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第10章 初めての討伐 ラルトside
疑う事実と真実 1
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宴会の翌日、ラルトが目覚めたのは宿屋の前での騒ぎの音に驚いた瞬間だった。
同じ部屋に居たはずの仲間たちの姿はそこには無く自分だけがベッドに寝かされた状態だった。しかもラルトには自分が"いつどうやって"この部屋のベッドに寝たのかさっぱりだった。その違和感を感じつつもラルトは音のする方へと歩いて行く。
「くっ…なっ…」
そしてラルトは騒ぎの中心の光景に絶句した。
木箱で作られた台の上、藁が敷かれた上。それはあった。
先日戦いの最中、ラルトは言葉を交わした存在が居た。交わした言葉を真っ直ぐに聞き仲間を連れ村を出た群れの長、グラピー。
その首が血液が流れきり綺麗にされている首が…ぞんざいに造られた木箱の台座に置かれていた。
信じられないと、目を疑うとはこの事だろう。それ程までにラルトは動揺した。
(昨日初めて話して、群れを引いてくれて…戦いも終わったはず…まだ誰かが報復でもしに行ったのか?!なら…一体誰が??)
ラルトの頭の中は大混乱だった。昨日刃を交え互いに戦いの終焉を望み、勇者としてのラルトの意見を半信半疑な様子であったが、聞き入れてくれたグラピー。たった少しの間だけ戦っただけだが、彼の強さを知っているラルトは疑問に思った。
(魔獣グラピーを倒すのなんて一般の村人達が出来るわけがない。)
その事実は、考えるまでもなく歴然だ。なにせラルト達、勇者一行があらゆる攻撃手段を駆使し念密に計画を練ってようやく対抗出来たのである。それに、いくら戦いの後だからと言え村人や他の冒険者達がグラピーの元にたどり着いた所で彼らはまだ戦う余力は十分にあったのだから勝てるわけがない。
なのに目の前にグラピーの首がある。
ーーまたそれも揺るぎない事実だ。
すると、ラルトの背後から他の村人達が何事かと集まって来た。そして、先程までこの場に居た村人の2、3人が急にラルトを見て大声で叫んだ。
「勇者ラルト様‼︎魔獣グラピーを倒して頂いてありがとうございます!」
「せーの。勇者ラルト、バンザイーー‼︎」
「勇者ラルト、バンザイーー‼︎」
その歓声は、どんどん辺りに伝染していく。ラルトは、何のことかと声を上げるが、その声すらその場にいる全ての村人には届かない。それ程までに歓声は大きくそして激しくなる。
そしてその歓声にとうとうラルトは耐えられなくなりその場から逃げた。息がきれるのも構わずひたすら走った。あてもなく、荷物も持たず、聖剣すらも持たず走った。
この時のラルトの心は、悲鳴をあげていた。なにせ、何故讃えられて居たのか、なにも分からない。目の前の状況すら、なにが起きているのかすら分からない。知らない事が多すぎてただ不安しかない。
同じ部屋に居たはずの仲間たちの姿はそこには無く自分だけがベッドに寝かされた状態だった。しかもラルトには自分が"いつどうやって"この部屋のベッドに寝たのかさっぱりだった。その違和感を感じつつもラルトは音のする方へと歩いて行く。
「くっ…なっ…」
そしてラルトは騒ぎの中心の光景に絶句した。
木箱で作られた台の上、藁が敷かれた上。それはあった。
先日戦いの最中、ラルトは言葉を交わした存在が居た。交わした言葉を真っ直ぐに聞き仲間を連れ村を出た群れの長、グラピー。
その首が血液が流れきり綺麗にされている首が…ぞんざいに造られた木箱の台座に置かれていた。
信じられないと、目を疑うとはこの事だろう。それ程までにラルトは動揺した。
(昨日初めて話して、群れを引いてくれて…戦いも終わったはず…まだ誰かが報復でもしに行ったのか?!なら…一体誰が??)
ラルトの頭の中は大混乱だった。昨日刃を交え互いに戦いの終焉を望み、勇者としてのラルトの意見を半信半疑な様子であったが、聞き入れてくれたグラピー。たった少しの間だけ戦っただけだが、彼の強さを知っているラルトは疑問に思った。
(魔獣グラピーを倒すのなんて一般の村人達が出来るわけがない。)
その事実は、考えるまでもなく歴然だ。なにせラルト達、勇者一行があらゆる攻撃手段を駆使し念密に計画を練ってようやく対抗出来たのである。それに、いくら戦いの後だからと言え村人や他の冒険者達がグラピーの元にたどり着いた所で彼らはまだ戦う余力は十分にあったのだから勝てるわけがない。
なのに目の前にグラピーの首がある。
ーーまたそれも揺るぎない事実だ。
すると、ラルトの背後から他の村人達が何事かと集まって来た。そして、先程までこの場に居た村人の2、3人が急にラルトを見て大声で叫んだ。
「勇者ラルト様‼︎魔獣グラピーを倒して頂いてありがとうございます!」
「せーの。勇者ラルト、バンザイーー‼︎」
「勇者ラルト、バンザイーー‼︎」
その歓声は、どんどん辺りに伝染していく。ラルトは、何のことかと声を上げるが、その声すらその場にいる全ての村人には届かない。それ程までに歓声は大きくそして激しくなる。
そしてその歓声にとうとうラルトは耐えられなくなりその場から逃げた。息がきれるのも構わずひたすら走った。あてもなく、荷物も持たず、聖剣すらも持たず走った。
この時のラルトの心は、悲鳴をあげていた。なにせ、何故讃えられて居たのか、なにも分からない。目の前の状況すら、なにが起きているのかすら分からない。知らない事が多すぎてただ不安しかない。
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