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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
夜明けの空の下 3
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走行中の竜車から飛び降りた少女――リノは、転びそうになりつつも、俺に向かって慌てた様子で走ってきた。
「フウマぁ!」
嬉しそうに、心配そうに、リノが俺の名を呼んだ。
「……どうしてここに?」
驚いた俺は、危ない真似をしたリノに思わず否定的な声を投げかけた。こんな傷だらけのところを見られたくないという思いもあったからだろう。
俺のもとに駆けてくるリノの頬を、ゆらゆらと港の燃え盛る炎が照らす。
俺が尋ねた瞬間、走っていたリノがなぜかいきなり立ち止まった。
リノは何か言おうとした様子だったが、上手く言葉にならなかったようだ。
(何か失言だったか?)
考えてみてもわからない。
だが、知り合いの三人の女性たちの反応を見るに、何かまずかったらしい。
リノと同じ竜車の荷台に乗っていたセーレアは「あちゃ~」と顔をしかめて空を仰ぎ、これからの展開を見たくないと言うかのように、大きな帽子のつばで顔を隠してしまった。オゥバァは、ひょこっと積み荷から顔を覗かせて興味津々の様子だ。
俺の隣に立つリリィは、ちょっとだけ俺に非難するような目を向けた。
俺はとりあえず、立ち止まってしまったリノに駆け寄って指示を出した。
「今すぐここを離れるんだ、リノ! ここは危険だ、本当に危険なんだ!」
脳裏に苔の化け物が浮かぶ。今は「リノを絶対に守りきれる」と言いきる自信がない。
リノがなぜか俯いてしまった。
荷台で「あいつはアホよ、アホ」と陰口を叩くセーレア。聞こえてるぞ。アホとは俺のことだろう。いったい何がアホだというのか。
不思議な間ができた。
衛兵たちも、難民たちも、その他の者たちも、なぜか俺たち二人に注目している。
俺は明らかに目立つ動きをしていたし、リノも走る竜車から飛び降りて駆けつけるなんて真似をしたんだから当然かもしれない。
ただ、なんか居心地の悪い間だった。
「……それだけ?」
リノが顔を上げて、首をかしげた。
頷くのを躊躇われた。
(これは……殺気か? ……いや、リノが殺気立つ理由はないし……でも、なんか怒ってる……?)
リノは俺を睨むように見ていたが、俺が何も返事を返さないと、悲しそうに尋ねてきた。
「私がフウマを心配しちゃ……ダメなの?」
目尻に光るものが見えたが……まさか少し泣いているのか……?
「リノ……」
俺は、とりあえずリノを落ち着かせるため、頭を撫でようとした。
瞬間、いきなりリノから正拳突きを腹に食らった。
リノは本気で殴ったらしく、油断していた俺は心理的なショックも大きく、わずかにふらついた。
「フウマなんか大嫌いっ!!」
リノの捨て台詞に硬直した俺は、彼女が駆け出すのを止めることができなかった。
リノは停止していた竜車に戻ると、御者の男に話しかけた。
「テアールさん! ゴアを走らせてください、港の方に!」
「え? ……いや、いいのかい……あれほど心配して……」
「さあ、早く!」
「は、はい!」
俺だけでなく、テアールとかいう男も完全にリノの気迫に飲まれていた。
俺とテアールは、ちょっとだけ共感を込めた視線を交わし合う。女性陣はリノが怒っている理由に気づいているようだが、俺だけでなく、テアールもわからないらしい。テアールは俺に目礼した後、港の方へと竜車を走らせた。
リノは、おそらくセーレアとオゥバァと共に騒ぎを鎮めようとしているのだろう。
◇◇◇あとがき◇◇◇
やっとフウマとリノが再会しました……すぐに別れちゃいましたが。
さて、先日言っていた「2巻のウリ」を投稿しました。
近況ボードの文字数制限に引っかかったので、投稿先は本文です。序章の上にある「登場人物等・書籍化関連」のところです。
結構長いので、お暇な時間にどうぞご覧ください。
「フウマぁ!」
嬉しそうに、心配そうに、リノが俺の名を呼んだ。
「……どうしてここに?」
驚いた俺は、危ない真似をしたリノに思わず否定的な声を投げかけた。こんな傷だらけのところを見られたくないという思いもあったからだろう。
俺のもとに駆けてくるリノの頬を、ゆらゆらと港の燃え盛る炎が照らす。
俺が尋ねた瞬間、走っていたリノがなぜかいきなり立ち止まった。
リノは何か言おうとした様子だったが、上手く言葉にならなかったようだ。
(何か失言だったか?)
