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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
もう大丈夫
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(……とはいえ、そろそろ俺も、もっと前に進まないとな……)
アレクサンダーたちは死者となり、十分な罰も受けたといえるかもしれない。そしてもう彼らはいないのだ。
俺は、俺自身の考えで、一歩を踏み出すべきなのだ。
まあ、堅苦しい思考はこのくらいにして、俺はイヌガミに報いることにした。
「イヌガミ、さっきは野菜の山の時、ありがとうな。助けられた。……で、これはお礼だ」
俺は、大鍋からおたまですくった野菜の小山を、イヌガミの椀にいれてやった。
「わっ若様~~!」
「ちゃんと野菜も食べろ! 感謝はしてるが、これはこれ、それはそれだ!」
「う、うぅ~~……」
イヌガミは唸ったものの、仕方なく肉と一緒に野菜も食べだした。
俺は宴会場の空気を邪魔しないように、気配を殺し席を立った。
久しぶりにシノビスキルを使用したので、不思議そうにイヌガミが見上げてきた。今の俺に気づけるのは、オゥバァとイヌガミくらいだろう。不思議そうなイヌガミの顔に向かって、「しーっ」というジェスチャーをする。
唇に人差し指を当て、片目をつぶれば、イヌガミは静かになった。
オゥバァはこういう場が苦手なのか、ずっと割と静かだった。意外と内弁慶みたいなところがあるのかもしれない。
俺はなくなりそうな鍋の具材を取りに外に出た。一番の目的はイノシシだ。
そして、俺の捕まえたイノシシは、一番美味しいところを真っ先にイヌガミにあげようと思った。
リノは「もう大丈夫だ」と思った。
部屋の片隅で楽しげな食事風景を眺めていて、不意にそう感じたのだ。
それは、フウマがシノビスキルを使って宴会場から姿を消す少し前に満足げに頷いた姿を見た瞬間だったか、異なる四つの種族の者たちが杯の縁を打ち合わせた瞬間だったか、よくわからない。
目に涙が滲んでいたからだ。
「リノちゃん?」
「大丈夫?」
次々に声をかけられる。
声の主は、まったく周囲に無頓着のように見えるダークエルフのオゥバァと、宴会の料理と酒しか目に入っていないかのように振る舞っていたセーレアの二人だ。
二人とも、意外と懐に入った相手には甘いというか、よく見ているというか。
リノが無言で見つめ返すと、セーレアがリノの頭をなでた。
「どこか具合悪いの?」
リノは上手く答えられなかった。
「あーっ! きっとフウマの料理が当たったんだよ、もしくは不味すぎたか!」
オゥバァが場の空気を明るくするように冗談を言った。
「いえ、なんでも……」
リノが「なんでもない」と言い切る前に、オゥバァも頭をなでてきた。小さな頭を二つの手がぐりぐりと撫で回す。
「なんでもない、ってことないでしょ? なんだか、どっか消えちゃいそうな顔してたよ? ……たぶん、ダークエルフの里を飛び出す前の私みたいな顔してた。なんで?」
単刀直入な質問に、リノは詰まった。
アレクサンダーたちは死者となり、十分な罰も受けたといえるかもしれない。そしてもう彼らはいないのだ。
俺は、俺自身の考えで、一歩を踏み出すべきなのだ。
まあ、堅苦しい思考はこのくらいにして、俺はイヌガミに報いることにした。
「イヌガミ、さっきは野菜の山の時、ありがとうな。助けられた。……で、これはお礼だ」
俺は、大鍋からおたまですくった野菜の小山を、イヌガミの椀にいれてやった。
「わっ若様~~!」
「ちゃんと野菜も食べろ! 感謝はしてるが、これはこれ、それはそれだ!」
「う、うぅ~~……」
イヌガミは唸ったものの、仕方なく肉と一緒に野菜も食べだした。
俺は宴会場の空気を邪魔しないように、気配を殺し席を立った。
久しぶりにシノビスキルを使用したので、不思議そうにイヌガミが見上げてきた。今の俺に気づけるのは、オゥバァとイヌガミくらいだろう。不思議そうなイヌガミの顔に向かって、「しーっ」というジェスチャーをする。
唇に人差し指を当て、片目をつぶれば、イヌガミは静かになった。
オゥバァはこういう場が苦手なのか、ずっと割と静かだった。意外と内弁慶みたいなところがあるのかもしれない。
俺はなくなりそうな鍋の具材を取りに外に出た。一番の目的はイノシシだ。
そして、俺の捕まえたイノシシは、一番美味しいところを真っ先にイヌガミにあげようと思った。
リノは「もう大丈夫だ」と思った。
部屋の片隅で楽しげな食事風景を眺めていて、不意にそう感じたのだ。
それは、フウマがシノビスキルを使って宴会場から姿を消す少し前に満足げに頷いた姿を見た瞬間だったか、異なる四つの種族の者たちが杯の縁を打ち合わせた瞬間だったか、よくわからない。
目に涙が滲んでいたからだ。
「リノちゃん?」
「大丈夫?」
次々に声をかけられる。
声の主は、まったく周囲に無頓着のように見えるダークエルフのオゥバァと、宴会の料理と酒しか目に入っていないかのように振る舞っていたセーレアの二人だ。
二人とも、意外と懐に入った相手には甘いというか、よく見ているというか。
リノが無言で見つめ返すと、セーレアがリノの頭をなでた。
「どこか具合悪いの?」
リノは上手く答えられなかった。
「あーっ! きっとフウマの料理が当たったんだよ、もしくは不味すぎたか!」
オゥバァが場の空気を明るくするように冗談を言った。
「いえ、なんでも……」
リノが「なんでもない」と言い切る前に、オゥバァも頭をなでてきた。小さな頭を二つの手がぐりぐりと撫で回す。
「なんでもない、ってことないでしょ? なんだか、どっか消えちゃいそうな顔してたよ? ……たぶん、ダークエルフの里を飛び出す前の私みたいな顔してた。なんで?」
単刀直入な質問に、リノは詰まった。
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