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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
砂嵐と砂漠
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「凄い……」
思わず口から漏れた俺の驚きの声は、砂嵐の音に半ばかき消された。
イヌガミは飛翔している。その背に乗る俺もかなりの高さにいる。それでも近づいた砂嵐は、見上げるほどの高さがあった。現実の光景とは思えない。
遥か上空――山頂ほどの高さには黄土色のベールはない。そこまで砂が巻き上がらないためだろう。ただし、風が荒れ狂っているのは間違いない。その辺りだけ雲の流れがおかしかった。
まともな神経を持っていたら、きっと通ろうなどと思わないだろう。オゥバァのような〈上位職〉でもここは抜けられないかもしれない。
「どうする?」
俺はイヌガミに問いかけた。
「正面突破であります!」
イヌガミらしい返答だ。
イヌガミは真っ正面から砂嵐に突っ込んだ。
上位竜の巨体ですら風に煽られて揺れる。
まっすぐ突き進もうとしたが、長過ぎる翼が仇となり、激しく傾いた。当然、乗っている俺も振り回される。
イヌガミの主張した正面突破は明らかに無茶だったのだ。
「……ほんと、期待を裏切らないな、お前は!」
砂嵐のせいで目を開けることもできず、竜になったイヌガミの首元にしがみついた俺は笑った。
「申し訳ございません、若様!」
「ここはシノビらしく背を低くして走って忍び込んでみよう!」
この砂嵐の結界を抜けるなら、飛ぶよりそのほうがいいだろう。
すぐさま竜から戻ったイヌガミは、俺と共に、ご丁寧に元来た砂漠地帯に落とされた。
俺は砂に頭から突っ込んだせいで、口の中がじゃりじゃりする。
「ぺっぺっ! ……砂漠の砂がクッション代わりになって怪我をしなくていいな。……もしかして」
わざとこういう地形にしたんじゃないか? 噂のハイエルフはおそらく思慮深いタイプだろう。天候を操れるなら、この辺り一帯を砂漠にすることもできたはずだ。
「俺やイヌガミだから吹き飛ばされてもどうってことないが、普通なら死にかねないからな……」
たぶん、ハイエルフはそこまで考えてこのようにしているのだろう。
「思ったよりいいヤツかもしれないな」
思わず口から漏れた俺の驚きの声は、砂嵐の音に半ばかき消された。
イヌガミは飛翔している。その背に乗る俺もかなりの高さにいる。それでも近づいた砂嵐は、見上げるほどの高さがあった。現実の光景とは思えない。
遥か上空――山頂ほどの高さには黄土色のベールはない。そこまで砂が巻き上がらないためだろう。ただし、風が荒れ狂っているのは間違いない。その辺りだけ雲の流れがおかしかった。
まともな神経を持っていたら、きっと通ろうなどと思わないだろう。オゥバァのような〈上位職〉でもここは抜けられないかもしれない。
「どうする?」
俺はイヌガミに問いかけた。
「正面突破であります!」
イヌガミらしい返答だ。
イヌガミは真っ正面から砂嵐に突っ込んだ。
上位竜の巨体ですら風に煽られて揺れる。
まっすぐ突き進もうとしたが、長過ぎる翼が仇となり、激しく傾いた。当然、乗っている俺も振り回される。
イヌガミの主張した正面突破は明らかに無茶だったのだ。
「……ほんと、期待を裏切らないな、お前は!」
砂嵐のせいで目を開けることもできず、竜になったイヌガミの首元にしがみついた俺は笑った。
「申し訳ございません、若様!」
「ここはシノビらしく背を低くして走って忍び込んでみよう!」
この砂嵐の結界を抜けるなら、飛ぶよりそのほうがいいだろう。
すぐさま竜から戻ったイヌガミは、俺と共に、ご丁寧に元来た砂漠地帯に落とされた。
俺は砂に頭から突っ込んだせいで、口の中がじゃりじゃりする。
「ぺっぺっ! ……砂漠の砂がクッション代わりになって怪我をしなくていいな。……もしかして」
わざとこういう地形にしたんじゃないか? 噂のハイエルフはおそらく思慮深いタイプだろう。天候を操れるなら、この辺り一帯を砂漠にすることもできたはずだ。
「俺やイヌガミだから吹き飛ばされてもどうってことないが、普通なら死にかねないからな……」
たぶん、ハイエルフはそこまで考えてこのようにしているのだろう。
「思ったよりいいヤツかもしれないな」
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