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第三話 リンリンと天使(上)
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「ここは?」
気がつくと雲の上にいました。
空からは太陽の光が優しく照らしていて、正面には白く手すりも土台も無い階段が遥か上空まで続いてます。
人間の世界では決してお目にかかれない幻想的な光景に、私はしばらく見惚れてしまいます。
「こんな美しい光景は見たことがありません。もしかしてここが天国なのでしょうか」
周りの景色で、死んだ事を理解する私。すると、寂しい気持ちと、それと同じくらいの心配な気持ちが込み上げてきました。
私もお父様もいない王国は大丈夫だろうか? アンは寂しがっていないだろうか? リンエスター家のいない世界は大丈夫なのだろうか? と……。
次々と、そんな思いが込み上げてくる中、ふと、すぐ近くから人の気配がします。
慌てて視線をそこに向けると、その人は、いえ、人ではありませんでした。
私より少し大人びた姿の女性の背中には羽が生えており、頭には黄金のリングが浮いてました。
あの人はもしかして、天使様?
『そうですよ。人間』
「!? 今どうして考えていることが分かったの?」
『不思議でしょう? それは私が、貴女の思考を読んでいるからですよ』
そう答える目の前の天使様の口はピクリとも動いてません。しかし、声は聞こえてきます。それも直接頭の中に。
「やっぱり、頭の中に声が聞こえる。どうしてでしょうか? 不思議で面白いです」
摩訶不思議な現象に、私は子供のように『面白い』と反応してしまいました。
その反応がおかしかったのか、天使様は優しく微笑み。
『この反応。うふふ。貴女は変わりませんね』
「? それはどういうことですか?」
『いえ、こちらの話です。忘れてください』
「はぁ……」
なんでしょう、初めて会うはずなのに、この天使様を見ていると懐かしく感じます。
天使様の事が気になるも、私は何も追求しませんでした。
すると天使様が私の目をじっと見ながら。
『リンリン。これから貴女には【3つの選択肢】を与えます』
「【3つの選択肢】ですか?」
『そうです。本来なら選択肢は2つまでしか差し上げないのですが、貴女は【特別】にです』
「【特別】? 私が?」
『以外そうな顔をしていますね。でも、貴女の生前の功績はとても素晴らしいものでした。貴女がドラゴンを討伐しなかったら間違いなく世界は滅んでいたでしょう。だから言わせてください。ありがとう。ドラゴンから世界を守ってくれて』
人間より上位の存在である天使様が、頭を下げてお礼を言ってきました。
「頭を上げてください。私はリンエスター家の使命を全うしただけです」
謙遜する私でしたが、その心には温かいものが込み上げてきました。
『リンエスター家の使命を守ることができたんだ』という。暖かくも嬉しい。そんな気持ちが……。
お礼を言い終え頭を上げた天使様が、私の考えを読み取ったのかニッコリ笑いながら。
『これから【3つの選択肢】の説明はしますね』
「お願いします」
『選択肢の1つ目は【天国行き】です』
「【天国行き】ですか?」
天国と言われて、私の頭に思い浮かんだのは白いハトが飛んでいて、周りは自然豊かで、争いもなく、平和な世界でした。
『うふふ。そうです。天国は人間にとっての楽園。貴女のイメージ通りの世界ですよ』
「そうなんですね。なら【天国行き】にしましょう」
『うふふ。まだ決めるのは早いですよ。
続けて2つ目の選択肢を説明しますね。2つ目の選択肢は【転生】です』
「【転生】?」
『転生とは、今の肉体と記憶を捨てて、新たな人間に生まれ変わることです』
「新たな人間に……」
そう言われると私はなんだか怖くなりました。記憶も消えて今の自分じゃなくなることに恐怖心を感じたのです。天使様は私の考えを読み取り。
『別に不安がることではありませんよ。転生は再び一から生まれ変わり人生をやり直すこと。リンリン、貴女だってすでに何度か経験していることですよ』
「私が? 何度も転生を経験?」
天使様に言われた事で私は思った。
確かに、今の私は過去に転生した誰かなんだ。と。
それでも『転生するのは怖い』と感じた私でしたが、天使様がその考えを読み取って、一人の人物を空に映し出しました。
その人物は、炎のように真っ赤な髪に、ツインテールで大人びていてどことなく私そっくりな女性でした。
『これが、前世の貴女です。名前はリンエスター・アイリン』
「これが前世の私? それにその名前って!」
『気がつきましたか。そうです。貴女の世界では、邪悪なドラゴンから世界を救った【英雄】と呼ばれた女性です』
「私が!? 初代リンエスターの生まれ変わり!?」
衝撃の事実にまるで天地がひっくり返る光景を見たように驚きました!
