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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

新米たち 7

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 三人は顔を見合わせて、食堂の前にいた。
 ここは温泉宿「しのびゆ」の中に作られた食堂だった。その入り口には、絵でさまざまな料理が描かれている。

「おい、なんだよ、この天ぷらっての、マジで美味そうなんだけど……!」

「それより、このうどんって何だ? 麺類ってあれだろ? クソ不味い料理のことだろ?」

「でも、いい匂いしてるわ~……確かこの都市の特産品にある醤油っていう高級調味料の匂いがこんなだったような……」

 ぐうぐうと腹を鳴らしながら、絵を見つめる三人。若さゆえの食欲と、疲労と空腹がない交ぜになって凄い顔をしていた。
 「今ならこのメニューの紙さえ食える!」と三人の顔に書いてあるかのようだった。

「俺、今ならこのメニューの紙でも食えるぜ! マジで!」

「いやー、さすがにそれは食べないでよ」

 声がして顔を上げると、三人の前には、前掛けをつけた褐色の少女がいた。

「あ! あなたは!」

「え? 知ってるのか、エーデ」

「えっと……さっき温泉で出会った……ええっと、名前は……」

「そういや、名乗ってなかったわね。私はオゥバァ。ダークエルフのオゥバァよ。いろいろあって、最近は暇潰しにここで料理してるの。結構いい暇潰しになってねえ」

「はぁ……」

 三人は、珍しい種族であるダークエルフが温泉宿で料理人をしているという事実に、ぽかんとした。

「さあ、入って。安い料理ならすぐ作ってあげられるから」

「えっ!? いいんですか!?」

 驚きの声を上げつつ、辞退するようなニュアンスを滲ませるものの、体は正直。もうすでに店の中に一歩足を踏み入れていた。

 そんなラックを見つめて、「おいおい」と肩に手をかけて引き止めるようなヤン。そんな彼も、なぜか店内に二歩足を踏み入れている。

「まったく、男共は……」

 吐き捨ているようにそう言ったエーデだったが、そんな彼女が一番店内奥深くまで入り込んでいた。

「ほらほら、いいからいいから。どうせ金がないとか、悩んでるんでしょ? でも、冒険者なら返せる当てあるから」

「当てってなんですか?」

 エーデは不思議そうに言ったが、「冒険者なんでしょ?」というオゥバァの返事に納得した。

 働いてすぐに返そうと決めた三人は、食堂のテーブル席に着いたのだった。
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