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第三十一話 決闘

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 転移した先には、何もない大地が広がっていた。
 上を見上げると空があり、私にはここが闘技場とは思えない。

「ここが闘技場なのか?」

「そうだ」

 シーナ大佐が頷き、説明を始めた。

「ここは我々『佐官』クラス専用の闘技場だ。
 大いに暴れてもいいように、超新星爆発にも耐えられる結界が闘技場を包むように張っており、広さは半径百キロはある」

「百キロ。広いな」

「この闘技場では不満か?」

 シーナ大佐の問いに、私は(広すぎるだろ)と思うも、頭を横に振る。

「……いや、不満はない」

「それはよかった」

「さっさと始めましょう。大佐」

 スリカ少佐が、獲物を前にした獣のような目をしながら、シーナ大佐に詰め寄る。
 シーナ大佐は頷き。

「いいだろう。簡単に決闘のルール説明をしてから始めてもらう。お前達、距離をとってその辺に立っていろ」

「わかった」

「了解です!」

 シーナ大佐の言葉に従い、私とスリカ少佐は離れて立つ。
 それを見て満足そうに頷き、シーナ大佐がルールを説明し始めた。

「ルールは簡単だ。『どちらかがギブアップするか』『余が戦闘不能と判断するか』『相手を殺すか』。その三つだけだ。何か質問があるか?」

 私は手を上げ質問する。

「殺してもいいのか」

「構わない。余の部隊には優秀な『聖職者』がいるからな。、そいつに元通り体を治して生き返らせてもらう」

「そうか」

 シーナ大佐の言葉を聞き、私は心の中で安心する。
 よかった。体ごと元通り生き返るなら、本気で殴っても問題ないな。

「なんだ、もうビビったのか!」

 スリカ少佐が、小さな体で腕を組みながら、子供のように煽ってきた。
 その目は獰猛な獣のように鋭く、体からは不思議なオーラがゴーゴー出ていたが、私はその姿に好意を感じていた。
 スリカ少佐の戦闘姿、可愛いな。できれば殺したくないなあ。

「降参するなら今のうちだぞ!」

「降参は、しない」

 一瞬スリカ少佐の可愛さで、(降参してもいいかな)とグラついたが、それではここに来た意味がないから断る。
 断った事で、スリカ少佐はますます険しい顔になる。

「ふん、死ぬ覚悟はできたようだな」

 それっきり、スリカ少佐からの煽りは無くなった。
 そのタイミングで、シーナ大佐が口を開く。

「では10秒後に開始してもらう。
 10……9……8……7……」

 シーナ大佐によるカウントダウンが始まる。
 緊張は……しない。

「6……5……4……3……」

 一応念のため深呼吸くらいはしておくか。

「すーーーー」

 深く息を吸い――

「2……1……始め!」

「はーーーー」

 吐いたタイミングで、スリカ少佐が私から距離を取り、手を上に上げる。

「まずはこれからだ、『ファイヤーボール』」

 空に巨大な幾何学模様が浮かび、そこから同じくらい巨大な炎の球体が現れた。
 あまりの大きさに、空が視界の端にしか見えなくなる。

「でかいな。恒星のようだ」

「これが自分の『ファイヤーボール』だ!」

 そう自慢げに言いながら、手を振り下ろし、その巨大な球体を私の真上から落としてきた。

「眩しい――」
 
 私は避けず、ファイヤーボールをまともにくらい、周囲全てが炎になる。
 が、熱くはないし、痛みも感じない。眩しいだけだ。

「鬱陶しい。消すか」

 ただただ眩しいだけのファイヤーボールを殴る。
 すると、最初からファイヤーボールなど無かったように、パッと視界が元に戻った。
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