上 下
1 / 53

プロローグ

しおりを挟む
 皆様がた。召喚や転生など、ファンタジー小説にあるようなこと。信じますか?
 いや、信じなくても、「あったら面白いのにな~」ぐらい思ったことないですか?私はあります。
 だって人生辛いことが多すぎます。

 私は幼い頃親に捨てられ孤児院育ち。高校では彼氏が出来たけど、結局友達に取られてしまう。
 大人になってからも、何度か付き合ったけど、結婚までは発達せず、三十路の今でも独身。
 合コンも何回かしたし、婚活パーティーにも行った。見合いもした。でも、結局ダメだった。
 もうここまで来ると、開き直るよ。ここまで行っても頑張る人は、いると思うけど、私は諦める。
 私は仕事に力を入れて、現実で恋愛できない分、乙女ゲームをプレーしまくった。

 え?寂しい女だなって?いいんだよ。それで。
 私は捨てられ続ける運命なんだと思う。
 親に捨てられ男に捨てられ‥‥
 人生めんどくさくなっちゃったんだもん。

「はぁ。やっと全ルートコンプリート~」

 私が今プレーしているのは、最近ハマったファンタジー乙女ゲーム。『LOVEtheHERO~アイトの光~』。
 なかなか適当な名前だと思う。ファンタジーだから、もちろん『剣と魔法の世界』だ。
 アイトは、『誓い』という意味らしい。だから、少し気になった。
 パッケージの絵もなかなか綺麗だったし、それに主人公がなかなか可愛かった。
 普通の乙女ゲーム主人公は、顔がスチルでなかなか見えない。
 それは、ゲームをプレーしている人が、主人公になりきった視点にしたいからだと思う。

 でも、このゲームは違った。
 スチルでは主人公の姿が出てきて、まるでアニメを見ている感覚に近くなっている。
 アニメ好きの私にとってはとても嬉しい作りだった。
 このゲームは、好き嫌いが極端に別かれた。
 ゲーム内容は、主人公は平民なのに希少な魔法。”他者強化”の持ち主で、世界一の学校に入学することになる。
 そこで出会う5人の男の誰かと恋に落ちるという内容だ。

 結構どこにでもありそうなゲームだ。だから、ゲーム内容で、好き嫌いはあまり別れなかった。
 でも、スチルで、別れたのだ。
 私はそのゲームを今しがた、完全コンプリートした。
 バットエンドもすべてだ。

「‥‥明日ゲーム屋によって、新しいゲーム探すか」

 私は同時進行できるほど器用じゃない。
 だから、一つづつ買って、それをクリアしていく。
 時計を見ると、もう夜の1時を回っていた。
 明日も仕事がある。私は眠ることにした。

「あ、明日のご飯の材料買ってないじゃん‥‥コンビニでいいか」

 私はシャワーを浴びて寝ようとしたところで思い出した。
 今から行くのはめんどくさいが、明日‥‥というか今日の朝早起きして買いに行くのはもっと面倒だ。

「行くか‥‥さっむ」

 私は寝間着の上からコートを着て、外に出た。
 まだ1月だから、夜は冷えるし今日は風も強かった。

 近くのコンビニにつくと同時に、風がやんだ。
 いつもなら不良の1人2人はいるはずなのだが、今日はいなかった。

「‥‥平和な日もあるんだな~」

 そんなことを言いやながらコンビニで、弁当を買うことにした。

「‥‥あの。いつもこのコンビニ利用されてますよね?家が近くなんですか?」

 声をかけてきたのは、店員さんだった。
 多分大学生ぐらいの歳だと思う。髪がド金髪だ。

「‥‥‥まぁー」

 適当に答えて、弁当のお金を渡す。

「‥‥あの!これ!俺の電話番号です!よかったら‥‥‥連絡ください!」
「‥‥‥」

 私は絶句した。
 髪がド金髪だから、不良だと思っていたが、顔を赤くしてそう言ってくる姿は、とてもウブだった。
 だから、魔が差したんだと思う。

「‥‥大人をあんまりからかわない方がいいよ?ま、気が向いたら電話するよ。ありがとう」

 私はそう言って電話番号の書いた紙を受け取り、コンビニから出ていった。

 人生初の告白だった。
 いつも告白は私からだった。私は自分から告白して付き合ったことしかない。
 だから、浮かれていた。
 不良ぽくっても、告白紛いのことをされて、浮かれていた。

「‥‥明日は赤飯かな?」

 スキップしながら帰る三十路のおばさんのえは、なかなかキツい。
 そう理解していたが、スキップで帰った。

  キッキーーーー!!!

「え?」

 私に車が突っ込んできた。
 ライトが眩しくて、目を隠すことしかできず、その場から動けなかった。
 でも、目を開けたら、車は私からそれて電柱に突っ込んでいた。

「た、助かった?」

 私はその場に腰を抜かしてしまった。
 その瞬間だった。

「‥‥キャ!」

 また私の目に眩しい光が入ってきた。
 今度は前とかからじゃなくて、下‥‥地面からだった。
 光が強すぎて、私は目を開けられなくて周りが見えなかった。
 だけど、かすかに聞こえた気がした。
 コンビニで、私に電話番号を渡してきた店員の声が‥‥聞こえた気がした。

 あ、そう言えば自己紹介してなかったね?
 私の名前は『神星  神奈かみぼし  かんな』。
 神が2回もつく名前なのに、神に見放されているらしい女です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!! 男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。 そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢! そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。 どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの? ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます! しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、 物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど…… 2022.4.7 予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン) 《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます! とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。 ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。 よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

処理中です...