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第4章 別れの始まり

事態の収束

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ミーラを囲う様に紅い黒い光と共に魔力が渦を巻く。
 その魔力の渦に飲み込まれたミーラはみるみるとその姿を変える。
 紅き瞳と髪はそのままに、巨大な竜の翼と尾。そしてこの森を埋め尽くす程の巨大な身体。
 これが魔王ガルフとその妻ラルフの娘ミーラの本来の姿。
 紛れも無いドラゴンであり、勇者の伝承に伝わりし竜である。

 そのドラゴンの姿を目にした”紛い者の悪魔”は、あまりの巨大さに息をする事すらままならず動きが止まった。
 
そして竜の姿のミーラから吐かれる一息は火となり標的を散り溶かす。目の前の”紛い者の悪魔”は灰になり空へと還る。しかしその灰は、火山灰の様なチリチリの灰では無い。

 その様子はまるで人の心が、魂が形を変えた羽根の様な形であった。
 いくつもの小さな紅い羽根が空へ還る様子をミーラは決して忘れないだろう。
 
 そして、ミーラの炎で燃える直前にチラリと見えた頰を薄っすらと伝う小さな雫と安らかに瞑った優しい瞳を、ミーラは決して忘れないだろう…

(直前…あなたは人だったんだな…)

 そしてミーラの目の前を灰は空へ高く高く飛び上がる。その光景を見たミーラの頭には言葉が浮かぶーー

(ありがとう。まだ、人であるギリギリの瞬間に…まだ誰かを傷つける前に…空に還してくれてありがとうっ)

 ミーラは祈る様な気持ちを込め笑顔で空を見上げ、かの者に届く様小さく呟いた。

「もう、安心してくれ…どうか安らかに空へお帰り…」

 こうして村を脅かした脅威はミーラの本来の力を使って収束した。
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