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第二十七話 合格
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何故? どうして?
ポツンと一人残された私は、ペンタ達が消えた理由が理解出来なかった。
猛獣が怖かったからギブアップしたのか?
いや、それはあり得ない。ここの猛獣は対した強さではないから。ペンタ達の実力なら楽勝だっただろう。
じゃあトカゲが怖かったから?
いや、それもあり得ない。そのトカゲはさっき私が始末したし……。
「じゃあどうして?」
トカゲを回収しながら考えても考えても思い当たる節が無く、回収し終え、また考えながら歩いていると、気がつけばスリカ少佐のいる広場に帰っていた。
スリカ少佐は私の姿を確認した瞬間。目を見開き、だーーっと滝のように涙を流しながら駆け寄って来た。
「おお、おおおおお! よくぞ、よくぞ戻って来てくれたな!」
「……ああ」
過剰な反応に若干引いたが、見知ったばかりの四人がいなくなり、落ち込んだ今の私にはそれほど悪くない反応だった。
「辛かったろう、大変だったろう。ささ、暖かい飲み物を用意してやるからゆっくり休んでくれ、お腹が空いてるなら食べ物も用意するがどうだ」
「いや、飲み物だけでいい」
「そうか。なら最高の紅茶を用意しよう」
丁寧な対応でテーブルまで案内してもらい、スリカ少佐が何もない空間から取り出して私に出したのは、不思議な匂いのする真っ赤な紅茶だった。
はて、どこかで嗅いだことのある匂いだが……。
「体が休まる紅茶だ。さあ飲んでくれ」
湯気の出ている紅茶を一口だけ飲んでみる。甘くも無く苦くも無いバランスのいい味だ。
多少知ってる味より飲みやすくなっていたが、やはりこの味は知っていた。
「スリカ少佐。この紅茶はまさか」
「知ってるのか? これは『ゴリラティー』というこの森に生息するゴリラからしか取れない最高級の紅茶だよ」
「どおりで飲んだ覚えがあるはずだ」
目覚めに一杯飲んだからな。ほかほかの『ゴリラティー』を飲んだ効能は凄まじく、気がつけば私の顔は緩んでいた。恐るべし『ゴリラティー』。
「落ち着いたようだし、君の名前を教えてくれないか」
「ああ、私は『ディーア・クロノ』だ」
「『ディーア・クロノ』か。よく『守護竜』が暴れる森から帰還してくれた。礼を言う、ありがとう」
「? 感謝を述べられる覚えは無いが?」
「いやいや、帰還してくれただけでもありがとうだ」
「そうか」
「で、だ。ポイントを確認したいから袋を渡して貰えないか」
「ああ」
スリカ少佐に袋を渡した。
「どれ、ポイントは……1、10、100、1,000、10,000…………ろ、612,100ポイント!?」
「ダメだったか?」
「ダメじゃない。ダメじゃないけど……なんだこのポイントは。こんなの私でも……いや、もしかしたら歴代最高得点なんじゃ……」
ぶつぶつ呟き、パンっと両手を叩いて目を閉じるスリカ少佐。
その両手の甲には幾何学模様が浮かんでおり、30秒程で目をゆっくりと開く。
「……もうこの森にいる人間で生きてるのは自分とクロノだけか」
どうやら生存確認をしていたようだ。
「いいだろう、クロノ。試験は合格だ。これよりガーディアンズ本部へ転移する」
ポツンと一人残された私は、ペンタ達が消えた理由が理解出来なかった。
猛獣が怖かったからギブアップしたのか?
いや、それはあり得ない。ここの猛獣は対した強さではないから。ペンタ達の実力なら楽勝だっただろう。
じゃあトカゲが怖かったから?
いや、それもあり得ない。そのトカゲはさっき私が始末したし……。
「じゃあどうして?」
トカゲを回収しながら考えても考えても思い当たる節が無く、回収し終え、また考えながら歩いていると、気がつけばスリカ少佐のいる広場に帰っていた。
スリカ少佐は私の姿を確認した瞬間。目を見開き、だーーっと滝のように涙を流しながら駆け寄って来た。
「おお、おおおおお! よくぞ、よくぞ戻って来てくれたな!」
「……ああ」
過剰な反応に若干引いたが、見知ったばかりの四人がいなくなり、落ち込んだ今の私にはそれほど悪くない反応だった。
「辛かったろう、大変だったろう。ささ、暖かい飲み物を用意してやるからゆっくり休んでくれ、お腹が空いてるなら食べ物も用意するがどうだ」
「いや、飲み物だけでいい」
「そうか。なら最高の紅茶を用意しよう」
丁寧な対応でテーブルまで案内してもらい、スリカ少佐が何もない空間から取り出して私に出したのは、不思議な匂いのする真っ赤な紅茶だった。
はて、どこかで嗅いだことのある匂いだが……。
「体が休まる紅茶だ。さあ飲んでくれ」
湯気の出ている紅茶を一口だけ飲んでみる。甘くも無く苦くも無いバランスのいい味だ。
多少知ってる味より飲みやすくなっていたが、やはりこの味は知っていた。
「スリカ少佐。この紅茶はまさか」
「知ってるのか? これは『ゴリラティー』というこの森に生息するゴリラからしか取れない最高級の紅茶だよ」
「どおりで飲んだ覚えがあるはずだ」
目覚めに一杯飲んだからな。ほかほかの『ゴリラティー』を飲んだ効能は凄まじく、気がつけば私の顔は緩んでいた。恐るべし『ゴリラティー』。
「落ち着いたようだし、君の名前を教えてくれないか」
「ああ、私は『ディーア・クロノ』だ」
「『ディーア・クロノ』か。よく『守護竜』が暴れる森から帰還してくれた。礼を言う、ありがとう」
「? 感謝を述べられる覚えは無いが?」
「いやいや、帰還してくれただけでもありがとうだ」
「そうか」
「で、だ。ポイントを確認したいから袋を渡して貰えないか」
「ああ」
スリカ少佐に袋を渡した。
「どれ、ポイントは……1、10、100、1,000、10,000…………ろ、612,100ポイント!?」
「ダメだったか?」
「ダメじゃない。ダメじゃないけど……なんだこのポイントは。こんなの私でも……いや、もしかしたら歴代最高得点なんじゃ……」
ぶつぶつ呟き、パンっと両手を叩いて目を閉じるスリカ少佐。
その両手の甲には幾何学模様が浮かんでおり、30秒程で目をゆっくりと開く。
「……もうこの森にいる人間で生きてるのは自分とクロノだけか」
どうやら生存確認をしていたようだ。
「いいだろう、クロノ。試験は合格だ。これよりガーディアンズ本部へ転移する」
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