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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
天然の炭酸水の湧き水を飲んでみた
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木の根っこを枕に星空を見上げていたら、いつの間にか眠りに落ちていたらしい。
久しぶりに温泉に浸かって、慣れない体験もいろいろしたため、寝落ちしてしまったようだ。
(自分にしてはとても珍しい経験だな……)
もちろんモンスターや山賊のたぐいが忍び寄ったら、瞬時に起きれるくらいシノビの訓練を積んでいる。だが、安心してぐっすりだった理由は、もう一つある。
「起きろ、イヌガミ」
なぜか俺の腹の上で丸くなって寝ている、丸っこい忍犬を揺する。優秀な忍犬がいたので、ぐっすり眠りやすかったのだ。
「おはようございます若様!」
朝からテンションの高いイヌガミが挨拶し、地面におりた。
「てか、なんで俺の上で寝てたんだ……?」
少なくとも一緒に星空を眺めていた時はそうじゃなかったはずだ。
「はっ! 若様が風邪を召されぬようにお腹を温めておきました!」
そんな「草履を温めておきました!」みたいなノリで言われても。そういえば以前、俺の履物を温めていたこともあったな。なぜ。
気を取り直して、俺は宣言した。
「今日こそドワーフを見つけるぞ!」
「おおー! であります!」
ノリノリのイヌガミと一緒に拳を突き上げる。
「朝食は残っている肉を食べてしまおう。燻製にしたとはいえ、そろそろ腐ってきそうだしな」
「肉でありますか!」
嬉しそうなイヌガミと一緒に、肉を平らげていく。
昨日さんざん歩き回ったし、久しぶりの肉だったので、あっという間に燻製肉はなくなった。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまであります!」
「さて、今日こそはドワーフを探すぞ。今日はもっと上の方も探してみようと思う」
ついつい人間の集落の感覚で、麓の辺りを探し回ってしまったが、案外もっと高い場所で生活している可能性もある。
山脈の上部は、禿げたように地肌を覗かせている。山が何らかの事情で緑を失ったのではなく、単純に高さの問題だ。一定より上は高木が生えない。
(確か森林限界とかいうんだったか……)
しかし、気温が下がろうが、酸素が薄かろうが、俺とイヌガミなら問題ない。
今度は森林限界以上も捜索範囲に入れることにした。
ドワーフを探し回ってしばらくして、イヌガミが「若様ー! 若様ー!」と呼んできた。効率よく探すため、互いに結構離れて動いていた。
イヌガミに呼ばれて、俺が駆けつけてみると、イヌガミが水溜まりをぱしゃぱしゃして遊んでいるように見えた。
「……イヌガミ……」
優秀なんだか、そうでないのか、微妙な忍犬だった。
呆れたような俺の声に、イヌガミがこちらを振り返った。
だが、また水溜まりのような場所に向かって、前足を動かしている。
(なにかあるんだろうか……?)
興味を引かれて、イヌガミの背中越しに覗いてみると、不思議なことに水中に小さな泡がいくつも出ていた。
(生き物の呼吸か……?)
だが、一定間隔で継続して泡が出続けている。
気配感知スキルを念のため使ってみたが、何も反応はなかった。
生物がいるわけではない。
(なんだ、これ?)
小さな泡がずっと出ている小さな水溜まりのような場所に膝をつき、手を伸ばした。
手の産毛に小さな泡がくっつく。しゅわしゅわとした感触が少しある。
「もしかして……天然の炭酸水……なのか?」
初めて見るのでちょっと自信はない。
かつて曾祖父が「炭酸水が飲みたい」とこぼしていたそうだ。その時、「天然の炭酸水がある」と言っていたらしい。
ちなみに曾祖父が最も飲みたがっていた「黒い炭酸水」は天然にはないそうだ。確か、コー……なんとかというらしい。なにぶんずっと昔のことなのであやふやだ。
毒ではないことをスキルで確認した後、試しに飲んでみる。
(さて……どんな味だ?)
曾祖父があれほど飲みたがったという代物――炭酸水。
口に含んだ瞬間、まず舌の上で弾けるような感覚があった。
(おお!)