考えてみてもわからない。
だが、知り合いの三人の女性たちの反応を見るに、何かまずかったらしい。
リノと同じ竜車の荷台に乗っていたセーレアは「あちゃ~」と顔をしかめて空を仰ぎ、これからの展開を見たくないと言うかのように、大きな帽子のつばで顔を隠してしまった。オゥバァは、ひょこっと積み荷から顔を覗かせて興味津々の様子だ。
俺の隣に立つリリィは、ちょっとだけ俺に非難するような目を向けた。
俺はとりあえず、立ち止まってしまったリノに駆け寄って指示を出した。
「今すぐここを離れるんだ、リノ! ここは危険だ、本当に危険なんだ!」
脳裏に苔の化け物が浮かぶ。今は「リノを絶対に守りきれる」と言いきる自信がない。
リノがなぜか俯いてしまった。
荷台で「あいつはアホよ、アホ」と陰口を叩くセーレア。聞こえてるぞ。アホとは俺のことだろう。いったい何がアホだというのか。
不思議な間ができた。
衛兵たちも、難民たちも、その他の者たちも、なぜか俺たち二人に注目している。
俺は明らかに目立つ動きをしていたし、リノも走る竜車から飛び降りて駆けつけるなんて真似をしたんだから当然かもしれない。
ただ、なんか居心地の悪い間だった。
「……それだけ?」
リノが顔を上げて、首をかしげた。
頷くのを躊躇われた。
(これは……殺気か? ……いや、リノが殺気立つ理由はないし……でも、なんか怒ってる……?)
リノは俺を睨むように見ていたが、俺が何も返事を返さないと、悲しそうに尋ねてきた。
「私がフウマを心配しちゃ……ダメなの?」
目尻に光るものが見えたが……まさか少し泣いているのか……?
「リノ……」
俺は、とりあえずリノを落ち着かせるため、頭を撫でようとした。
瞬間、いきなりリノから正拳突きを腹に食らった。
リノは本気で殴ったらしく、油断していた俺は心理的なショックも大きく、わずかにふらついた。
「フウマなんか大嫌いっ!!」
リノの捨て台詞に硬直した俺は、彼女が駆け出すのを止めることができなかった。
リノは停止していた竜車に戻ると、御者の男に話しかけた。
「テアールさん! ゴアを走らせてください、港の方に!」
「え? ……いや、いいのかい……あれほど心配して……」
「さあ、早く!」
「は、はい!」
俺だけでなく、テアールとかいう男も完全にリノの気迫に飲まれていた。
俺とテアールは、ちょっとだけ共感を込めた視線を交わし合う。女性陣はリノが怒っている理由に気づいているようだが、俺だけでなく、テアールもわからないらしい。テアールは俺に目礼した後、港の方へと竜車を走らせた。
リノは、おそらくセーレアとオゥバァと共に騒ぎを鎮めようとしているのだろう。
◇◇◇あとがき◇◇◇
やっとフウマとリノが再会しました……すぐに別れちゃいましたが。
さて、先日言っていた「2巻のウリ」を投稿しました。
近況ボードの文字数制限に引っかかったので、投稿先は本文です。序章の上にある「登場人物等・書籍化関連」のところです。
結構長いので、お暇な時間にどうぞご覧ください。
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