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第7章 5年の始まり
使命と決意
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父ガルムは、母様の死について多くを語らなかった…いや、今思えば”語れなかった”のかもしれない。
ガルムは、静かにうっすらと浮かべた涙を衣服で拭った。そしてミーラを見据え今魔界が置かれている状況を説明し始めた。
「我が魔族軍は、魔界の全戦力を使い人間界に進行しようとした。が、しかし先に送った者たちが人間の襲撃をくらい命を落とした。」
そう話し床に地図を展開した。展開された地図には多くの赤い点と青い点があった。ガルムはその点の意味を説明した。赤は魔界のエリアにいる魔族の生命を示し、青は人間界のエリアにいる人間の生命を示している。そしてそれぞれの点は無数に点在し動いていた。
…まるでそれぞれの生活を空から見下ろす様に感じた。
そしてガルムは、魔界を示す赤い点を指差し言った。
「今魔界に存在している同胞はわずかに2万。他は戦えない者達ばかりだ…それに比べ人間の勢力は測りしきれない。それ故に我が軍の力はもはや無いに等しい。」
「だから、私を呼び戻した。」
ミーラは、青い点を指差し言った。ガルムはその言葉に頷くしかしなかった。
ガルムは魔界の王だ。戦況や戦場を知っている。だからガルムが言う事は間違いない。
(地図を見るだけで分かる。魔族より人間が劣っているとはいえ、人間は…いや、勇者候補が居る時点で魔族は危ない。)
「ミーラ、お前も知って居るだろうが…過去にあった状況、昔話の様に語られた状態が今現状に…目の前にある。」
「…はい。」
「そして…母ラルフはこの世に居ない。だから、ミーラお前が魔界を守らなければならない。…その為に5年の間に力をつけろ。それまでは何とか耐えてみせる。母亡き今お前だけが頼りなのだ。」
「分かりました。…我が身を魔界の為に捧げます。」
ミーラは、深々と頭を下げ一瞬の迷いもなく父に誓った。
(私がやらなくてはいけない。たとえ何があろうとも、私が”昔話の様”にはさせない!物語を変えてみせる!…もう母様の様にはさせない…)
それが、後に勇者となるラルトと戦わなくてはいけない事となるとは思いたくなかった。
ガルムは、静かにうっすらと浮かべた涙を衣服で拭った。そしてミーラを見据え今魔界が置かれている状況を説明し始めた。
「我が魔族軍は、魔界の全戦力を使い人間界に進行しようとした。が、しかし先に送った者たちが人間の襲撃をくらい命を落とした。」
そう話し床に地図を展開した。展開された地図には多くの赤い点と青い点があった。ガルムはその点の意味を説明した。赤は魔界のエリアにいる魔族の生命を示し、青は人間界のエリアにいる人間の生命を示している。そしてそれぞれの点は無数に点在し動いていた。
…まるでそれぞれの生活を空から見下ろす様に感じた。
そしてガルムは、魔界を示す赤い点を指差し言った。
「今魔界に存在している同胞はわずかに2万。他は戦えない者達ばかりだ…それに比べ人間の勢力は測りしきれない。それ故に我が軍の力はもはや無いに等しい。」
「だから、私を呼び戻した。」
ミーラは、青い点を指差し言った。ガルムはその言葉に頷くしかしなかった。
ガルムは魔界の王だ。戦況や戦場を知っている。だからガルムが言う事は間違いない。
(地図を見るだけで分かる。魔族より人間が劣っているとはいえ、人間は…いや、勇者候補が居る時点で魔族は危ない。)
「ミーラ、お前も知って居るだろうが…過去にあった状況、昔話の様に語られた状態が今現状に…目の前にある。」
「…はい。」
「そして…母ラルフはこの世に居ない。だから、ミーラお前が魔界を守らなければならない。…その為に5年の間に力をつけろ。それまでは何とか耐えてみせる。母亡き今お前だけが頼りなのだ。」
「分かりました。…我が身を魔界の為に捧げます。」
ミーラは、深々と頭を下げ一瞬の迷いもなく父に誓った。
(私がやらなくてはいけない。たとえ何があろうとも、私が”昔話の様”にはさせない!物語を変えてみせる!…もう母様の様にはさせない…)
それが、後に勇者となるラルトと戦わなくてはいけない事となるとは思いたくなかった。
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