初代リンエスターといえば私の祖先であり、お伽噺にもなっているような英雄で、あのドラゴンですら屠れるほどの歴史上でも最強の存在。
だからこそ、私はその英雄の生まれ変わりだとはすぐに信じられませんでした。
『信じられないのも無理はありません。でも事実です。昔から不思議ではありませんでしたか? そんなに強い力を持って生まれたことや、そうですね、他にも好みの髪型とか』
「そう言われると……」
思い出したのは4歳の頃の記憶でした。山でオオカミに襲われるも、オオカミの牙や爪が私に触れた途端にひび割れた事。
それと髪型は自然とツインテールにしていました。幼い頃から髪を結ぶたびツインテールになるのが当たり前だったので特に気にしてませんでしたがそれが天使に言われた途端、なんとなく納得してしまいます。
そっか。これはかつての私がそうだったからなんだ。と。
天使様は私の思考を読み取りながら続けて話しました。
『かつての貴女は、邪悪なドラゴンから世界を救いました。
神はそんな彼女の偉大な功績に対して【2つの選択肢】に加えて特別扱いする事にしたのです』
「2つの選択肢に加えて特別扱い? 私のようにですか?」
『そうです。今からその時の話をしますね』
天使様はかつての記憶を思い出すように、天を眺めながら昔話をする語りべのように話しました。
『ある日のことでした。神から送られる死者の情報に、【この人間は、世界を救ってるから、特別扱いにしてねん♪】と記してあったのです。人間が生まれてからこの仕事をしている私ですが、こんなことは初めてだったので当時はかなり焦りました。
慌てて【特別って、どうすればいいのですか?】と神に連絡するも、返信が来る前に亡くなったアイリンさんがここに来てしまいました。
しばらく彼女と話した後。私は2つの選択肢を提案します。
でも特別扱いに関しては神からの指示が届いておらず、私自身で考えるしかなかったのです。
私はとても焦りました。なんとか、なんとかしないと! 私は、必死に、それはもう必死に考えて、そんな私の様子を見たアイリンさんに心配されながらも思いついた特別扱いが【転生しても記憶も強さもそのまま】という好条件でした。
それを思いついた瞬間ぐっ! っとガッツポーズしましたよ。よく思いつきました私。今夜は祝杯だ! と』
語りながら、かつての自分を思い出したのか、天使様がガッツポーズし、それはそれは嬉しそうに笑いだしました。
神々しい天使から一転。無邪気で人間臭い態度になった天使様に私はつい『この天使様可愛い~!』と思ってしまいます。
そんな私の考えを読み取った天使様の顔がすぐ真っ赤に染まり、あたふたしながら。
『なっ……あっ、貴女は、貴女って人は、天使にかっ、かか、可愛いだなんて! そんなの、そんなの全然嬉しくなんかないんだからねっ!』
恥ずかしそうに叫んだ後『む~~』と頬を膨らませる天使様。やっぱり可愛い。
実はこの天使、長年人間を導く仕事をしてきて『可愛い』なんてあらゆる男女から言われたり、思われるのも多々あったのだが、どうしてかリンリンに言われると、顔が熱くなり、胸の辺りに奇妙なむずむずを感じてしまうのだった。
それは人間の感情に表すところの【恋】という感情に近いものだったが、天使もリンリンもその感情に関しては鈍感だったため、全く気がついてなかった。
気がつくと雲の上にいました。
空からは太陽の光が優しく照らしていて、正面には白く手すりも土台も無い階段が遥か上空まで続いてます。
人間の世界では決してお目にかかれない幻想的な光景に、私はしばらく見惚れてしまいます。
「こんな美しい光景は見たことがありません。もしかしてここが天国なのでしょうか」
周りの景色で、死んだ事を理解する私。すると、寂しい気持ちと、それと同じくらいの心配な気持ちが込み上げてきました。
私もお父様もいない王国は大丈夫だろうか? アンは寂しがっていないだろうか? リンエスター家のいない世界は大丈夫なのだろうか? と……。
次々と、そんな思いが込み上げてくる中、ふと、すぐ近くから人の気配がします。
慌てて視線をそこに向けると、その人は、いえ、人ではありませんでした。
私より少し大人びた姿の女性の背中には羽が生えており、頭には黄金のリングが浮いてました。
あの人はもしかして、天使様?
