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本編

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「ということで、だ」

「はい!」

「お前には今から、こいつらとの絆作りをしてもらう」

 先程の場所から移動して、ただ今いるのは入口に『飛行訓練所』と書かれている場所だ。
 周りには私達の他に、色々な騎士達が龍やドラゴンに乗って空を飛んでいる。サレスに聞いた話だと、無闇に自身の龍やドラゴン相棒を飛ばせてはいけないらしい。なので、飛ぶ訓練をしたい時は、この訓練場を使うということらしい。
 そして、私はその訓練場の隅の方でサレスの飛行講座を聞きながら乗る準備を進めていた。

「絆作りとは、相棒とのコミニュケーションをはかり、飛行した時の安全性を高めるために行われる。もし、この絆作りが足りたかった場合、相棒は好き勝手に飛び回り、落ちてしまう事が多い‥‥あれがいい例だ」

 サレスは呆れ顔でただ今空中を飛んでいる一頭の龍を指さした。その背には人が乗っているが、何か慌てた様子で龍の手網を操作している。たが、龍は気持ちが良さそうに飛んでいる様子で、一向に慌てた様子の人のいうことを聞こうとしていない。
 なるほど。あれがダメな例か。
 私は、ああならないようにしなくてはと思いつつじっとその龍達を見た。龍はどんどんコードを上げ、ついには点でしか見えなくなった。私は近くに設置してあった望遠鏡を使って龍を目で追った。

「あ!危ない!」

「!?レムン!」

 見ていると、私は龍に乗っている人の足があぶみから取れそうになっているのに気が付いた。そこからはもう早かった。
 鐙から足が外れた男性は、そのまま頭から一直線に落ちてきた。
 私は先に気づいていたのでこのまま走れば間に合う距離だったが、受け止められるかと気かけると自身はなかった。だが、動き出した体を止めることは出来ず、ただただ早く助けなければという気持ちだけが急いだ。
 落ちてくる少し前に私は男性の下に到着し、そこで色々と考え始めた。
 このまま受け止める?いやダメだ!それじゃ私が受け止めきれずに男性が頭から地面に突っ込んでしまってジッエンドじゃん!かと言って、私が下敷きになろうとしても、多分私の骨に男性の頭が激突して、私諸共しばらく動けないか、最悪骨折れて再起不能だよね。あぁ!ダメ!ダメだよ!せっかく異世界に来たのに一ヶ月も経たないうちに、私の異世界生活終了?そんなの絶対に嫌だ!何か‥何かないの!?
 私が考えている間に、男性はどんどん近づいてくる。そんな私の耳にいきなり声が聞こえてきた。

『魔法があるじゃない。何をそんなに迷ってるの?』

 ‥‥魔法。そうだ。ここは異世界で魔法があるんだ。それを使えば‥‥。でも、もし失敗したら?もし‥‥‥失敗して、魔法が暴走したら?
 不安で体に悪寒が走った。いや、正確には血の気が引いたのだと思う。この世界に来てから魔法を暴走させたことがないとはいえ、私はこの世界に来たばかりだ。魔法が暴走しないという確信はない。どうする。

「レムン!」

「っ!サレス‥団長?」

 私の横にサレスが並んだ。上を見て難しい顔をすると、何やら口を動かしてから、こちらを見た。

「レムン!今俺が減速魔法をかけた!だが、まだスピードが速い!お前も協力しろ!」

 サレスが言った通り、男性を見ると先程よりスピードは遅いがまだ地面に突っ込んだら致命傷のスピードだった。
 考えろ。考えるんだ。男性がいた位置は絶対に富士山よりも高かった。そこから落ちてきたのだから、絶対にGとスピードは凄い。想像以上にすごいはず!そこら辺は物理とか勉強してないけど分かるぞ!なら、ただの減速魔法ではダメだと思う。
 私はもう一度男性を見る。男性は余裕がある状態で見ると、まだ高い位置にいるため、考える時間はまだあった。
 ‥‥‥これしかないか。
 私は考えた結果、一つの答えを出した。
 魔法では足りない。下からでは危険。ならば、横から力を加えればいい。

彗鈀せいは儚羅もうら!おいで!」

『はい!』
『わかった!』

 頭に声が響いてきた。だが、今はそれを気にしている暇はなかった。私は銀に輝くドラゴン。の方へと走りながら、指示を出す。

「儚羅は私を乗せて飛んで!彗鈀はそのまま飛び立ってあの人の横について!」

『了解!』

 青い龍。は飛び立って真っ直ぐに男性の元へと向かう。私は儚羅に鞍もない状態で飛び乗り、儚羅に飛び立ってもらう。

「っ!‥‥すごい‥風圧」

 我慢するのがやっとで、目を辛うじて開けられる程の風圧が私を襲う。それでも、根性で周りを確認する。
 周りは色々な龍やドラゴンがいて、数人の騎士が必死に何かを呟いている。多分、呟いたと同時に落ちていく男性の近くに魔法陣が出ている事をからして、減速魔法をかけているのだろう。
 私は先程見たより確実にスピードが遅くなった男性の横に並び、先に横に並んでいた彗鈀と乗っている儚羅に指示を出した。

「私が減速魔法をかけたら、この人の体を持って!そして、この人に負荷がないように減速していって!」

『了解です。ですが、主はどうされるのですか?』

『こいつの事を優先したら、お前の事に手が回らなくなる可能性がある!そんな事俺達がするとでも思っているのか!』

「‥‥できる。絶対に出来るよ。だって、あなた達の事を私が信じているから」

『『っ!』』

 私は減速魔法をかける準備を始めた。
 何となくではあるが、頭の中に何を言えばいいかが浮かんでくる。こう言えば、減速魔法を発動できると確信できた。いや、男性が減速できると確信できた。

「‥‥《我、汝の力を借りたくば我の真の名をして願う。我の真の名は【浅田 恋】。人の世の。精霊の世の。神の世の。全ての力を滑る汝。我の願いを叶えるならば、その壮大な力をお貸しください》‥‥‥《大力魔法『風』の陣》

《浮遊魔法》!!」

 唱えたと同時に、私の中から何かがごっそり抜ける感覚がした。だが、ごっそりと言っても、体の端っこが少しばかり無くなったような感覚だけで、すぐに何事も無かったように元に戻っていった。

「っ!儚羅!」

 すぐに指示通りに動いた彗鈀と儚羅は、男性を抱えだんだんと減速していく。サレスが視野で確認でき、そろそろ大丈夫だと思った時だった、私はついにGに耐えられなくなり、儚羅から手を離してしまった。すぐに儚羅も私も手を伸ばすが、その手は宙を切っただけで、私は背中から落ちていく。

「くそっ」

 私は悪態をついた。もう演唱をしている時間はない。私は次にくる衝撃を覚悟して目を閉じた。
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