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ドラゴンの女王編

第五十七話 天使と過ごす夜

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 お祝いは明日の夜に行うと国王が言い、鬱々な気分のまま夕飯に誘われ、ステーキを飲んでスープをフォークで食べたりしたが、正直味はしなかった(喉が詰まって死にそうにもなった)。

 その日の夜。

 案内された豪華な個室で眠れず、部屋の明かりを消し、月明かりに照らされたままベッドに座っていると――。

 コンコン。

「ジン。起きてるかしら?」

 ドアがノックされ、馬車で移動中ずっと着ていたオオカミのぬいぐるみパジャマ姿のミイナが――

「ジンくん。来ちゃった❤️」

 ――豆腐のように真っ白なパジャマを着た天使も部屋に入ってきた。
 チッ……ミイナだけじゃないのかよ。

「何しに来たんだ?」

「ジンが元気なかったから、心配して様子を見に来たのよ」

「そうか。ありがとうミイナ」

 優しいミイナの言葉で、鬱々した気分が少しだけ晴れてきた。
 が、突然天使が着ていたパジャマを目の前で脱ぎ出した。
 天使の付けている純白の白いスケスケの下着が、月明かりに照らされて神秘的に輝く。

「私も、ジンくんずっと落ち込んでいたから、癒してあげようと思って、勝負下着で来ちゃった❤️」

「……私はお邪魔のようね」

「待ってくれミイナ! まだ部屋に来てから一分も経過していないぞ!」

 頑張って引き留めたが、カップルがイチャつく場に居合わせたような気まずい表情をしたまま、来て早々ミイナが部屋から出て行く。

 そんな、唯一の癒しが去ってしまった……。
 
 落ち込んでいると、天使は俺のすぐ隣に座り、肩にコツンと頭を乗せてきた。
 普段ならはね退けているが、落ち込んだ俺はそのままにしていた。
 すると、天使は俺の手に自身の手を重ねながら、緊張したような声で話しかけてきた。

「ジンくんは……ジンくんは、私の事、嫌い、なの?」

「嫌いだ」

 即答する。

「どうして?」

「お前が俺を殺したりハデス教官呼んで地獄に落としたりするからだ」

「……そっか」

 天使が黙り、俺から話しかけることもなく、しばらくこのままの状態で過ごす。
 部屋の中には時計がなかったため、何分、何時間が経過したのかは知らないが、段々と鬱々だった気分が薄れていき、疲れていたこともあり次第に眠くなってきた。

「ふぁ~~。そろそろ寝るか」

「……ねえジンくん」

 そのまま後ろに倒れて寝ようと思っていると、隣にいた天使が声をかけてきた。
 そういえばコイツの存在を忘れていた!
 ベッドの上から跳ね除けようと思い、平手で手を振りかぶり――。

「馬車に乗る前にも言ったけど、
 わ、私とね。こ、ここでね。子供。作って……みな、い……?」

 緊張したようにモジモジしながら、全身が真っ赤になり、恥ずかしそうに、誘惑するようなうるうるした瞳で俺と目を合わせてきた天使に、跳ね除けようとしたはずの手が止まった。
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