上 下
81 / 170
4章.Tractus

ご奉仕*

しおりを挟む
 †††

 果てなく繰り返す波のように苦痛と官能を与えられていた。混濁する意識。順応していく身体が遠い。束の間眠りに就いて、意識が戻ったのは夜だった。
 アヌスが押し拡げられ、何かを入れられた。

「これで中出しされても、そなたの内壁に直接触れぬよう保護される」

 ベタついた身体が綺麗になっている。上体を起こすと、右腿に金の装飾がつけられていた。腕にもつけられてる。

「ガーターリングにアームリング。イヤリングもつけてやったぞ。そなたは男どもをよろこばせに行くんだ。着飾らないとな」
 
 ミカエルは睫毛を伏せた。身体が怠い。

「立て。これを履くんだ」
「……?」
「見たことないのか?」

 前側にしか布がない下履きを穿かされた。紐がお尻に食い込むのが気になる。それから、ダボッとしたズボンを渡された。こちらでは、この形がスタンダードなのかもしれない。無防備に横が空いているのは、そういう事をしやすいからだろう。
 円形の飾りがたくさん付いた金色の紐を腰に巻きつけられる。素肌に短いベストを羽織らされ、首輪を嵌められた。足首と、後ろにやった手首にも嵌められる。
 ヤグニエはぼんやりしているミカエルを見下ろし、首を傾げた。

「従順だな」
「……逃げるすべがない」

 抵抗するほど酷い目に遭うのは、聖学校で学んでいる。

「そうだな。俺から逃げて父上の配下に捕まってみろ。性器を取られるか、命を取られるか。二つに一つだ」

 待ち受けていることを思うと、いっそ命を奪われたほうがいいような気さえしてくる。それなのに、なぜ従順にしているのか。そうまでして護るべきものなのか。男の機能があることや、この命は――。

「凌辱されるくらいなら、死んだ方がマシか?」

 聖学校にいた頃は明確な望みがあった。そのために、どんな苦しみにも耐えられた。

 ――苦しくても手ぇ放すな。

 ミカエルは顔をしかめる。
 それはミカエルがルシエルに言ったことだ。少し前に儀式に行ったルシエルは、日常とのギャップに、より苦しみを感じている。それでも「ここにいろよ」とミカエルは言い、旅に誘えば「君がそれを望むなら」とルシエルは言ってくれた。
 ルシエルは今も、逃れる術もなく苦しみと対峙している。より一層の苦しみを感じさせる要因となる日常を過ごしている。ミカエルはそれを知っていながら、彼にいてほしいと言ったのだ。
 唇を噛み締める。
 ルシエルにあんな事を言っておいて、自分だけ逃げることなどできやしない。

「覚悟はできてるみたいだな」

 唇を親指の腹でなぞられ、噛むのを止めるよう促される。目隠しをされ、フードつきのマントに身体が覆われた。

「行くぞ」

 首輪から伸びる鎖を引かれた。両足首も鎖で繋がれているので歩きづらい。奴隷というものは、このような扱いを受けているのかもしれないと思った。
 どれだけ歩いたか、男たちの盛り上がっている声が聞こえてきた。宴はすでに行われているのだろう。賑やかな雰囲気がどんどん近づき、ついにはそこへ辿り着く。
 目隠しとマントを外され、ギョッとした。
 想像を超える大部屋だ。さぞや勇猛果敢な戦士たちなのだろう。ガタイの良い男たちで埋め尽くされている。横を向けば、ミカエルと同じくらいか年下の少年が幾人も並んで立っていた。小麦色の肌の少年もいれば、白い肌の少年もいる。無防備な服装で、こんな所に立たされて。けれど、狼狽うろたえている者はいない。

「――そなたらに褒美を与える。今宵は大いに楽しめ」

 少年たちは、湧き立つ熱気のなかへみずから入っていった。ミカエルも背中を押されて前に出る。手首や足首の拘束はなくなっていた。

「見ろ、どこぞの王族みてえな髪色だ」
「色っぽい身体だな。ムラムラする」
「顔もいい」
「威勢のいい目じゃないか。猛るぜ」

 肉食獣の目をした男たちが寄ってくる。顎を掴まれ、上向かされた。

「それじゃ、愉しませてもらおうか」

 四方八方から伸びる無骨な手。ベストを脱がされ、ズボンの横側から手を突っ込まれ。素肌を撫でまわされる。

「っ、」

 不埒ふらちな手を退かそうとしたら、横から伸びた手に手首を引かれて勃起し始めた一物を握らされた。伝わる熱。上から手を重ねられ、扱くのに使われる。

「かわいいなぁ、桃色乳首だぜ」
「手触りもいい…」

 乳首を舐め回す男、アヌスに指を突っ込んでくる男、腿を舐め上げる男に項を食む男。腕を持ち上げられて腋も舐められる。いっぺんにされて頭が追いつかない。膝裏を蹴られ、膝立ちになった。

「ぁ…んっ……」
「こんなちっちぇえ乳首でも感じるのか」
「おら、もっと股開け」

 床についている膝を横に蹴られて足が大きく開かされた。前に倒れそうになる。なんとか耐えると、腰布を解いてズボンを下ろされた。

「新人か? こっちも初々しいぞ」
「んっ」

 お尻に食い込んでいた紐を引っ張って離され、パチンと尻の谷間を打たれた。

「そそる尻だな。早くぶちこもうぜ」 
「俺はこっちでやらせてもらう」
 
 口とアヌスに熱を帯びた肉棒をズブズブ挿れられる。
 身体がしなる。無遠慮に突かれて滲む視界――。
 昼間も後ろに玩具を咥えさせられていただけあり、いきなり突かれても痛くなかったのが救いか。グボッと音がしてもっと奥まで突き挿れられる。甘い叫びは喉の奥にくぐもった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...