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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
決着
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「まず、一つ質問させてください」
俺はずっと気になっていたことを尋ねることにした。出会った当初のような棘のある声ではなく、静かな声で聞けたのは話し合いのお陰だろう。
「はい、なんでしょうか?」
「あなた方ハイエルフは、なぜ『魔族領の平和を担っている』と言われているのですか?」
「この地にある天候制御を行う塔――『〈天雷の塔〉試作型』を守っているため、そう呼ばれているのです」
「アレらを使ってこの魔族領の天候を……悪くしているんですよね?」
そこまで言って、なんとなく薄々真実に気づいた。俺はハイエルフの返事を待たず、考えをまとめるように呟く。
「……魔族領は荒れた土地で、人間が侵略するほどの魅力がない。だから戦争が起きていない。つまり、『平和を担っている』と言えるということですか?」
俺の質問に、ハイエルフは頷いた。
「お察しの通りです。最初あなたがやって来た時、何を怒ってらっしゃるのかすぐにわかりました。過去にも、あなたのように我らの元に来た者がいるのです」
「……でしょうね」
あそこまであからさまなら、事実に気づく者もいるだろう。
「けれど、最終的には理解を示してくださいました」
「そういう……ことですか……」
俺はハイエルフの意思を確認するため、別の角度から尋ねた。
「魔族領の天候を良くして『平等』にしようとは思わないんですね?」
「フフ……先程の『五等分』の話のようですね」
ハイエルフは短く笑った。俺が不平等を脊髄反射的に糾弾するとはもう思っていないようだ。
(もし、話し合う前の俺なら――)
おそらく納得できなかっただろう。
結果、あの天雷の塔もどきを破壊し、魔族領が豊穣になれば――。
(そうなれば――きっと『平等』と引き換えに戦争が起きただろう)
人間たちが魔族領に攻め込んだ可能性は高い。そして、疲弊した魔族領側は負けただろう。
(なるほど。『平和を担っている』と言われるわけだ)
ハイエルフたちをリザードマンやドワーフたちが尊敬していたのも納得だ。
「本題に入ったらあっという間でしたね」
俺は思わず苦笑した。
イヌガミがまた顔を前足にうずめて居眠りを始めるくらい空気が弛緩した。
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「……でしょうね」
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「けれど、最終的には理解を示してくださいました」
「そういう……ことですか……」
俺はハイエルフの意思を確認するため、別の角度から尋ねた。
「魔族領の天候を良くして『平等』にしようとは思わないんですね?」
「フフ……先程の『五等分』の話のようですね」
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(もし、話し合う前の俺なら――)
おそらく納得できなかっただろう。
結果、あの天雷の塔もどきを破壊し、魔族領が豊穣になれば――。
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人間たちが魔族領に攻め込んだ可能性は高い。そして、疲弊した魔族領側は負けただろう。
(なるほど。『平和を担っている』と言われるわけだ)
ハイエルフたちをリザードマンやドワーフたちが尊敬していたのも納得だ。
「本題に入ったらあっという間でしたね」
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イヌガミがまた顔を前足にうずめて居眠りを始めるくらい空気が弛緩した。
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