上 下
29 / 54

第二十七話 合格

しおりを挟む
 何故? どうして?

 ポツンと一人残された私は、ペンタ達が消えた理由が理解出来なかった。
 猛獣が怖かったからギブアップしたのか?
 いや、それはあり得ない。ここの猛獣は対した強さではないから。ペンタ達の実力なら楽勝だっただろう。
 じゃあトカゲが怖かったから?
 いや、それもあり得ない。そのトカゲはさっき私が始末したし……。
 
「じゃあどうして?」

 トカゲを回収しながら考えても考えても思い当たる節が無く、回収し終え、また考えながら歩いていると、気がつけばスリカ少佐のいる広場に帰っていた。
 スリカ少佐は私の姿を確認した瞬間。目を見開き、だーーっと滝のように涙を流しながら駆け寄って来た。

「おお、おおおおお! よくぞ、よくぞ戻って来てくれたな!」

「……ああ」

 過剰な反応に若干引いたが、見知ったばかりの四人がいなくなり、落ち込んだ今の私にはそれほど悪くない反応だった。

「辛かったろう、大変だったろう。ささ、暖かい飲み物を用意してやるからゆっくり休んでくれ、お腹が空いてるなら食べ物も用意するがどうだ」

「いや、飲み物だけでいい」

「そうか。なら最高の紅茶を用意しよう」

 丁寧な対応でテーブルまで案内してもらい、スリカ少佐が何もない空間から取り出して私に出したのは、不思議な匂いのする真っ赤な紅茶だった。
 はて、どこかで嗅いだことのある匂いだが……。

「体が休まる紅茶だ。さあ飲んでくれ」
 
 湯気の出ている紅茶を一口だけ飲んでみる。甘くも無く苦くも無いバランスのいい味だ。
 多少知ってる味より飲みやすくなっていたが、やはりこの味は知っていた。

「スリカ少佐。この紅茶はまさか」

「知ってるのか? これは『ゴリラティー』というこの森に生息するゴリラからしか取れない最高級の紅茶だよ」

「どおりで飲んだ覚えがあるはずだ」

 目覚めに一杯飲んだからな。ほかほかの『ゴリラティー』を飲んだ効能は凄まじく、気がつけば私の顔は緩んでいた。恐るべし『ゴリラティー』。

「落ち着いたようだし、君の名前を教えてくれないか」

「ああ、私は『ディーア・クロノ』だ」

「『ディーア・クロノ』か。よく『守護竜』が暴れる森から帰還してくれた。礼を言う、ありがとう」

「? 感謝を述べられる覚えは無いが?」

「いやいや、帰還してくれただけでもありがとうだ」

「そうか」

「で、だ。ポイントを確認したいから袋を渡して貰えないか」

「ああ」

 スリカ少佐に袋を渡した。

「どれ、ポイントは……1、10、100、1,000、10,000…………ろ、612,100ポイント!?」

「ダメだったか?」

「ダメじゃない。ダメじゃないけど……なんだこのポイントは。こんなの私でも……いや、もしかしたら歴代最高得点なんじゃ……」

 ぶつぶつ呟き、パンっと両手を叩いて目を閉じるスリカ少佐。
 その両手の甲には幾何学模様が浮かんでおり、30秒程で目をゆっくりと開く。

「……もうこの森にいる人間で生きてるのは自分とクロノだけか」

 どうやら生存確認をしていたようだ。

「いいだろう、クロノ。試験は合格だ。これよりガーディアンズ本部へ転移する」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...