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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
自称美少女冒険者たち 4
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「乗って!」
御者台で手綱を握ったテアールが叫んだ。
一度は敵を退けたものの、数が違いすぎる。
劣勢の美少女冒険者パーティーたちは、すぐさま竜車に飛び乗った。
リノは御者台にセーレアとオゥバァは荷台の後部だ。
テアールや美少女冒険者パーティー以上に、目の色を変えて慌てていたのは走竜ゴアだった。
ゴアは、テアールが鞭を入れなくても勝手に走り出した。
だが、緩やかとはいえ、坂道。
鬼のようにテアールが詰んだ積み荷が、ここに来て足を引っ張っていた。
「重すぎでしょ!?」
セーレアは荷台から御者台に向かって叫んだ。
「テアール! 食料捨てるわよ!!」
「駄目です!」
「はあ!? 死にたいの!?」
「死にたくありません!」
「だったら!」
「でもこの食料を待っている人たちがいるんです!」
「この強情者おおおお!!」
叫びながら散弾のように水のつぶてをばらまくセーレア。
揺れる馬車の上から放つ攻撃が、山賊たちに当たるはずがない。
そもそも青魔道士は、一般には知られていないが、回復職なのだ。攻撃には向いていない。
「〈水の小神〉の加護よ、私に――ムグッ! ――舌噛んだ! 痛いー!」
大混乱をよそに、オゥバァだけは積み荷のてっぺんに陣取って、ゆっくりと周囲を見回していた。
そして、ひらりと御者台のテアールとリノの間に座った。
「このままだとまずいわよ。追いすがってる連中にちょっとでも足止めされたら、両脇に陣取ってる奴らに捕まえられるかも。車輪に棒でも突っ込まれたら終わりね。――セーレアの言う通り、ちょっと積み荷を減らしたら? 減らして来ようか?」
「いやっ……ですっ!」
恐慌状態になったゴアの手綱を、歯を食いしばって操作していたテアールは、なんとか否定の言葉だけを口にする。
「ほんと、強情だねー」
「でも」
御者台に座るリノが、テアールを見上げて微笑んだ。
「強情な人って嫌いじゃありません」
「どこかフウマに似てるかも。……それでどうするの?」
「食料よりもっといいものがありますよ」
テアールは片手で腰の皮袋を外して、オゥバァに渡した。
「あなた……」
「商人失格ですかね」
テアールは、ゴアを操縦しながら視線だけオゥバァに向けた。
「……確かに財布を他人に渡すなんて商人失格かもね」
オゥバァは、揺れる積み荷の山を素早く上り、後部にいるセーレアのもとに戻った。
「お待たせー、セーレア!」
オゥバァは、テアールの財産をばらまいた。
放物線を描く貨幣がきらきらと日差しに輝く。
ちゃりちゃりちゃりーん、と道に落ちると良い音がした。
オゥバァは空になった皮袋を振った。
「銅貨ばっかだったね」
「でも、やたらキラキラ光ってない?」
セーレアは魔法で敵を牽制しつつ不思議がった。
山賊たちの一部が取り合いを始めている。きっと金貨と見間違えたに違いない。
御者台からテアールの声が飛んできた。
「貨幣を磨くのが趣味なんです。眠りに落ちるまで羊を数える代わりに、ひたすら貨幣を磨いて知らないうちに眠りに落ちるって最高じゃないですか?」
「嫌な趣味ね」
セーレアが呟き、うんうんと隣でオゥバァも頷いた。
「ここで残念なお知らせがあります」
オゥバァが山賊たちを見ながら言った。
「まだ足止めには足りないみたいね」
セーレアも冷静に状況を述べた。
「仕方ない」
オゥバァは素早くセーレアの腰の皮袋に手を伸ばして、口を開き、一瞬で中身をぶちまけた。
早技だった。
「それー!」
元気良く笑いながらばらまいている。
「ああ……っ! 私の馬車を値切った分がぁぁぁ……!」
セーレアが馬車の荷台から、地面に転がる貨幣に向かって手を伸ばした。
悲愴感に満ち溢れた表情だった。
