writerS

柊彩 藍

文字の大きさ
上 下
53 / 61

影で動く者

しおりを挟む
 「やはりあそこには何かあったのか」
 路地裏で一人呟くのは修だった。
 「ホームズの手を借りると面倒だからな時間はかかるが仕方ない。」
 
 「ボス報告書まとめておきました。」
 羽鳥が、整理した書類を相川の元に届けに来た。
 「何か変わったことはあったか?」
 「いいえ何も。組織そのものが解体されたのではないかと思う程に音沙汰がありません。先日の派手な攻撃からしてあれが最終目的だったとかはあり得ませんかね。」
 「それはないな、あいつは絶対にまだ何かを隠している。些細な情報も見逃さないでくれ。」
 「そうじゃな、あやつがあれで終わるとはワシも思えん。お主と同意見じゃ」
 二人の間に突如少女が現れた。二人は、その少女が放つあまりにも膨大な魔力に少女に刃を向けた。
 「そう、怯えるな。少なくともワシはお主らと敵対するつもりはない。ただワシの邪魔をするなら塵にしてやらんこともないが…」
 少女の言葉に二人は背筋が凍るような思いをした。
 「まあ、どうせお主らには手も足も出ぬ案件であろう。それとは別に今日はある用事があって来たのじゃ。玉木紗希という女はいるか?」
 「うちの仲間に何をしに来た。」
 「そんなに睨まんどくれ。さすがのワシも怖いわい。ただ、お主らが彼女をなめとるようじゃから彼女を元に戻しに来たのじゃ。ホントに仲間思いなのは良いが、仲間なら信じてやることも必要だというのにどこの過保護じゃ。」
 そういって少女は、紗希の元へと部屋を出ていった。そして、その瞬間に羽鳥はその少女が何をするかが分かり必死に止めさせようと説得した。
 「お願いです。あなたが何者かは分かりません、気にさわったのなら私をどのようにしてもいい。けど、それだけは…」
 「じゃから過保護じゃといっとるじゃろうが。そんなに柔な女ではない。お主らは人の事を思うという本質を理解しとらん。結局お主らのは自分の為ではないか。傷つけたくないのではなく、傷ついているのを見たくないだけなのだろう?そんなやつが行動で誰かを救おうとする資格などない。しかしまあ、勘違いはしないでくれよ。ワシにだってお主らの考えが理解できんわけではない。ただ、今回に限ってはそれはただの足かせでしかないということじゃ。」
   と言って少女は手にした杖で紗希の頭を軽く叩いた。すると紗希は気を失い机に伏せてしまった。
 「しばらく安静にすれば数時間で起きてくるじゃろ」
 その言葉を残して少女は姿を消した。
 
 「さて、とりあえずすべきことはこれで全部じゃろ。あとは気になることはあるが最悪には至らんだろ。」
 
 
 「やっと監視が外れたか。興味をもって近づき過ぎるのも良くないな。探偵ごっこは終わりだ。」
 
 
 煌輔は、一条と優衣で夜の街を歩いていた。それは、殺される前に蒼太を見かけた最後の場所であった。ファミレスの近くへ来たところで2手に別れて探索しようとなった。一条は近くの山に、優衣と煌輔はファミレスの付近をそれぞれ手がかりが何かを探していた。もしかしたらそこに蒼太からのメッセージがあるのではないかと信じたかったのだ。さらにそこが蒼太が派手なアクションを起こした場所でもあった為その可能性は僅かながらにも存在したのだ。
 「ちょっとあの日何か変なこと無かったか店員に聞いてくる。」
 と優衣はファミレスの中に入っていった。
 「君は?」
 外で待っている煌輔に声をかけたのは修だった。
 「あなたは蒼太のいたwriterSの…」
 「そうそう。一応僕達も君たちと同じ目的って所かな。専門的な情報とかないだろうからこれをあげるよ。」
 「ありがとうございます!でも俺たちからは何にも…」
 「いやいや、気にしなくて良いって。こういうのは気持ちが強いやつにしか解決出来ない。writerSの皆も蒼太の生存を信じてはいるだろうけど、やっぱりあんな光景を見せられたらそっちの方が気になっちゃうから」
 修と別れファミレスの中を覗くとまだ何か話しているようだったのでしばらく外で待つことを決めた時、煌輔の背後に凄まじい魔力が現れるのを感じた。
 「やあ、どうもお久しぶり。元気かな?いや、まあどっちでもいいんだけどね。君にはここでリタイアしてもらうから。」
 「お前は」
 「そんなに睨まんでくれよ。それと私の名前は加古直紀だ。それと蒼太のことで私には非はないということだけ理解してほしい。」
 煌輔は、刃を向けるか悩んだ。勝てる相手では無いのは承知の上だったからだ。では、近くにいる一条を呼ぶか?しかしそれでも足りないだろう。最終的に逃走を選んだ。優衣からも遠ざけることが出来るし、生存の確率が一番高いからだ。
 
 「煌輔~。一応聞いてきたけど目撃情報だけでその他はなかったよ。ん?煌輔?どこ?」
 優衣はその付近をふらふらと探した。煌輔の事だから何かに気づいて飛んで行ってしまったのだろうと思ったのだ。
 「何この匂い。血?」
 優衣はそれを見た瞬間泣き叫んだ。優衣が見た血の泉には赤く染まった書類と煌輔の死体があった。叫び声を聞いて来た一条もただそれから顔を背けるだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ
ファンタジー
9/11 コミカライズ再スタート! 神様は私を殉教者と認め〝聖人〟にならないかと誘ってきた。 だけど、私はどうしても生きたかった。小幡初子(おばた・はつこ)22歳。 渋々OKした神様の嫌がらせか、なかなかヒドイ目に遭いながらも転生。 でも、そこにいた〝ワタシ〟は6歳児。しかも孤児。そして、そこは魔法のある不思議な世界。 ここで、どうやって生活するの!? とりあえず村の人は優しいし、祖父の雑貨店が遺されたので何とか居場所は確保できたし、 どうやら、私をリクルートした神様から2つの不思議な力と魔法力も貰ったようだ。 これがあれば生き抜けるかもしれない。 ならば〝やりたい放題でワガママに生きる〟を目標に、新生活始めます!! ーーーーーー ちょっとアブナイ従者や人使いの荒い後見人など、多くの出会いを重ねながら、つい人の世話を焼いてしまう〝オバちゃん度〟高めの美少女の物語。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

アルケミア・オンライン

メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。 『錬金術を携えて強敵に挑め!』 ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。 宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────? これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~

みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。 生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。 夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。 なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。 きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。 お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。 やっと、私は『私』をやり直せる。 死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。

処理中です...