『そうですよ。人間』
「!? 今どうして考えていることが分かったの?」
『不思議でしょう? それは私が、貴女の思考を読んでいるからですよ』
そう答える目の前の天使様の口はピクリとも動いてません。しかし、声は聞こえてきます。それも直接頭の中に。
「やっぱり、頭の中に声が聞こえる。どうしてでしょうか? 不思議で面白いです」
摩訶不思議な現象に、私は子供のように『面白い』と反応してしまいました。
その反応がおかしかったのか、天使様は優しく微笑み。
『この反応。うふふ。貴女は変わりませんね』
「? それはどういうことですか?」
『いえ、こちらの話です。忘れてください』
「はぁ……」
なんでしょう、初めて会うはずなのに、この天使様を見ていると懐かしく感じます。
天使様の事が気になるも、私は何も追求しませんでした。
すると天使様が私の目をじっと見ながら。
『リンリン。これから貴女には【3つの選択肢】を与えます』
「【3つの選択肢】ですか?」
『そうです。本来なら選択肢は2つまでしか差し上げないのですが、貴女は【特別】にです』
「【特別】? 私が?」
『以外そうな顔をしていますね。でも、貴女の生前の功績はとても素晴らしいものでした。貴女がドラゴンを討伐しなかったら間違いなく世界は滅んでいたでしょう。だから言わせてください。ありがとう。ドラゴンから世界を守ってくれて』
人間より上位の存在である天使様が、頭を下げてお礼を言ってきました。
「頭を上げてください。私はリンエスター家の使命を全うしただけです」
謙遜する私でしたが、その心には温かいものが込み上げてきました。
『リンエスター家の使命を守ることができたんだ』という。暖かくも嬉しい。そんな気持ちが……。
お礼を言い終え頭を上げた天使様が、私の考えを読み取ったのかニッコリ笑いながら。
『これから【3つの選択肢】の説明はしますね』
「お願いします」
『選択肢の1つ目は【天国行き】です』
「【天国行き】ですか?」
天国と言われて、私の頭に思い浮かんだのは白いハトが飛んでいて、周りは自然豊かで、争いもなく、平和な世界でした。
『うふふ。そうです。天国は人間にとっての楽園。貴女のイメージ通りの世界ですよ』
「そうなんですね。なら【天国行き】にしましょう」
『うふふ。まだ決めるのは早いですよ。
続けて2つ目の選択肢を説明しますね。2つ目の選択肢は【転生】です』
「【転生】?」
『転生とは、今の肉体と記憶を捨てて、新たな人間に生まれ変わることです』
「新たな人間に……」
そう言われると私はなんだか怖くなりました。記憶も消えて今の自分じゃなくなることに恐怖心を感じたのです。天使様は私の考えを読み取り。
『別に不安がることではありませんよ。転生は再び一から生まれ変わり人生をやり直すこと。リンリン、貴女だってすでに何度か経験していることですよ』
「私が? 何度も転生を経験?」
天使様に言われた事で私は思った。
確かに、今の私は過去に転生した誰かなんだ。と。
それでも『転生するのは怖い』と感じた私でしたが、天使様がその考えを読み取って、一人の人物を空に映し出しました。
その人物は、炎のように真っ赤な髪に、ツインテールで大人びていてどことなく私そっくりな女性でした。
『これが、前世の貴女です。名前はリンエスター・アイリン』
「これが前世の私? それにその名前って!」
『気がつきましたか。そうです。貴女の世界では、邪悪なドラゴンから世界を救った【英雄】と呼ばれた女性です』
「私が!? 初代リンエスターの生まれ変わり!?」
衝撃の事実にまるで天地がひっくり返る光景を見たように驚きました!
