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第10章 初めての討伐 ラルトside

都合の良い夢

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 俺達は計画を立てた。

「ザルはアミラを守りながら村人達にブラック・ラビットの大群が押し寄せても大丈夫なようにしてくれ。」
「おう!任せな、ラルト!アミラは守ってやる!」
 
 ザルは、そう宣言して胸板をバンッと叩き胸を張った。いや…アミラだけじゃないんだが?まぁ、ザルは一番防御に自信があるし信頼できる。安心して任せられる。
「それから、ダットは魔物の群れが分散した場合群れを一点に集中するように周りから集めてくれ。」
「…分かった。」
  ダットは、静かに頷き愛用の槍を手入れし始めた。ダットは、着々と準備を進めていった。

「バルンと俺は、ブラック・ラビットと魔獣グラピーの討伐を前線に立って突き進む。もし、グラピーが人語を理解できる場合を考慮してグラピーとは俺が戦う。だからバルンはそれまで援護してくれ。」
「任せてくれよ、勇者様♪」
 
 そう言い俺達は、それぞれの武器の手入れや計画の細部調整をし真夜中から早朝までの間それぞれに就寝した。
 俺は、大事な勇者の相棒の聖剣を握りしめながら眠った。
 いつもは夢なんて見ない俺は、村から出て初めて夢を見た。余程疲れていたのだろうか?

ーーそんな夢に現れたのは"ミーラ"だった。
 村で見た時のミーラより、綺麗に成長しているミーラ。きっと俺の願望だろう…夢だからそうに決まっている…だってミーラはここに居ない。それにミーラは"俺"に笑いかけない…だって俺は勇者だから…そしてミーラが笑ったのは一度きり、ワンピースに時。母さん達に笑いかけた時だけだ。気のせいだったのかもしれないけれど、ミーラは確かに笑った気がした。

(けどもう記憶も曖昧だね…忘れかけているから夢に見るんだ。)

 そんな夢の中の"都合の良いミーラ"が俺は愛おしく感じた。だってそうだろ?夢でも愛おしいミーラに会えるんだ。勇者なんて関係なく魔王の娘なんて関係なく。ただのミーラにただのラルトが出逢えるんだ…

ーーでも…

ーーなんて虚しいんだろう…

「ミーラ…っ…」

 一瞬でもそう感じてしまった俺が悪いのだろう。夢のミーラでさえ霧の様に突如消えてしまった…あの日のように…
 目の前から去っていった。


ーーラルト、ラルト…ぇ…ねぇっ‼︎

「はっ!…どうしたの…みんな…」
「どうしたじゃないだろうが!ラルトもう朝だぞ!?」
「…予定の時間。お前が僕達に言った。」
「そうよ!あんたが言った時間なのに起きてないから!」
「まぁまぁ、みんな勇者様は疲れてたんだよー」

ーーそう夢は終わり…現実に向き合おう。

「ごめん…じゃあ、始めようか。村を襲うブラック・ラビット撃退、そして魔獣グラピー討伐を開始する。…行くよみんな!!」
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