない。

「と、とりあえず行こうぜ! 案外、山菜なんて見ればすぐわかるかもしれないぜ!」

「そ、そうね……」

 三人が外に出ると、出入り口でイヌガミが待っていた。

「遅いであります!」

「イ、イヌガミ様!?」

 そういえば、途中から姿が見えなかったとエーデは思う。あまりにも驚くことが多すぎてすっかり忘れていた。

「ど、どうして、ここにいたんですか? 一緒に俺らと風呂に入ればよかったのに」

「我は入浴は嫌いなのである! 水浴びは好きだが、わざわざ臭くて、熱い湯に入るとか意味がわからないのである!」

「温泉の匂いっていいと思うんだけど……」

 エーデはそう言って、イヌガミの言う「臭い」というものの定義が、結構人間と違っているのかもしれないと気づいた。例えば、エーデが冒険時の体臭を消すためにつけている香水の類なども「臭い」に分類されるのではないだろうか。ふとそんなことに気づいたのだった。
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