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本編

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 あの後は、ただ単に騎士団生活場の中を案内してもらうだけだった。その最中、現役の騎士達が様々なことをしていた。
 例えば、勉強だったり運動だったり、仲間との雑談だったりだ。その風景は現世の学校の昼休みで見た光景とどことなく似ており、和む感じがあった。でも、皆サレスを見た途端にピシッと敬礼をして、雰囲気もラフな感じから一気に緊張感のあるものへと変わっていた。
 私もあんな風になれるかな心配だったが、まぁ、どうにかなるだろう。と、軽く考えてその日は割り振られた部屋で寝た。
 あ、ちなみに部屋は四人部屋でレクターと一緒だったが、数人到着が遅れている人がいるということで、残りの二人はいなかった。

 そして次の人朝。

「初日だからといってできないは通じない!貴様らには今から騎士の通常通りの特訓メニューをこなしてもらう!」

 眠い中、朝の鐘の音で起こされた。
 王都では、鐘が朝の5時から夕方の7時の間に、一時間ごとに一回鐘がなる。
 そして、騎士達は朝一の五時の鐘で起床し、その後朝ごはん前に大広場に集まって朝練をする。

「ふぁ~」

「おい、レン!怒られるぞ」

 つい我慢していたあくびが出てしまったところを、レクターに小声で注意された。
 ただいま、前で新人指導役の人がこれからやるメニューの説明をおこなっている。どうやらメニューは日によって違うらしく、その説明もしている。
 今日のメニューは、腹筋・背筋・腕立て全部十回を三セット。その次は百メートル走を三セット。最後にもう一度腹筋・背筋・腕立てを全部十回やって終わり。
 うっ。これは私も少し心配になってきたぞ?この世界の基準より格段に運動能力が高い私ですら心配なのだから、周りの奴らはもっとだと思う。だって、さっきからずっと、周りから「げっ」という声だったり、「無理だ」など聞こえてくる。

「レ、レン」

 レクターも心配そうにこちらを見てくる。
 「‥‥‥だ、大丈夫だって!こんなの気持ちの持ちようでどうにかなる!」

 私がそう言ったら、レクターはジト目でこちらを見てきた。
 そ、そんな目をしないでくれ。

「なお、本日は特別に新人一人に先輩騎士を一人付ける!それに付け加え、同室の四人の班でメニューをこなすこと!もし班の誰かが脱落すれば、連帯責任でその班は午後から特別メニュー追加だ!」

 ‥‥‥‥マジかよ。

「レン‥‥ごめん。先に謝っておく」

「そ、そんなに気を落とすなよ!な!?だ、大丈夫だ!俺らの班は二人まだここに着いてないってことでいないだろ?だから足でまといがいないってことで!‥‥あぁ!まどろっこしい!レクター!」

「はい!」

 私自身、何を言いたいかもうわからなくなってしまっていたので、レクターを睨みながら呼んだ。すると、レクターは背筋を伸ばし、いい返事を返してくれた。

「お前は試験前に俺と訓練したよな!?」

「はい!しました!」

「その訓練のおかげかは分からないが、レクターは出会った頃より確実に強くなってる!」

「っ、はい!」

「俺がそれを保証してやる!だから自信持て!」

「‥‥ああ。わかった!俺頑張る!」

「やぁ。君達がレクター君とレムン君かな?」

 レクターがやっと回復したところに、丁度私達の担当騎士達が来た。

「はぁー‥‥なんで俺が担当なんだ。俺は新人騎士の担当じゃないだろ」

「まぁまぁ。しょうがないでしょ?アイト様に頼まれちゃったんだからさ」

 いきなり私たちの前で言い争いを始めた二人は、まるで私たちのことなんて眼中にない感じだった。
 一人は金髪碧眼の美形さん。姿は白が基調とした服で、私がこれまで見てきた騎士とは少し異なった服を着ていた。
 もう一人は青髪碧眼のこれまた美形さん。だが、こちらは先程と違って黒を基調とした服を着ていた。
 レクターと目を見合わせて肩をすぼめて、また二人を見る。

だ!アイト様直々に頼まれたからと言って、俺達が違う部隊の団に派遣されるのがおかしいと言っているんだ!」

「そんなに怒らないでよ。それにだって頼まれた時嬉しそうだったじゃないか」

「っ!その名で呼ぶな!」

 ふむ。青髪のあの人はという名前なのか。なんか聞いたことがあるぞ?確か意味は‥‥

「へぇー!蝶なんて名前珍しいですね。なにか理由があるんですか?」

「っ」

 私の言葉に、こちらをギリギリと音が出そうな感じで振り向くパピヨンさん。その顔にはハッキリと『何故その意味を』という、困惑の色があった。
 ふっ。こう見えて元の世界ではオタクの世界に片足を突っ込んでたんだ。これくらいは余裕(多分)さ!

「へぇー。君、よく意味を知ってたね。ここら辺では聞かない名前だから異国の方とは思ってたけど、どこの言葉なの?」

「え、それは‥‥ドコダッケ。ハハハ。ドワスレシマシタ」

 私がどこの国の言葉か伝えようとすると、パピヨンさんがこちらを睨んでいたのが目に入り、これはまずいと思った私は口を閉じた。

「でも、本当によく知ってたなレン。異国の言葉なんて、お貴族か冒険者関連の人とかしか知らないと思ってたぜ」

 私の横でレクターがそういうもんだから、私は自分で失敗を犯したのが理解できた。
 ‥‥‥ありがとうよ。レクター。

「ま、まぁ、いいじゃないですか。そんなこと」

「‥‥‥」

 ゔゔ。パピヨンさんがこちらをずっと睨んだまま動かない。怖すぎるよ~。
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