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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
ハリボテの塔
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「昼は山岳都市の受付、夜は偉大なるシノビに仕える忍犬なのであります!」
宗教都市ロウ崩壊以降、王都にある〈治癒神の御手教会〉の支部が、本部となっていた。 最初はさんざん、「聖地ロウの奪還」だの「聖地である宗教都市ロウ以外に本部はあり得ない」だのと言っていたが、いざ〈天雷の塔〉が修復不能だと知ると、ろくに復興支援もせずに、聖職者たちは引き上げていった。
お陰で、王都に、今回の騒動の元となった大組織の本部がすべて集まったようなものだ。
俺は〈治癒神の御手教会〉の尖塔の上に立っていた。王都が一望できそうなほど高い塔だ。なんでも〈天雷の塔〉が倒された直後から建造を始めたらしい。復興もせずに。
その目的は、〈治癒神の御手教会〉の新たな権威の象徴と、財力の証明というものだ。「まだまだ我らは健在だ!」と示すために、お布施したり、復興のために募金されたりした金を、この〈天雷〉一つ放てないただの高いだけの塔のために使ったのだ。
「さて、イヌガミ。俺が何をするかわかるか?」
「この塔を破壊するであります!」
「おお、意外と鋭いな」
俺はイヌガミの察しの良さに感心しつつ、この塔をイヌガミに竜に〈変化〉した後、くわえて王城の無駄に広い中庭にでも落とせと伝えた。夜間である現在、そこに誰もいないことは確認済みだ。
俺の指示に従い、イヌガミは上位竜へと〈変化〉した。
黒ぐろとした巨体に、額に手裏剣の模様。
背中に俺を乗せたイヌガミは、無駄に硬く頑丈に作られた、王国一高いと言われる塔をくわえた。
根本から引きちぎられた塔が、まるで悲鳴のような硬質な音を響かせた。
静まり返った王都の夜の中、巨大な破壊音が響き渡る。
「なっなんだアレは!?」
「竜!? 衛兵はどうした? 結界は!?」
「上位竜サイズだ……馬鹿な!」
そんな人々の叫びからやや遅れて、城壁や王城などから緊急事態を知らせる鐘が激しく打ち鳴らされ始めた。
カンカンカンという神経を逆撫でするような音と悲鳴の中、俺とイヌガミは空を移動する。
見せつけるようにゆっくりと羽ばたくイヌガミがくわえたそれがなんなのか、誰の目にも明らかだろう。
誰かが「〈教会〉の塔が……」と絶句し、それを引き金に大勢の視線が、元は塔があった跡地に向けられる気配がした。
予定と違って、王城の広い中庭に、大勢の兵士たちが現れてしまったが、俺たちの目的地がそこであると察したらしく、イヌガミが高度を徐々に下げていくと、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
予定通り、パッとイヌガミが塔を離した。それほどの高さからではなかったとはいえ、巨大建造物と大地の激突だ。ひどい衝撃音だった。地鳴りのような音を響かせて、まるで王都を直下型地震が襲ったかのように揺れた。
宗教都市ロウ崩壊以降、王都にある〈治癒神の御手教会〉の支部が、本部となっていた。 最初はさんざん、「聖地ロウの奪還」だの「聖地である宗教都市ロウ以外に本部はあり得ない」だのと言っていたが、いざ〈天雷の塔〉が修復不能だと知ると、ろくに復興支援もせずに、聖職者たちは引き上げていった。
お陰で、王都に、今回の騒動の元となった大組織の本部がすべて集まったようなものだ。
俺は〈治癒神の御手教会〉の尖塔の上に立っていた。王都が一望できそうなほど高い塔だ。なんでも〈天雷の塔〉が倒された直後から建造を始めたらしい。復興もせずに。
その目的は、〈治癒神の御手教会〉の新たな権威の象徴と、財力の証明というものだ。「まだまだ我らは健在だ!」と示すために、お布施したり、復興のために募金されたりした金を、この〈天雷〉一つ放てないただの高いだけの塔のために使ったのだ。
「さて、イヌガミ。俺が何をするかわかるか?」
「この塔を破壊するであります!」
「おお、意外と鋭いな」
俺はイヌガミの察しの良さに感心しつつ、この塔をイヌガミに竜に〈変化〉した後、くわえて王城の無駄に広い中庭にでも落とせと伝えた。夜間である現在、そこに誰もいないことは確認済みだ。
俺の指示に従い、イヌガミは上位竜へと〈変化〉した。
黒ぐろとした巨体に、額に手裏剣の模様。
背中に俺を乗せたイヌガミは、無駄に硬く頑丈に作られた、王国一高いと言われる塔をくわえた。
根本から引きちぎられた塔が、まるで悲鳴のような硬質な音を響かせた。
静まり返った王都の夜の中、巨大な破壊音が響き渡る。
「なっなんだアレは!?」
「竜!? 衛兵はどうした? 結界は!?」
「上位竜サイズだ……馬鹿な!」
そんな人々の叫びからやや遅れて、城壁や王城などから緊急事態を知らせる鐘が激しく打ち鳴らされ始めた。
カンカンカンという神経を逆撫でするような音と悲鳴の中、俺とイヌガミは空を移動する。
見せつけるようにゆっくりと羽ばたくイヌガミがくわえたそれがなんなのか、誰の目にも明らかだろう。
誰かが「〈教会〉の塔が……」と絶句し、それを引き金に大勢の視線が、元は塔があった跡地に向けられる気配がした。
予定と違って、王城の広い中庭に、大勢の兵士たちが現れてしまったが、俺たちの目的地がそこであると察したらしく、イヌガミが高度を徐々に下げていくと、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
予定通り、パッとイヌガミが塔を離した。それほどの高さからではなかったとはいえ、巨大建造物と大地の激突だ。ひどい衝撃音だった。地鳴りのような音を響かせて、まるで王都を直下型地震が襲ったかのように揺れた。
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