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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
ハイエルフの都
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(凄い……)
「天雷の塔もどき」があるとは思っていたが、数え切れないほどあるとは予想外だった。〈天雷の塔〉ほどのサイズではないが、高さだけならかつて見た王城に匹敵するだろう。巨大建造物が立ち並ぶ様は圧巻だった。
そんな天雷の塔もどきの間を、竜になっているイヌガミは俺を乗せて飛んでいく。
「…………」
俺は見入っていた。
碁盤目状の道のあいだには広場があり、たいてい天雷の塔もどきが立てられていた。等間隔なのは、何らかの魔術的理由があるのだろうか。まるで都市を丸ごと魔法の発動に捧げているような印象だった。
イヌガミもこの光景に見入っているらしく珍しく静かだった。
「寂しい街だな」
生命の気配がほとんど感じられない。生物がいないという意味ではなく、活気がないのだ。
「墓標のようであります」
ぽつんと、イヌガミが竜の声帯のためか、重厚な声でつぶやいた。
「墓標か」
俺はこれらがあの異常気象の元だと直感しているので、天雷の塔もどきという印象しか浮かばない。けど、確かにこの静かな様子は墓標のようにも見えた。
大樹が見えてきた。
その広場だけは、天雷の塔もどきではなく、葉を茂らせてた枝を四方に伸ばし、蔦が絡まり、苔生した大樹があった。
何か意味があるのは一目でわかった。
イヌガミが進路を変え、そちらに近づいていく。
(……この大樹がこの都の中心っぽいな……)
近づけば、生活感が感じられた。
くり抜かれた幹には部屋が見え、太い枝には家があり、中には洗濯物が干されている小枝まであった。分厚い樹皮には階段が刻まれ、巨大な螺旋階段のようになっている。
俺が指示するまでもなく、イヌガミは大樹の前に着陸した。
イヌガミから下りた俺たちが歩き出すと、木の根のあいだに作られた出入り口からハイエルフたちが出てきた。
突然の竜に乗った者の来訪にもかかわらず、慌てたところはほとんどない。どうやら俺たちが来ることを予想していたらしい。
俺は開口一番尋ねていた。
「あなた方が……『魔族領の平和を担う』というハイエルフの方々でよろしいですか?」
俺の問いかけに含まれたどこか辛辣な気配を感じたらしく、代表者らしき者が一歩前に出た。
目の前のハイエルフは、全員よく似ていた。非常に整った顔立ちというのは、性別に関係なく似たようなものになるのかもしれない。前垂れのような物がついたズボンに、まっすぐな長い髪で統一されているため性別さえわからなかった。
「その通りです」
ハイエルフは静かに答えた。声色には言い訳めいた感じも、「魔族領の平和を担う」と主張することに対するプレッシャーも、何も感じなかった。
ただ、俺たちを見定めるように見つめていた。
「天雷の塔もどき」があるとは思っていたが、数え切れないほどあるとは予想外だった。〈天雷の塔〉ほどのサイズではないが、高さだけならかつて見た王城に匹敵するだろう。巨大建造物が立ち並ぶ様は圧巻だった。
そんな天雷の塔もどきの間を、竜になっているイヌガミは俺を乗せて飛んでいく。
「…………」
俺は見入っていた。
碁盤目状の道のあいだには広場があり、たいてい天雷の塔もどきが立てられていた。等間隔なのは、何らかの魔術的理由があるのだろうか。まるで都市を丸ごと魔法の発動に捧げているような印象だった。
イヌガミもこの光景に見入っているらしく珍しく静かだった。
「寂しい街だな」
生命の気配がほとんど感じられない。生物がいないという意味ではなく、活気がないのだ。
「墓標のようであります」
ぽつんと、イヌガミが竜の声帯のためか、重厚な声でつぶやいた。
「墓標か」
俺はこれらがあの異常気象の元だと直感しているので、天雷の塔もどきという印象しか浮かばない。けど、確かにこの静かな様子は墓標のようにも見えた。
大樹が見えてきた。
その広場だけは、天雷の塔もどきではなく、葉を茂らせてた枝を四方に伸ばし、蔦が絡まり、苔生した大樹があった。
何か意味があるのは一目でわかった。
イヌガミが進路を変え、そちらに近づいていく。
(……この大樹がこの都の中心っぽいな……)
近づけば、生活感が感じられた。
くり抜かれた幹には部屋が見え、太い枝には家があり、中には洗濯物が干されている小枝まであった。分厚い樹皮には階段が刻まれ、巨大な螺旋階段のようになっている。
俺が指示するまでもなく、イヌガミは大樹の前に着陸した。
イヌガミから下りた俺たちが歩き出すと、木の根のあいだに作られた出入り口からハイエルフたちが出てきた。
突然の竜に乗った者の来訪にもかかわらず、慌てたところはほとんどない。どうやら俺たちが来ることを予想していたらしい。
俺は開口一番尋ねていた。
「あなた方が……『魔族領の平和を担う』というハイエルフの方々でよろしいですか?」
俺の問いかけに含まれたどこか辛辣な気配を感じたらしく、代表者らしき者が一歩前に出た。
目の前のハイエルフは、全員よく似ていた。非常に整った顔立ちというのは、性別に関係なく似たようなものになるのかもしれない。前垂れのような物がついたズボンに、まっすぐな長い髪で統一されているため性別さえわからなかった。
「その通りです」
ハイエルフは静かに答えた。声色には言い訳めいた感じも、「魔族領の平和を担う」と主張することに対するプレッシャーも、何も感じなかった。
ただ、俺たちを見定めるように見つめていた。
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