今まで飲んできたあらゆる飲み物と違う刺激的な感覚に思わず驚く。
(そして、喉越しはすっきりとしていて……すっきりとしていて…………)
感想をいろいろと考えていたが、それ以上浮かばなかった。
イヌガミも天然の炭酸水を飲み始めた。
それから一言。
「味がないであります!」
「うん。まさしく」
そう。
甘くもない、辛くもない、苦くもない……ただ水がシュワシュワして刺激的な感触になっただけだ。
「これ、美味いか?」
俺は立ち上がった。
なぜ曾祖父が炭酸水などというものを飲みたいとこぼしていたのかわからなかった。
天然の炭酸水の湧き水を後にし、俺とイヌガミはまた手分けしてドワーフを探し始めた。
久しぶりに温泉に浸かって、慣れない体験もいろいろしたため、寝落ちしてしまったようだ。
(自分にしてはとても珍しい経験だな……)
もちろんモンスターや山賊のたぐいが忍び寄ったら、瞬時に起きれるくらいシノビの訓練を積んでいる。だが、安心してぐっすりだった理由は、もう一つある。
「起きろ、イヌガミ」
なぜか俺の腹の上で丸くなって寝ている、丸っこい忍犬を揺する。優秀な忍犬がいたので、ぐっすり眠りやすかったのだ。
「おはようございます若様!」
朝からテンションの高いイヌガミが挨拶し、地面におりた。
「てか、なんで俺の上で寝てたんだ……?」
少なくとも一緒に星空を眺めていた時はそうじゃなかったはずだ。
「はっ! 若様が風邪を召されぬようにお腹を温めておきました!」
そんな「草履を温めておきました!」みたいなノリで言われても。そういえば以前、俺の履物を温めていたこともあったな。なぜ。
気を取り直して、俺は宣言した。
「今日こそドワーフを見つけるぞ!」
「おおー! であります!」
ノリノリのイヌガミと一緒に拳を突き上げる。
「朝食は残っている肉を食べてしまおう。燻製にしたとはいえ、そろそろ腐ってきそうだしな」
「肉でありますか!」
嬉しそうなイヌガミと一緒に、肉を平らげていく。
昨日さんざん歩き回ったし、久しぶりの肉だったので、あっという間に燻製肉はなくなった。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまであります!」
「さて、今日こそはドワーフを探すぞ。今日はもっと上の方も探してみようと思う」
ついつい人間の集落の感覚で、麓の辺りを探し回ってしまったが、案外もっと高い場所で生活している可能性もある。
山脈の上部は、禿げたように地肌を覗かせている。山が何らかの事情で緑を失ったのではなく、単純に高さの問題だ。一定より上は高木が生えない。
(確か森林限界とかいうんだったか……)
しかし、気温が下がろうが、酸素が薄かろうが、俺とイヌガミなら問題ない。
今度は森林限界以上も捜索範囲に入れることにした。
ドワーフを探し回ってしばらくして、イヌガミが「若様ー! 若様ー!」と呼んできた。効率よく探すため、互いに結構離れて動いていた。
イヌガミに呼ばれて、俺が駆けつけてみると、イヌガミが水溜まりをぱしゃぱしゃして遊んでいるように見えた。
「……イヌガミ……」
優秀なんだか、そうでないのか、微妙な忍犬だった。
呆れたような俺の声に、イヌガミがこちらを振り返った。
だが、また水溜まりのような場所に向かって、前足を動かしている。
(なにかあるんだろうか……?)
興味を引かれて、イヌガミの背中越しに覗いてみると、不思議なことに水中に小さな泡がいくつも出ていた。
(生き物の呼吸か……?)
だが、一定間隔で継続して泡が出続けている。
気配感知スキルを念のため使ってみたが、何も反応はなかった。
生物がいるわけではない。
(なんだ、これ?)
小さな泡がずっと出ている小さな水溜まりのような場所に膝をつき、手を伸ばした。
手の産毛に小さな泡がくっつく。しゅわしゅわとした感触が少しある。
「もしかして……天然の炭酸水……なのか?」
初めて見るのでちょっと自信はない。
かつて曾祖父が「炭酸水が飲みたい」とこぼしていたそうだ。その時、「天然の炭酸水がある」と言っていたらしい。
ちなみに曾祖父が最も飲みたがっていた「黒い炭酸水」は天然にはないそうだ。確か、コー……なんとかというらしい。なにぶんずっと昔のことなのであやふやだ。
毒ではないことをスキルで確認した後、試しに飲んでみる。
(さて……どんな味だ?)
曾祖父があれほど飲みたがったという代物――炭酸水。
口に含んだ瞬間、まず舌の上で弾けるような感覚があった。
(おお!)
今まで飲んできたあらゆる飲み物と違う刺激的な感覚に思わず驚く。
(そして、喉越しはすっきりとしていて……すっきりとしていて…………)
感想をいろいろと考えていたが、それ以上浮かばなかった。
イヌガミも天然の炭酸水を飲み始めた。
それから一言。
「味がないであります!」
「うん。まさしく」
そう。
甘くもない、辛くもない、苦くもない……ただ水がシュワシュワして刺激的な感触になっただけだ。
「これ、美味いか?」
俺は立ち上がった。
なぜ曾祖父が炭酸水などというものを飲みたいとこぼしていたのかわからなかった。
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