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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
自称美少女冒険者たち 2
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購入した馬車はもともと荷台が大きいものだったので、幌を取り外し、荷馬車風にするのにそれほど時間はかからなかった。
自らが使う日用品や食料は最小限。
代わりに、鬼のようにテアールが、田園都市ヨポーツクで買い叩いた食料を積み込みまくっていた。
「これは……やりすぎでしょう……」
セーレアがあごをがっくりと開けてつぶやく。
「セーレアにそのセリフを言わせるとは、――やるわね!」
妙な関心をしているオゥバァをよそに、リノは心配そうにテアールに尋ねた。
「これは欲張りすぎでは……」
荷物を積み込んでいる農夫たちに指示を出していたテアールは、リノの方を振り向いて大きく両腕を上げた。
「今、水産都市エレフィンでは、かつてないほどに食料品の価格が高騰しているんだ!」
セーレアがぼそっとオゥバァとリノに聞こえる程度の声で言った。
「金儲けのためってわけね」
オゥバァは「なるほど」と生真面目そうに頷いたが、リノの方は声も出ないほど唖然としていた。
実際、リノの身長よりも荷物を積み込んでいるのだ。二頭立ての馬車でも運ぶのは難しい量だろう。
「おい。ゴア! こっち来い! こら、バカ馬! 聞いてるのか!?」
身の丈2メートル以上ある巨大なトカゲが、地面に寝そべり、その辺の草を食べていた。
「バカ馬じゃなくて、バカ走竜とか、バカトカゲとかのがいいんじゃないかな」
オゥバァが見当違いなことを言っている中、テアールが走竜ゴアの轡を掴んで、無理やり立たせた。
「こいつ、命令は聞かないし、よくその辺の草を食べるし、休憩ばっかしたがるんだ」
リノは同情した様子で、ゴアに近づいた。
「仕方ありませんよ。こんな量の荷物を、きっと毎回運んでいるんでしょう? 休憩もしたがるようになりますよ」
リノのそんな同情心に引かれたのか、ゴアは爬虫類特有の怖い顔をしたまま、リノに顔を近づけた。
頬ずりするような仕草に見えた――。
竜車を引くのは走竜と呼ばれる魔獣だ。
「竜」という名がついているが、その実態はトカゲの魔獣。
見た目は翼のない竜のような姿をしているが、竜の吐息も使えないし、空も飛べないし、寿命も普通。
しかし、そのサイズはなかなか大きい。
荷馬車をつけられている走竜ゴアは、リノのお下げについた赤いリボンが気に入ったらしく、長い首を伸ばしてかじり出した。
「これはフウマにもらった物だからやめて!」
リノが頼み込んでいるが、草をもっさもっさと食む羊のような無の表情でゴアは赤いリボンをクチャクチャと噛んで、皺くちゃの涎まみれに変えていく。
「やめてって!」
リノが爪先立ちになり、なんとかゴアの首の根元辺りを平手で叩く。
ぺちん、と硬い鱗からいい音がした。
ぺちぺちと叩いているが、一向に気にしないゴア。
無の表情のまま。
涙目になってきたリノは、高速で平手を繰り出す。
べべべべべべ……!
と連続で叩いているが、ゴアは結局心ゆくまでリノのリボンを堪能したのだった。
そんな一行が竜車に乗って出発し、水産都市エレフィンへの近道である山間の道で、多勢の山賊に襲われたのはすぐのことだった。
自らが使う日用品や食料は最小限。
代わりに、鬼のようにテアールが、田園都市ヨポーツクで買い叩いた食料を積み込みまくっていた。
「これは……やりすぎでしょう……」
セーレアがあごをがっくりと開けてつぶやく。
「セーレアにそのセリフを言わせるとは、――やるわね!」
妙な関心をしているオゥバァをよそに、リノは心配そうにテアールに尋ねた。
「これは欲張りすぎでは……」
荷物を積み込んでいる農夫たちに指示を出していたテアールは、リノの方を振り向いて大きく両腕を上げた。
「今、水産都市エレフィンでは、かつてないほどに食料品の価格が高騰しているんだ!」
セーレアがぼそっとオゥバァとリノに聞こえる程度の声で言った。
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オゥバァは「なるほど」と生真面目そうに頷いたが、リノの方は声も出ないほど唖然としていた。
実際、リノの身長よりも荷物を積み込んでいるのだ。二頭立ての馬車でも運ぶのは難しい量だろう。
「おい。ゴア! こっち来い! こら、バカ馬! 聞いてるのか!?」
身の丈2メートル以上ある巨大なトカゲが、地面に寝そべり、その辺の草を食べていた。
「バカ馬じゃなくて、バカ走竜とか、バカトカゲとかのがいいんじゃないかな」
オゥバァが見当違いなことを言っている中、テアールが走竜ゴアの轡を掴んで、無理やり立たせた。
「こいつ、命令は聞かないし、よくその辺の草を食べるし、休憩ばっかしたがるんだ」
リノは同情した様子で、ゴアに近づいた。
「仕方ありませんよ。こんな量の荷物を、きっと毎回運んでいるんでしょう? 休憩もしたがるようになりますよ」
リノのそんな同情心に引かれたのか、ゴアは爬虫類特有の怖い顔をしたまま、リノに顔を近づけた。
頬ずりするような仕草に見えた――。
竜車を引くのは走竜と呼ばれる魔獣だ。
「竜」という名がついているが、その実態はトカゲの魔獣。
見た目は翼のない竜のような姿をしているが、竜の吐息も使えないし、空も飛べないし、寿命も普通。
しかし、そのサイズはなかなか大きい。
荷馬車をつけられている走竜ゴアは、リノのお下げについた赤いリボンが気に入ったらしく、長い首を伸ばしてかじり出した。
「これはフウマにもらった物だからやめて!」
リノが頼み込んでいるが、草をもっさもっさと食む羊のような無の表情でゴアは赤いリボンをクチャクチャと噛んで、皺くちゃの涎まみれに変えていく。
「やめてって!」
リノが爪先立ちになり、なんとかゴアの首の根元辺りを平手で叩く。
ぺちん、と硬い鱗からいい音がした。
ぺちぺちと叩いているが、一向に気にしないゴア。
無の表情のまま。
涙目になってきたリノは、高速で平手を繰り出す。
べべべべべべ……!
と連続で叩いているが、ゴアは結局心ゆくまでリノのリボンを堪能したのだった。
そんな一行が竜車に乗って出発し、水産都市エレフィンへの近道である山間の道で、多勢の山賊に襲われたのはすぐのことだった。
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