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第五話 狩の始まり

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「うりゃあああああ!!」

「どけどけっ!!」

「ひゃっはーーーーっ!」

 開始の合図とともに、周りの女達が我先にと森へ入っていく。

「私も行くか」

 人気の少なさそうな場所があったので、私はそこを目指す。そしたらペンタも一緒になって並んでトコトコついて来た。

「ねえ。クロノはどうしてそんなに落ち着いてるの」

「さあな。ペンタは楽しそうだな」

「そんなことないよ。えへへへ」

 照れた様子のペンタ。可愛いやつだ。
 私はペンタの頭に手を乗せながら一言。

「死ぬなよ」

「!?」

「ん? どうした?」

「ううんなんでもない。クロノこそ死なないでね」

「顔が赤いぞ。そんな調子でこの試験を受けるのは危険だ。ペンタはここで少し休んでから森に入れ」

「余計なお世話だよ!」

 むーっと頬を膨らまして私の手を解いた。

「そんな元気があるなら大丈夫そうだな」

「当たり前だよ」

 ペンタが手を高速で動かし。

「それじゃあねクロノ。『音飛びの術』」

 その瞬間、ペンタは音を立てず一瞬にして私とは反対の森へと消えていった。

「もう行ったか、私も負けてられないな」

 正面のテントから見てペンタは西の森へ。私は東の森へと入っていく。

 ーーーーーー

「明るいな」

 森の中は木々から生えている葉っぱが薄いおかげか空から光が程よく入り明るかった。
 そして木々は見える範囲全て同じ形をしており、生え方も何もかも一緒。違うのは高さのみだ。

「グオオォ!」

「キャアアアアァ!!」

 時々猛獣のものと思われる咆哮と女の悲鳴が入り混じり聞こえて来る。
 私はそんなこと気にせず森の中を進んでいると。

 ガチャガチャ。

「金属音?」

「そこのお前。この場から今すぐ逃げろ!」

 正面から全身鎧の女が一人、こちらに走ってきた。

「あんな化け物がいるなんて。
 ここはダメだ、別の入り口から――」

 ピカッ。

「ガハッ!!」

「なんだ?」

 鎧の女を貫いた光が私のすぐ横を飛んでいった。

「不覚。に……げ……」

 腹に大きな穴の空いた女は瀕死になりながら支給された『ギーブボール』を割った。
 すると割れたボールから煙が吹き出し、その煙が女を包み。

「消えた」

 地面に血溜まりを残し、鎧の女はもうそこにはいなかった。

 ピカッ。

 また正面からきた光が私の髪を掠めてきた。

「この光はなんだ?」

「ウゴオオォ!」

 殺気を孕んだ叫び声が聞こえる。

「ウガァァァッ!!!」

 叫び声と共に、ドスン!ドスン! と爆発したような音がこちらに近づいてくる。そしてついに。

「上!?」

「ウガアアアアッ!」

 ドスン! と砂煙を上げながら、そいつは真上から落ちてきた。
 現れたそいつは、私の3倍程の大きさで、右手が砲門のような形になっている――。

「ゴリラ?」

「ウゴガァァッ!」

 ピカッ。

 ゴリラは正面にいる私に砲門を向け光を放ってきた。
 なぜゴリラの腕に砲門? それに体は大きいし。
 いろいろ疑問に思う所は多々あったけど。

「面白い」

 私はゴリラから放たれた光を真正面からデコピンで打ち返した。

「グッギャァァ!」

「この光り、なかなかの熱さだ」

 指を見ると煙が上がっていた。息を吹くとすぐ消えたが。

「さて、ゴリラはどうなったかな?」

 跳ね返した光を顔面にまともに受けたゴリラだが。

「フーフー、ウゴッ!」

 見た感じあまりダメージはないようだ。

「タフなゴリラだ」

「ウゴウゴ、ウゴオオオオ!」

 ゴリラは光だと打ち返されてしまうと理解したのか、今度は右手をハンマーのような形に変形さた。

「面白いな。この星のゴリラはこんな事もできるのか」

「ウガァッ!」

 距離を詰め容赦なくハンマーを私に振り落とす。

 だが。

「その程度か?」

 私はそのゴリラの右手を片手で受け止めた。

「軽いなっ」

 受け止めたハンマーを後方へと軽く押し出した。

「ガァッ!」

 ドスン!

「すまない。少し力を入れすぎたようだ」

 勢いあまり仰向けに倒れるゴリラ。
 私は倒れているゴリラに近づき指を顔に向け。

「これには耐えられるかな?」

「ウゴッオオオオ――!」

 ボッ!

 デコピン一発でゴリラの頭が森の奥深くへ吹き飛んでしまった。
 顔を失ったゴリラは血を噴きながら少しの間痙攣するとすぐに動かなくなった。どうやら完全に死んだようだ。

「もう終わりか。つまらん」

 あまりの弱さにガッカリするも、試験中なので袋をゴリラの死骸にかざして吸い込ませる。
 袋が死骸を吸い込むと数字が0から100に増えていた。

「このゴリラで100ポイントか」

 スリカ少佐の袋にいた猛獣は500ポイント。このゴリラより5倍は高い数字だ。おそらくゴリラはこの森だと弱い部類なのだろう。

「この先にはもっと手応えのある猛獣がいるかな」

 そんな期待を胸に、私は森の奥へと進んでいく。

 ーーーーーー

 自分の合図とともに、次々と入隊希望者たちがこの死の森へと入っていった。

「今回は何人合格するだろうか」

 今自分のいるこの星は、この星に生命体が誕生してから途方もないほどの隕石の衝突を受け、何度も何度も大量絶滅と繁栄を繰り返していくうちに、今では隕石さえもちょっとした災害程度になっている宇宙でも屈指の危険な星だ。

「せめて一人は帰ってきてくれよ」

 もしも合格者が0の場合。自分はガーディアンズから給料を支給されないのだ。それだけは何としてもあってはならない。
 かといって自分は試験監督だ。不正行為なんてあってはならない。

「神様。どうか合格者を出してください」

 前回同様自分にできるのは一人でも多くここへ戻ってくるのを祈るのみだった。
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