169 / 263
第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
食べられなかった白身と黄身ではない卵
しおりを挟む
それなりに高所に移動した時。
また「若様ー! 若様ー!」というイヌガミの呼び声が聞こえてきた。
「はいはい。今行くよ」
ぞんざいに答えたのは、また天然の炭酸水のようなハズレを引かされるような予感がしたからだ。
「鳥の巣であります!」
イヌガミが頭上を前足で差す。
ここからでは、鳥の巣は見えないが、白い鳥が何十羽も飛び交っていることから巣があると予想できた。
「卵を食べるチャンスであります!」
「その発想はなかった」
ただ眺めるだけだった俺は、イヌガミの発案に従って、崖を上って、巣へと辿り着いた。
鳥たちは俺たちを見て、攻撃してきたりはしなかった。何羽か飛び立ったが、そのまま座り込んでいるものもいる。
「卵か……」
確かに様々な料理のレパートリーに使える。
近くの卵を握った瞬間、村で育てている鶏の卵よりも薄かったらしく、簡単に割れてしまった。
(中身がこぼれる……!)
そう焦ったが、確かにこぼれそうになったが、中身は白身と黄身ではなく――。
「…………なあ、イヌガミ……これ……食べるか?」
本当は割った俺が食べるべきなのかもしれないが……食べる気にはならない中身だった。
ぷるぷるしたグロテスクな中身から顔をそらし、イヌガミに差し出す。
(卵として食べるタイミングが遅すぎたようだ……)
一部の地域では、この段階の卵を食べるそうだが、俺には到底食べることは不可能だった。
「いただくであります!」
イヌガミは獣らしく、躊躇なく食べた。
……ムシャ……コリコリ……。
生卵を食べた時には絶対に出ない硬質な音が混じる。
「ごちそうさまでした若様! 歯応えがあって最高でした!」
イヌガミが合掌した。
俺も、手を合わせた。手を合わせる意味を今更ながら感じた。なんとなく卵イコール白身と黄身の食材と思っていた。だが、あれはもともとああいうものなのだ。村で定期的に手渡される養鶏場の卵とはまったく違ったので、衝撃を受けた。
俺はあちこちの巣にある卵を見回した。
「……なるほど。こうしてよく見れば新しそうな卵もあれば、古そうな卵もあるな」
たぶん白っぽい綺麗な卵が新しい卵だろう。先程の卵は改めて考えると結構汚れていた。
また、俺とイヌガミはドワーフ捜索に戻った。
それからしばらくして、前日では見つけられなかったドワーフを一人ついに見つけることができた。
なぜかわからないが、彼らは高所に隠れるように住んでいるようだった。
また「若様ー! 若様ー!」というイヌガミの呼び声が聞こえてきた。
「はいはい。今行くよ」
ぞんざいに答えたのは、また天然の炭酸水のようなハズレを引かされるような予感がしたからだ。
「鳥の巣であります!」
イヌガミが頭上を前足で差す。
ここからでは、鳥の巣は見えないが、白い鳥が何十羽も飛び交っていることから巣があると予想できた。
「卵を食べるチャンスであります!」
「その発想はなかった」
ただ眺めるだけだった俺は、イヌガミの発案に従って、崖を上って、巣へと辿り着いた。
鳥たちは俺たちを見て、攻撃してきたりはしなかった。何羽か飛び立ったが、そのまま座り込んでいるものもいる。
「卵か……」
確かに様々な料理のレパートリーに使える。
近くの卵を握った瞬間、村で育てている鶏の卵よりも薄かったらしく、簡単に割れてしまった。
(中身がこぼれる……!)
そう焦ったが、確かにこぼれそうになったが、中身は白身と黄身ではなく――。
「…………なあ、イヌガミ……これ……食べるか?」
本当は割った俺が食べるべきなのかもしれないが……食べる気にはならない中身だった。
ぷるぷるしたグロテスクな中身から顔をそらし、イヌガミに差し出す。
(卵として食べるタイミングが遅すぎたようだ……)
一部の地域では、この段階の卵を食べるそうだが、俺には到底食べることは不可能だった。
「いただくであります!」
イヌガミは獣らしく、躊躇なく食べた。
……ムシャ……コリコリ……。
生卵を食べた時には絶対に出ない硬質な音が混じる。
「ごちそうさまでした若様! 歯応えがあって最高でした!」
イヌガミが合掌した。
俺も、手を合わせた。手を合わせる意味を今更ながら感じた。なんとなく卵イコール白身と黄身の食材と思っていた。だが、あれはもともとああいうものなのだ。村で定期的に手渡される養鶏場の卵とはまったく違ったので、衝撃を受けた。
俺はあちこちの巣にある卵を見回した。
「……なるほど。こうしてよく見れば新しそうな卵もあれば、古そうな卵もあるな」
たぶん白っぽい綺麗な卵が新しい卵だろう。先程の卵は改めて考えると結構汚れていた。
また、俺とイヌガミはドワーフ捜索に戻った。
それからしばらくして、前日では見つけられなかったドワーフを一人ついに見つけることができた。
なぜかわからないが、彼らは高所に隠れるように住んでいるようだった。
0
お気に入りに追加
4,199
あなたにおすすめの小説
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。