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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

シノビノサト村の特産品の肉

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「……じゃあ、次作るのは味噌汁にしよう」

 味噌ばっかだが、今はそれよりも大事なことがある。

「今度は、シャフィールに料理を混ぜるという重大な任務を与える」

 大きな鍋に水を入れて、火にかける。
 そして、おたまを手渡す。

「それでかき混ぜてくれ。俺は野菜を切るよ」

「私、先程から混ぜてばかりの気が……」

「…………」

「フウマさん?」

「いや、それは俺も同じさ、ほら、切ってばっかりだし! 役割分担が大事なんだよ! 冒険者パーティーとかと一緒さ!」

「なるほど!」

 やや強引な説明だったが、シャフィールは素直な性格らしく納得してくれた。

 海藻で出汁を取り、味噌を溶かしていく。
 シャフィールは丁寧にずっと混ぜ続けている。ずっとおたまを動かし続ける必要がないなどとは口が裂けても言わない。

(何かをしていれば余計なことは考えづらいからな)

 俺は、具材になりそうなものを片っ端から切っていく。先程使ったニンジンや大根でも、だいぶ味も食感も変わるから、皆も気にしないだろう。

「さて……後は肉を入れて……と」

 本日初となる肉を切って、シャフィールがかき混ぜている鍋に投入する。

「うーん……味噌汁は二種類作ろうかな」

(キメラの肉と普通の豚肉と両方食べて反応を窺いたいな)

 俺はもう一つ味噌汁を作ることをシャフィールに伝えて、新たな鍋を準備する。出汁を取り、味噌を入れるのは先程と同じだ。

(あ……先に火の通りにくい具材を煮てから、味噌のが良かったかな……まあいいか、薄く切ってあるし)

 俺の作業を見ているだけだったシャフィールだが、唯一、シャフィールが混ぜる鍋と違う具材――キメラの肉に目を止めた。

(バレたか?)

 別に、キメラの肉と説明してからでもいいのだが、できれば先入観なしにモンスターの肉を食べてほしかった。

「その肉、ちょっと変わってますね?」

「そ、そう?」

「はい。見たことがないかもしれません」

「……そっか、まあ、シノビノサト村の周囲以外で、牧畜しているのを見たことないからな」

 もしそんな集落があれば、キメラによって全滅しているか、もしくはキメラに余裕で勝てるような強者ばかりの村かのどちらかだろう。たぶん、ハイエルフたちならキメラも畜産は可能だろう。したいかどうかはわからないが。
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