初代リンエスターといえば私の祖先であり、お伽噺にもなっているような英雄で、あのドラゴンですら屠れるほどの歴史上でも最強の存在。
だからこそ、私はその英雄の生まれ変わりだとはすぐに信じられませんでした。
『信じられないのも無理はありません。でも事実です。昔から不思議ではありませんでしたか? そんなに強い力を持って生まれたことや、そうですね、他にも好みの髪型とか』
「そう言われると……」
思い出したのは4歳の頃の記憶でした。山でオオカミに襲われるも、オオカミの牙や爪が私に触れた途端にひび割れた事。
それと髪型は自然とツインテールにしていました。幼い頃から髪を結ぶたびツインテールになるのが当たり前だったので特に気にしてませんでしたがそれが天使に言われた途端、なんとなく納得してしまいます。
そっか。これはかつての私がそうだったからなんだ。と。
天使様は私の思考を読み取りながら続けて話しました。
『かつての貴女は、邪悪なドラゴンから世界を救いました。
神はそんな彼女の偉大な功績に対して【2つの選択肢】に加えて特別扱いする事にしたのです』
「2つの選択肢に加えて特別扱い? 私のようにですか?」
『そうです。今からその時の話をしますね』
天使様はかつての記憶を思い出すように、天を眺めながら昔話をする語りべのように話しました。
『ある日のことでした。神から送られる死者の情報に、【この人間は、世界を救ってるから、特別扱いにしてねん♪】と記してあったのです。人間が生まれてからこの仕事をしている私ですが、こんなことは初めてだったので当時はかなり焦りました。
慌てて【特別って、どうすればいいのですか?】と神に連絡するも、返信が来る前に亡くなったアイリンさんがここに来てしまいました。
しばらく彼女と話した後。私は2つの選択肢を提案します。
でも特別扱いに関しては神からの指示が届いておらず、私自身で考えるしかなかったのです。
私はとても焦りました。なんとか、なんとかしないと! 私は、必死に、それはもう必死に考えて、そんな私の様子を見たアイリンさんに心配されながらも思いついた特別扱いが【転生しても記憶も強さもそのまま】という好条件でした。
それを思いついた瞬間ぐっ! っとガッツポーズしましたよ。よく思いつきました私。今夜は祝杯だ! と』
語りながら、かつての自分を思い出したのか、天使様がガッツポーズし、それはそれは嬉しそうに笑いだしました。
神々しい天使から一転。無邪気で人間臭い態度になった天使様に私はつい『この天使様可愛い~!』と思ってしまいます。
そんな私の考えを読み取った天使様の顔がすぐ真っ赤に染まり、あたふたしながら。
『なっ……あっ、貴女は、貴女って人は、天使にかっ、かか、可愛いだなんて! そんなの、そんなの全然嬉しくなんかないんだからねっ!』
恥ずかしそうに叫んだ後『む~~』と頬を膨らませる天使様。やっぱり可愛い。
実はこの天使、長年人間を導く仕事をしてきて『可愛い』なんてあらゆる男女から言われたり、思われるのも多々あったのだが、どうしてかリンリンに言われると、顔が熱くなり、胸の辺りに奇妙なむずむずを感じてしまうのだった。
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