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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
リリィ 18
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リリィは店員が並べる料理を見ながら、嬉しそうに手を打ち合わせた。
「うわぁ、美味しそうですね!」
「確かにな」
話に集中していたので、適当にオススメを注文しただけだ。
だが、これはなかなかの当たりではないだろうか。
水産都市エレフィンのオススメというだけあって、魚介類が豊富。白身魚に赤い海老、緑の海藻っぽいものと見た目も鮮やかだ。
魚介類と麺を一緒に焼いたものらしい。
ソースのようなものはかかっておらず、塩味らしいが。
さて。味はどうかな?
――っ! 美味いな!
「おいし……!」
リリィが思わず口に手を当てて呟く。
まだ飲み込めていないのにしゃべったのは、リリィの行儀が悪いというより、本当に美味しかったためだろう。
俺もあまりの美味さに驚いたからよくわかる。
「すごく美味しいな……」
「ええ!」
「……これまで水産都市エレフィン産の魚を宗教都市ロウで食べたことがあったんだが、鮮度が違うとここまで違うのか……」
塩味は薄味。
それでもこの美味さ。
たぶん、素材の味がすごく良いのだ。
「なるほどなー。これなら、味の濃いソースなんかをかけるより、シンプルに塩だけでいいな」
「はい」
思わぬ昼食タイムになってしまった。
ほんとは食べながら相談するつもりだったんだけどな。
まあ、いい。
リリィもなんか楽しそうだし、それにしかつめらしい顔をして内緒話をするよりも人目を引かない。
こんな美味いメシを食わずに内緒の相談事をしていたら怪しいことこの上ないよな。
食事を終え、喉を潤す。
ここの料理人はよくわかってる。
さっぱりとした柑橘系の果実水だった。
じめじめしたここにぴったりの飲み物だな。
半分ほど食べるとさすがに落ち着いてきた。
「さて。リリィの集めた情報を聞かせてもらおうか」
「はい」
「といっても、私も情報を仕入れたばかりだし、裏も取ってないですから。実際にその場に行った方がいいと思いますよ? 『天涯』の場所は簡単にわかりましたし」
「そうか」
「ただ、偽勇者パーティーが『天涯』のある滝のそばでキャンプしているのだけは間違いなさそうです」
「偽勇者パーティーはあっさり見つかったか」
海老をフォークで突き刺し、考え込む。
「……それにしてもキャンプか……攻略もせず……」
「はい。……どういう意図があると思いますか?」
「普通に考えるなら……」
小さな海老を一口で食べる。
「最難関ダンジョン『天涯』攻略のため……準備を念入りに行っていると考えるのが妥当だろうな」
「はい。確かにその可能性はあります」
リリィは果実水を飲んで、唇を湿らせてから別の可能性を語った。
「しかし、偽勇者であることを踏まえると、案外単純に、偽勇者パーティーでは手も足も出ないのかもしれません……」
互いに無言で食事をし、考えをまとめる。
まだ偽勇者を直接見たわけではないが……。
冒険者ギルド組合長の話を考えれば、『天涯』は勇者の名を騙るような奴に攻略できるダンジョンとは思えない。
とすると……リリィの予想が当たりか?
最後の一口を食べる。
リリィも手早く食事をするのに慣れているのか、上品なのに俺と同じペースで平らげた。
「フウマさん」
「ん?」
「なんでも偽勇者たちは、『天涯』に入る人々から通行料を取っているそうですよ」
「は? 通行料?」
意味がわからなかった。
仮に本物の勇者だとしても、そんな権限はないはずだ。
「本当に偽勇者パーティーが通行料を取っているのか?」
「はい。かなり有名な話です。……といっても、さすがに王国の兵相手にはそんな真似はできないので、農民や元奴隷など相手にだけですが」
弱者にたかっているということだろう。
俺は、必ず偽勇者パーティーをとっちめてやろうと誓った。
「うわぁ、美味しそうですね!」
「確かにな」
話に集中していたので、適当にオススメを注文しただけだ。
だが、これはなかなかの当たりではないだろうか。
水産都市エレフィンのオススメというだけあって、魚介類が豊富。白身魚に赤い海老、緑の海藻っぽいものと見た目も鮮やかだ。
魚介類と麺を一緒に焼いたものらしい。
ソースのようなものはかかっておらず、塩味らしいが。
さて。味はどうかな?
――っ! 美味いな!
「おいし……!」
リリィが思わず口に手を当てて呟く。
まだ飲み込めていないのにしゃべったのは、リリィの行儀が悪いというより、本当に美味しかったためだろう。
俺もあまりの美味さに驚いたからよくわかる。
「すごく美味しいな……」
「ええ!」
「……これまで水産都市エレフィン産の魚を宗教都市ロウで食べたことがあったんだが、鮮度が違うとここまで違うのか……」
塩味は薄味。
それでもこの美味さ。
たぶん、素材の味がすごく良いのだ。
「なるほどなー。これなら、味の濃いソースなんかをかけるより、シンプルに塩だけでいいな」
「はい」
思わぬ昼食タイムになってしまった。
ほんとは食べながら相談するつもりだったんだけどな。
まあ、いい。
リリィもなんか楽しそうだし、それにしかつめらしい顔をして内緒話をするよりも人目を引かない。
こんな美味いメシを食わずに内緒の相談事をしていたら怪しいことこの上ないよな。
食事を終え、喉を潤す。
ここの料理人はよくわかってる。
さっぱりとした柑橘系の果実水だった。
じめじめしたここにぴったりの飲み物だな。
半分ほど食べるとさすがに落ち着いてきた。
「さて。リリィの集めた情報を聞かせてもらおうか」
「はい」
「といっても、私も情報を仕入れたばかりだし、裏も取ってないですから。実際にその場に行った方がいいと思いますよ? 『天涯』の場所は簡単にわかりましたし」
「そうか」
「ただ、偽勇者パーティーが『天涯』のある滝のそばでキャンプしているのだけは間違いなさそうです」
「偽勇者パーティーはあっさり見つかったか」
海老をフォークで突き刺し、考え込む。
「……それにしてもキャンプか……攻略もせず……」
「はい。……どういう意図があると思いますか?」
「普通に考えるなら……」
小さな海老を一口で食べる。
「最難関ダンジョン『天涯』攻略のため……準備を念入りに行っていると考えるのが妥当だろうな」
「はい。確かにその可能性はあります」
リリィは果実水を飲んで、唇を湿らせてから別の可能性を語った。
「しかし、偽勇者であることを踏まえると、案外単純に、偽勇者パーティーでは手も足も出ないのかもしれません……」
互いに無言で食事をし、考えをまとめる。
まだ偽勇者を直接見たわけではないが……。
冒険者ギルド組合長の話を考えれば、『天涯』は勇者の名を騙るような奴に攻略できるダンジョンとは思えない。
とすると……リリィの予想が当たりか?
最後の一口を食べる。
リリィも手早く食事をするのに慣れているのか、上品なのに俺と同じペースで平らげた。
「フウマさん」
「ん?」
「なんでも偽勇者たちは、『天涯』に入る人々から通行料を取っているそうですよ」
「は? 通行料?」
意味がわからなかった。
仮に本物の勇者だとしても、そんな権限はないはずだ。
「本当に偽勇者パーティーが通行料を取っているのか?」
「はい。かなり有名な話です。……といっても、さすがに王国の兵相手にはそんな真似はできないので、農民や元奴隷など相手にだけですが」
弱者にたかっているということだろう。
俺は、必ず偽勇者パーティーをとっちめてやろうと誓った。
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