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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

魔族の一家との再会

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 結局、当初の予定とは異なり、魔族の一家を探すのは、俺とイヌガミですることにした。
 荷物はすべてドワーフの住み処の前で下ろした。
 あそこはリザードマンたちのところとは違って、屋根もあるし、棚もある。俺たちが村から運んできた物を下ろすのに最適だろう。

 会議をするにしても、部屋の中の方がいい。
 ドワーフのところに集まるというふうに自然と決まった。

「さて。好きに飛んでいいぞ」

 イヌガミに指示を出し、魔族がいないか探す。

 この辺りのジャングルにいたはずだが、さすがに木々が邪魔で人影などは見えない。だが、今はお昼時だし、タマネギに火を通すということを教えた。だから……。

 イヌガミが窮屈な飛び方で鬱屈していたのを感じていたので、アクロバット飛行も許可したが、思った以上に自由に飛び回った。
 イヌガミはきりもみ飛行を始めた。

「あそこだ!」

 俺は指差した。
 イヌガミは背中に目があるわけではないが、それでもジャングルから立ち上る煙を見逃すことはない。
 俺の指図した「あそこ」が、煙の場所だと瞬時に悟り、そのままぐんぐんと向かっていく。優秀な忍犬。優秀な乗りものといえるのだが。

 きりもみ飛行をノリノリで続けたままのドラゴンが、頭上から降ってくるなどという経験をした魔族たちがどうなるかなど、言うまでもない。

 イヌガミが木々にぶつかるすれすれで大きく羽ばたき、勢いを殺した。
 それによって、茂った枝が広がり、木々が斜めになって、地上がよく見えた。

 焚き火と薪が転がり、地面に伏せるようにした魔族の一家の姿があった。

「や、やりすぎだ……あと、俺も指示が悪かった……」

 俺は、ぶるぶると震える魔族の親子のもとに、竜から飛び降りた。

「すみません……あのー……」

 できる限り優しく問いかけたのだが、顔を伏せたままの親子たちは、怯えた様子でタマネギを差し出してきた。

「タマネギあげます」

「…………」

「ですから、どうか妻と娘たちだけは!」

 思わず硬直していた俺だったが、すぐさま声を出した。

「俺です! フウマです! つい先日お会いした!」

 「え?」と呟いた魔族の男が顔を上げた。それに続いて、他の者たちも。

「あっ! 竜がしゃべっていたのではなく……フウマさんでしたか」

 知り合いと気づいて、やっと恐怖から解放されたらしい。

(なるほど。俺の声を竜の声と勘違いしていたのか)

 にしても「タマネギあげます」とは。
 それだけ食料が大事ということだろうか。タマネギで何かを許す竜というイメージは湧かないが、イヌガミなら許しそうな気もする。

(おっと。余計なことを考えてる場合じゃない)

 また魔族の一家が怯えたようになっていた。

「この竜はニセモノです。イヌガミが化けた姿なんです」

「え? あのワンちゃん?」

 魔族の子供たちがイヌガミを見つめた。

「――――」

 だが、つんと澄ました態度で、イヌガミは無言。

「おい」

 俺が突っ込んでも無言だった。

「ワンちゃん……犬ではない。我はイヌガミ。神格を持つ霊獣である」

「お、おう……」

 イヌガミはどうやら「ワンちゃん」発言に怒っていたらしい。

「あー……そういうことです。まあ」

 俺は歯切れ悪く説明した。
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