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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

ドワーフの元へ

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 リーダーの純粋な尊敬の念が打ち砕かれた頃、ドワーフたちの住む山が見えてきた。
 山脈を見下ろす経験など、俺とイヌガミ以外はないためか、皆、珍しそうに足元の光景を見つめている。

「……まるで別の世界ですね」

 本物の竜に乗り、竜と会話したかったリーダーは、この竜の正体がイヌガミと知ってちょっとだけ気落ちしていたが、またテンションが上ってきたらしい。

「なんでしたら、もっと面白い光景もお見せできますよ」

「え?」と戸惑ったリーダーから視線をそらし、後ろを向いた。

「ちょっとだけ寄り道していいか?」

「どこ?」

 セーレアの質問に、俺は頭上を指差した。
 セーレアが「指を一本立てただけじゃわかんないんだけど」とぶつぶつ言ってきたので、俺は簡潔に答えた。

「雲の上」

「は? 雲の上?」

 イヌガミに指示を出すと、最も低い位置にある雲に向かってイヌガミが飛んだ。高度が上昇し、気温が下がる。

 雲の上に出ると、真っ白な大地のようなものが広がっていた。

「凄い……」

 リーダーの感心した声に、何か返事をしようかと思ったが、無粋なのでやめておいた。
 セーレアたちも喜んでいるようだ。

 ほんのしばらく寄り道した後、俺たちはまた雲の下へ。

 今度はまっすぐドワーフの住み処の前へと向かった。

 ドワーフたちは、ドラゴンの襲来かと大慌てになっていたが、俺が手を振るとすぐに驚いた顔のまま両手を振ってきた。

「――よし、到着っと。ありがとうイヌガミ」

「はっ!」

 俺とイヌガミのやり取りを見て、ドワーフたちは目を丸くしている。
 誰かが呼びに行ったらしく、ドワーフの長老も少しずつ地上に駆けつけてきている。

「こちらの立派な竜は……以前お連れしていたイヌガミさんなのですかな?」

 ドワーフは半信半疑と言った様子だ。たぶん目の前でイヌガミが元の姿に戻らないと信じないだろう。まだ飛ぶ予定があるし、〈変化〉の時間に余裕があるようなので、元に戻すわけにはいかないが。

「そうですよ」

 リザードマンのリーダーのように本物の竜と勘違いするといけないので、さっさと説明しておく。

 長老が三人ほど集まったところで、俺は事情を告げた。

「例のお約束――魔族領の交易の話のために来ました。そして、稲作や水田開発をしてくれるリザードマンのリーダーがこちらです。……といっても、人数はもっといてもいいので、他のリザードマンたちももっと探そうかと思ってますが、とりあえずは」

「フウマ。あんたは私たちの紹介だけしてくれればいいわ。さっさとハイエルフと魔族の知り合いも連れてきなさいよ。こっちは進められる話を進めておくから」

 セーレアの提案はありがたい。
 イヌガミの〈変化〉の持続時間中に一気に終わらせるのが理想だからだ。

「わかった。……えっと、こっちは俺の村の代表者たちです。リザードマンのリーダーと彼らと、今後の相談をしておいてください」

 かなり大雑把だが、正直詳細はまだほとんど決まっていないのだ。

「任せておけ! 水田開発は始めてじゃが、その手の計画なら儂らも大得意じゃ!」

 ドワーフの長老が、老いてなお分厚い胸を力強く叩いたのだった。
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