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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
ハイエルフにおすすめした抹茶味のかき氷
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雪原に着いた。二度目だ。
もうここの猛吹雪になれたのか、イヌガミは庭のごとく駆け回っている。
イヌガミが踏んづけた汚い雪では悪いので、俺は綺麗そうな雪を拾って、背負い袋から取り出した鍋に入れていく。
「雪だるまですか?」
「違う。……お腹空いたんだろ? かき氷でデザートを作って、ついでにメシにしようと思って」
「おお! それは大変よろしいかと!」
イヌガミは手伝うつもりか、前足で雪をかいて集めてくれたが、さすがに使えない。
俺は雪を入手すると、すぐさま戻ることにした。溶けると困る。
「じゃあ、戻ろうか」
「はっ!」
そういえばイヌガミを連れてきた意味がなかった。まあ、置いていくと迷惑をかけそうだしな。
全身についた雪が溶け出して濡れた俺とイヌガミが戻ると、シャフィールはタオルを差し出してくれた。ありがたく拭かせてもらい、早速かき氷を作ることにする。
「椀とスプーンを人数分持ってきてほしいんですが」
「椀とスプーンですか?」
シャフィールは不思議そうにしたが、すぐにハイエルフの一人に命じた。俺が軍事担当だと予想したハイエルフの方だ。気軽に命じる辺りが、どこか女王様やお姫様っぽい。
運ばれてきたのは、予想外にかき氷にぴったりの綺麗なガラス皿。どういうわけか虹色の光沢があり、見る角度によって鮮やかさが変化する。
「これでいいですか?」
シャフィールがテーブルに並べた五つの皿を見た。
「ええ。十分です」
俺はその皿に雪を盛った。かき氷らしく、山になるように。
シャフィールたちは不思議そうにしている。
「あとは……抹茶と砂糖と水を混ぜて……」
竹筒に材料を放り込んで、振ってシロップを作る。抹茶味のシロップっぽくなるだろう。本当は煮た方がいいんだろうが。
よく混ぜた抹茶シロップをかき氷にかけて、三人の前に差し出した。
「溶ける前にどうぞ」
席に座った俺は、抹茶味のかき氷を食べてみた。本当はもてなされる側が食べてから口をつけるべきかもしれないが、食べ物だと示した方がいいだろうと思ったからだ。
(抹茶の色ってちょっと毒っぽいしな)
シャフィールたちは顔を見合わせ、先に口をつけたのは、意外なことにシャフィールでも軍事担当らしき者でもなく、もう一人のハイエルフだった。そのハイエルフは最も俺に好意的ではないように思えていたんだが……。
「……毒ではありませんな」
初めて聞いたそのハイエルフのセリフは、俺を疑うものだった。だが、嫌な気分にはならなかった。それよりも率先して口をつけたのに驚く。シャフィールに対する忠誠心か、はたまた特殊なスキルでも持っているのか。
「……あなたがそんなふうに顔を綻ばせるなんて珍しいわね。美味しいのかしら?」
シャフィールはそんなふうに言ってから口をつけた。
(え? 顔……綻んでるか?)
これならリザードマンの顔色を読む方が容易いだろう。長年生きるとハイエルフの表情筋は死んでしまうのだろうか? 仏頂面のように見えるが、シャクシャクと無言で食べているので、美味しいと思ってくれていると……思う。ちょっと自信ないけど。
もうここの猛吹雪になれたのか、イヌガミは庭のごとく駆け回っている。
イヌガミが踏んづけた汚い雪では悪いので、俺は綺麗そうな雪を拾って、背負い袋から取り出した鍋に入れていく。
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「違う。……お腹空いたんだろ? かき氷でデザートを作って、ついでにメシにしようと思って」
「おお! それは大変よろしいかと!」
イヌガミは手伝うつもりか、前足で雪をかいて集めてくれたが、さすがに使えない。
俺は雪を入手すると、すぐさま戻ることにした。溶けると困る。
「じゃあ、戻ろうか」
「はっ!」
そういえばイヌガミを連れてきた意味がなかった。まあ、置いていくと迷惑をかけそうだしな。
全身についた雪が溶け出して濡れた俺とイヌガミが戻ると、シャフィールはタオルを差し出してくれた。ありがたく拭かせてもらい、早速かき氷を作ることにする。
「椀とスプーンを人数分持ってきてほしいんですが」
「椀とスプーンですか?」
シャフィールは不思議そうにしたが、すぐにハイエルフの一人に命じた。俺が軍事担当だと予想したハイエルフの方だ。気軽に命じる辺りが、どこか女王様やお姫様っぽい。
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「これでいいですか?」
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「ええ。十分です」
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シャフィールたちは不思議そうにしている。
「あとは……抹茶と砂糖と水を混ぜて……」
竹筒に材料を放り込んで、振ってシロップを作る。抹茶味のシロップっぽくなるだろう。本当は煮た方がいいんだろうが。
よく混ぜた抹茶シロップをかき氷にかけて、三人の前に差し出した。
「溶ける前にどうぞ」
席に座った俺は、抹茶味のかき氷を食べてみた。本当はもてなされる側が食べてから口をつけるべきかもしれないが、食べ物だと示した方がいいだろうと思ったからだ。
(抹茶の色ってちょっと毒っぽいしな)
シャフィールたちは顔を見合わせ、先に口をつけたのは、意外なことにシャフィールでも軍事担当らしき者でもなく、もう一人のハイエルフだった。そのハイエルフは最も俺に好意的ではないように思えていたんだが……。
「……毒ではありませんな」
初めて聞いたそのハイエルフのセリフは、俺を疑うものだった。だが、嫌な気分にはならなかった。それよりも率先して口をつけたのに驚く。シャフィールに対する忠誠心か、はたまた特殊なスキルでも持っているのか。
「……あなたがそんなふうに顔を綻ばせるなんて珍しいわね。美味しいのかしら?」
シャフィールはそんなふうに言ってから口をつけた。
(え? 顔……綻んでるか?)
これならリザードマンの顔色を読む方が容易いだろう。長年生きるとハイエルフの表情筋は死んでしまうのだろうか? 仏頂面のように見えるが、シャクシャクと無言で食べているので、美味しいと思ってくれていると……思う。ちょっと自信ないけど。
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