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逃げない

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「はぁー」
「お疲れ様です!さぁ!ゆっくりなさってください!」

 そう言って、テントの入口の幕を開ける騎士達。
 私の戦いは、何故か騎士達全員に知れ渡っており、騎士達からはキラキラ輝いた目で見られている。中には、嫉妬の目をしていたりする奴もいるが、それは少数派だ。
 私は今日‥‥というか、最近の疲れをとるべく、用意されたベッドの上にうつぶせで倒れ込んだ。

「はぁー‥‥『防音』‥‥‥これでよし」

 私はテントに『防音』の魔法を張り、これで安心と、また体から力を抜いた。
 え?なんで『防音』の魔法をかけたかって?それは極簡単な話だよ。
 テントの外の気配の中に、テントの中の音を聞こうとしている気配があったから、それを妨げるためにかけたんだよ。
 あ、外の奴がそわそわし始めてる。もう少し気配とか消せないのかな~?これじゃあ、戦場で隠れててももすぐに気づかれちゃうよ。

「ディ、ディーオ!話したいことがあって来ました!」

 テントの幕を開けたのは、だった。
 後ろには、他の攻略対象達とアンジェ主人公もいた。
 ‥‥‥嫌だ‥だけど、本心を隠して笑顔を作り、ベッドから立ちあがってアインハイトと接する。

「はい、わかりました。場所は‥‥どこか人払いをできて大勢集まれる場所がいいですね」

 私がアインハイトの後ろを見ながらそう提案したら、アインハイト「うん。じゃあ、探してくるから待っててね?」と言って、テントの外に出ていった。
 これは大人しく待っておいた方がいいのだろうか。

「はぁー‥‥‥嫌だな~」
『嫌なら逃げればいいではないか。逃げ道なら作ってやるぞ?』

 私がベッドに倒れて文句を言ったら、スィーニュが急に姿をあらわして、とても魅力的な提案をしてきた。
 私はそれを「ごめん」と言って断った。
 今、ここであいつらから逃げては、私は一生このまま逃げ続けなければならない。そんな気がするから、私は‥‥。

「正面から向き合っておさらばしたいの」

 このゲームの世界から。

ーーーーーーーーーーーー

「さぁ。ここだよ?」
「お嬢様に近づかないで頂けますか?アインハイト殿下」

 私に手を差し伸べたアインハイトを遮るように、ルルンは壁をつくった。
 あれから、アインハイトが迎えに来たので、スィーニュには獣姿で私の側にいてもらうことにし、ルルンにバレないように行動していた。
 でも、ルルンはそれに気づいたらしく、いつの間にか私の側にいて、「何か?」と言ってきた。その時のルルンの威圧といったら‥‥震え上がりますね。はい。

「おい!遅いぞ!」

 リッターの声が聞こえたので振り向くと、そこは、川が横で流れて月明かりが優しく照らしている、開けた心地よい場所だった。蛍の光が、川の上を飛んでいるのが、とても幻想的だ。

「ディーオ様。どうぞこちらへ」

 私がおもわず見とれていると、私分のお茶などを運んできてくてたヤレガが声をかけてきた。
 私は警戒せずにヤレガの元へ行き、そのまま椅子に座った。
 多分、ヤレガの位置にいるのが、攻略対象達だったりしたら、私は警戒心バリバリで椅子にも座らなかったと思う。
 あ、そういえば、ヤレガの紹介って、本格的にはしてなかったよね?今更感半端ないけど紹介しておこうか。

【ヤレガ・ケンブファー】男 隠し攻略対象
 この世界では珍しい黒い髪。それと同様のどこまでもそこが見えない黒い瞳の持ち主。肌は健康的な色つき。
 年齢は36歳。身長は199。
 プロテッツィオーネ王国の騎士団長。
 元々平民で、昔は結構な遊び人でもあった。
 身体強化や強化系の魔法は、1番とまではいかないが、結構な使い手。
 髪の毛はオールバックで、耳には赤いピアスを1つ左耳につけている。
 体つきは、筋肉はあるがそこまでマッチョではなく、結構丁度いい筋肉のつき方をしている。
 攻略方法は、普通の攻略対象を全員攻略した後、再びリッターかアインハイトを攻略している最中に出てくる。
 そして、昔のヤレガを受け入れて一言。『あなたを愛しています。昔が何?そんなの知らないわ。私は今のあなたを見ているの‥‥‥一緒に何もかも捨てていい。一緒に行きましょ?』だった気がする。

 ‥‥‥何もかも捨てちゃダメだろ。
 これは、ゲームをプレーしている最中も思ったことだ。
 騎士団長という立場が重荷なのは、わかっているが、仮にも国の騎士団長が実力のある(認めたくないが)リッターになってみろ?‥‥‥騎士団終わるぞ。

「ありがとうございます。ヤレガ様」
「‥‥いえ」
「!?」×攻略対象達

 私はヤレガに、怖い顔にならないように注意しながら、お礼を言った。
 すると、ヤレガは一瞬こちらを見てから、腰を折ってお辞儀をしてきた。
 やっぱり、アインハイトがいるからそういう所はちゃんとしなければいけないのか。面倒だな。
 さてと、気を取り直して‥‥。

「さぁ、話し合いを始めましょうか」

 私は後ろにルルンとスィーニュを立たせて、それは妖美に微笑んだ。
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