なんとか坂道を登りきると、倒木や岩で作った即席の関所が見えてきた。
山賊たちがその前にわらわらと集まってきていた――。
御者台で手綱を握ったテアールが叫んだ。
一度は敵を退けたものの、数が違いすぎる。
劣勢の美少女冒険者パーティーたちは、すぐさま竜車に飛び乗った。
リノは御者台にセーレアとオゥバァは荷台の後部だ。
テアールや美少女冒険者パーティー以上に、目の色を変えて慌てていたのは走竜ゴアだった。
ゴアは、テアールが鞭を入れなくても勝手に走り出した。
だが、緩やかとはいえ、坂道。
鬼のようにテアールが詰んだ積み荷が、ここに来て足を引っ張っていた。
「重すぎでしょ!?」
セーレアは荷台から御者台に向かって叫んだ。
「テアール! 食料捨てるわよ!!」
「駄目です!」
「はあ!? 死にたいの!?」
「死にたくありません!」
「だったら!」
「でもこの食料を待っている人たちがいるんです!」
「この強情者おおおお!!」
叫びながら散弾のように水のつぶてをばらまくセーレア。
揺れる馬車の上から放つ攻撃が、山賊たちに当たるはずがない。
そもそも青魔道士は、一般には知られていないが、回復職なのだ。攻撃には向いていない。
「〈水の小神〉の加護よ、私に――ムグッ! ――舌噛んだ! 痛いー!」
大混乱をよそに、オゥバァだけは積み荷のてっぺんに陣取って、ゆっくりと周囲を見回していた。
そして、ひらりと御者台のテアールとリノの間に座った。
「このままだとまずいわよ。追いすがってる連中にちょっとでも足止めされたら、両脇に陣取ってる奴らに捕まえられるかも。車輪に棒でも突っ込まれたら終わりね。――セーレアの言う通り、ちょっと積み荷を減らしたら? 減らして来ようか?」
「いやっ……ですっ!」
恐慌状態になったゴアの手綱を、歯を食いしばって操作していたテアールは、なんとか否定の言葉だけを口にする。
「ほんと、強情だねー」
「でも」
御者台に座るリノが、テアールを見上げて微笑んだ。
「強情な人って嫌いじゃありません」
「どこかフウマに似てるかも。……それでどうするの?」
「食料よりもっといいものがありますよ」
テアールは片手で腰の皮袋を外して、オゥバァに渡した。
「あなた……」
「商人失格ですかね」
テアールは、ゴアを操縦しながら視線だけオゥバァに向けた。
「……確かに財布を他人に渡すなんて商人失格かもね」
オゥバァは、揺れる積み荷の山を素早く上り、後部にいるセーレアのもとに戻った。
「お待たせー、セーレア!」
オゥバァは、テアールの財産をばらまいた。
放物線を描く貨幣がきらきらと日差しに輝く。
ちゃりちゃりちゃりーん、と道に落ちると良い音がした。
オゥバァは空になった皮袋を振った。
「銅貨ばっかだったね」
「でも、やたらキラキラ光ってない?」
セーレアは魔法で敵を牽制しつつ不思議がった。
山賊たちの一部が取り合いを始めている。きっと金貨と見間違えたに違いない。
御者台からテアールの声が飛んできた。
「貨幣を磨くのが趣味なんです。眠りに落ちるまで羊を数える代わりに、ひたすら貨幣を磨いて知らないうちに眠りに落ちるって最高じゃないですか?」
「嫌な趣味ね」
セーレアが呟き、うんうんと隣でオゥバァも頷いた。
「ここで残念なお知らせがあります」
オゥバァが山賊たちを見ながら言った。
「まだ足止めには足りないみたいね」
セーレアも冷静に状況を述べた。
「仕方ない」
オゥバァは素早くセーレアの腰の皮袋に手を伸ばして、口を開き、一瞬で中身をぶちまけた。
早技だった。
「それー!」
元気良く笑いながらばらまいている。
「ああ……っ! 私の馬車を値切った分がぁぁぁ……!」
セーレアが馬車の荷台から、地面に転がる貨幣に向かって手を伸ばした。
悲愴感に満ち溢れた表情だった。
なんとか坂道を登りきると、倒木や岩で作った即席の関所が見えてきた。
山賊たちがその前にわらわらと集まってきていた――。
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