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第四十二話 イルカ
しおりを挟む景色が変わり、私とイヤリス大尉は砂浜の上に立っていた。
目の前には海がある。
すんすん。潮の香りがする。とても懐かしい匂いだ。
「こ、怖かったでしゅ~」
恐怖と緊張の解けたイヤリス大尉が、ヘナヘナと砂浜の上に膝から崩れた。
可愛い。
「キュイー♪」
ふと、可愛らしい鳴き声が聞こえる。
海を見ると、遠くで懐かしい生き物が海面を優雅にジャンプしていた。
「イルカの鳴き声だったのか」
「キュイー♪」
離れているにも関わらず、イルカがこちらに気づいた。
背鰭を海上に出しながら、もの凄い速さで泳いで私達に向かってくる。
「人懐っこいイルカだ」
愛らしく泳ぐ姿に、思わず笑みを浮かべた。
だがここで、イルカの背鰭がどんどん大きくなっている事に気づく。
「あれ? イルカってこんなに大きかったか?」
最初は点のように小さかったのに、近くに来れば来るほど巨大化していき――。
「キュイイイイイイイイ――!!」
ついには小島と見間違えるくらいの大きさで、私達の正面にある海上に現れた。
「でかいな」
「お、大きいでしゅ」
「キュイ……」
そして私達と目が合うと、まんまるでくりっくりの愛らしい瞳が、怪獣のように鋭くなる。
「ぴぃいいい――!」
突然の変化に、イヤリス大尉が悲鳴を上げる。
「ギュイイイイイイイッ――!」
怖い顔になったイルカが、口をパックリと開けて、私達を食べようと海から砂浜へと泳いできた。
口の中にはびっしりとノコギリのような歯が生えており、もしゴリラがこの場にいたらすぐ食べられてミキサーのように細かく刻まれていただろう。
だが。
「私はエサじゃない」
正面にジャンプして、その勢いのままイルカの上顎を殴る。
「ふん!」
ボッ。
拳の当たった部分の歯が消え、イルカの上顎も最初から無かったかのように消滅した。
「ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ――――!!!!」
上顎を失ったイルカの悲鳴が、サイレンのように喉の奥から響いてうるさい。
「黙れイルカ」
くるっと一回転してイルカの頭上に立ち、真上から頭を殴る。
ボッ。
脳みそごと、イルカの顔がこの世から消滅した。
残った体の大半は海に沈み、砂浜に上がっていた下顎はイヤリス大尉の正面スレスレで止まった。
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