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第6章 魔界と魔王ガルム

懐かしき故郷魔界へ

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ゲートを潜り魔界へ戻ったミーラは、途中魔力の渦に酔い意識がなくなった。
 次に意識が戻った時、ミーラは懐かしき故郷の懐かしき自室にいた。だが、懐かしきと言いはすれど空は漆黒、部屋は何も無くただ本棚とベッドがあるくらいの状態だった。
 昔のまま、そのままで放置してある。
 ただ、違うのはお気に入りの本もこれから読もうとしていた本も全てが埃を被っていた事。

(もう、二年経てばこうなるのか…母様が買ってくれた本まで…)

 ミーラは、一冊の本を手に取り埃を払って表紙を懐かしそうに見た。

”勇者と魔王の物語”

 母様が買ってくれた、私のお気に入り…
 勇者が魔王を倒し世界を救う物語。父様や他の魔族達は嫌ったが私はこの本が大好きだった。
 
《わたしもゆうしゃみたいに、たすけたい!》
《そぅね。ミーラは皆んなが大好きだものね》
《うん!わたし、まおうになっても。みんながわらっていられるようにするんだ!》
《そぅね。ミーラなら出来るわよ。でも、父様には内緒よ?》
《なんで??》
《そのうち分かるわ。だから母様との秘密よ。》
《うん!》

 ミーラにとってこの本は読まなくても記憶に残り、読まなくても記憶が蘇る本だった。母様が居なくても母様が居た証がある。それだけが、魔界に戻ったミーラにとって一番の安心感を与えてくれる物に感じた。
 
「さぁ、前に進まなくては…先ずは父様に会って戦況や情勢を聞かなくてはいけない。」

 そう言い聞かせるようにミーラは静かに気を引き締めだった。
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