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第四十話 戦闘後のスリカ視点③

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 イヤリス大尉の頭をクロノ中佐が撫でた。
 ……羨ましい。

「ふわっ、な、なんで撫でるんですか!」

「可愛いから」

「きゃわっ!!」

 動揺するイヤリス大尉を、愛でながら撫でるクロノ中佐。心なしか嬉しそうだ。
 ……羨ましい。

「これからよろしく。イヤリス大尉」

「は、はい。よろしくです。クロノ中佐ぁ~」

 クロノ中佐の撫でる手つきが、ますます優しくなる。
 イヤリス大尉は「ふにゃっ~~」と心地よさそうな声を出した。
 ……羨ましい。
 すると、クロノ中佐は大佐に向かってとんでもない発言をする。

「シーナ大佐。イヤリス大尉を私にくれないか」

「ふにゃっ!?」

 何を言ってるんだ!?

「ダメだ!」

 大佐はハッキリと断った。当たり前だ!
 イヤリス大尉はホッと胸を撫で下ろしている。

「……そうか。残念だ」

 クロノ中佐はとても落ち込んでいた。
 ……ガーディアンズの先輩として、自分から頭を撫でて励ましてやろう、そうしよう!
 脳内で決めたらすぐ動く。
 この行動の早さこそ、少佐としての……。
 
 上を向いてすぐ諦めた。
 身長差があって満足に撫でられそうにない。
 ……コホン。この諦めの早さこそ、少佐としての実力なのだ。

「ああ、あの。く、クロノ中佐」
 
 すると、イヤリス大尉がもじもじしながらクロノ中佐に話しかける。

「驚きましたけど、き、気にしてません……よ。
 そ、それと可愛いって言ってくれたの。と、とても嬉しかった……です」

「イヤリス大尉」

 クロノ中佐の顔がぱぁぁっと明るくなり、イヤリス大尉にぎゅっと抱きつく。
 あわあわするイヤリス大尉をこれでもかとぎゅっとする!
 ……羨ましい。
 
「はぁ~幸せ~」

 クロノ中佐の表情がこれでもかと輝いている。
 その顔を見ていると、なんでだろう、心がざわざわする。
 ……自分を撫でた時は、そんな顔しなかったのに。

「おい、そろそろイヤリスから離れろ」

 大佐がクロノ中佐へと警告した。

「……」

 が、クロノ中佐は大佐の警告を無視して、イヤリス大尉の頭に顔を埋めていた。けしからん!
 大佐の表情はますます厳しくなっていく。
 これは非常にまずいぞ。

「命令だ。イヤリスから離れろ」

 殺気を出しながら大佐が命令した。
 その圧倒的な迫力に、自分の顔は青ざめ、体は震える。
 ガタガタ、怖い、怖いよぉ~……。

「……………………………………………………わかった」

 クロノ中佐が自分達の反応を見て、ようやくイヤリス大尉から離れてくれた。
 それにより、大佐の殺気が消えた。
 ほっ、よかった~。

「それでいい。これから余が話すからしっかり聞けよ」

「はっ!」

「……ああ」

「ひゃい!」

 ピシッと敬礼しながら返事を返す。
 もうあんな怖い思いはしたくないから、真剣にやった。
 大佐は真面目な表情で、クロノ中佐とイヤリス大尉を交互に見ながら喋り始めた。

「ではクロノ、イヤリス」

「なんだ」

「はっ、ひゃいっ!」

「これからお前達二人に、ガーディアンズの一隊員として、任務を与える!」

「任務?」

「ふわっ、私とクロノ中佐にですきゃっ!?」

「無論。お前達二人に、だ」

 そう言うと、大佐は机の引き出しからくるくる巻かれた一枚の紙を出した。

「クロノ。お前はガーディアンズに入隊したばかりで知らないだろうから、余が直々に教えてやる。
 ガーディアンズの任務。それは――」

「それは?」

 喋りながら、大佐が紙を広げた。
 
「――ポセイドンの討伐。つまり『』の討伐だ」
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