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BL大賞エントリー続編(1ヶ月限定)

115 両思いになった後は受けが拐われるのがベタでしょう。15 おまけ①

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    本文を駆け足で書き上げたので蛇足を少し失礼します。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


    side    カレン(ラインハルトの新助手スレンダー美女)

    研究オタクの変態、ラインハルト様が拐われた。

    その事実が知らされた時、一瞬、城中に激震が走ったけれど、すぐにあの変態王子の事だから何とかなるだろう。むしろ拐った方がお気の毒にみたいな生暖かい雰囲気になった。

   人類史上最も完璧な陛下に溺愛され、奇跡の力をもって何度も国を救われた方になんて事を、と思うかもしれないけれど、あの人のしてきた事を思えば同情は出来なかった。

    だってあの人、発明の事となったらご飯もそこそこ、お風呂に入らないから1年の半分は汚いし、平気で城の人間を実験体にするし、ネズミは巨大化させるし、そうそう、ちょっと意地悪されたからってルカ様を妊娠させた事件は城中に恐怖怪談として語り継がれているのだから。

    まぁ、直ぐに自力で帰って来るだろう。相手を再起不能にしちゃうかもねって、みんな楽観的に思っていた。

    エスカルド王国から帰国した陛下もお変わりなく何事もなかったかのように政務に復帰され、むしろ精力的に取り組まれているお姿に、これよ。これ。陛下はこうでなくては。なんて頼れる麗しいお姿なのって黄色い声が上がりまくっていたわ。悪いけど、あの人がいらっしゃった時はたまに可笑しくなられていたから、あの人いない方がいいんじゃ。の空気に包まれるのも時間の問題に思えたわ。あの人本当に顔だけ上等の変態だったから仕方ないわよね。

    噂の研究オタクの変態の元へ私がドナドナされたのはルカ様が産休に入られると同時だった。辞令が下りたときは恐怖で震えたわ。仕事に行きたくなくて行きたくなくて、縁切りの方法とか調べて実践してみたりしたけど効果もなく初日を迎えた日。朝日を浴びながら絶望に咽び泣いたりして。それでも恐怖の扉を開けた先にいたあの人に10分は見とれて、噂なんて全部嘘だわ嘘に決まってる。こんな美しくて儚い方があんな忌ま忌ましい噂をたてられるなんて、なんて可哀想なの。なんて怒りに震えたりして。

    「なぁ、コピーロボットがあったらアレン、国王やめてもよくないか?    ……新助手、お前のコピー作りやすそうだな。ちょっと試しにお前の寸法計らせてくれよ。あ、正確に計りたいから裸で頼むわ。大丈夫だ大丈夫。仕事だから。絶対、勃たない。」

    そん、な。「星が、綺麗だね。」とでも言っているような涼しい顔で……。

    取り合えず、鳩尾に拳をおみまいしたわ。

    そんな、最悪の出合いだったけど、あの人無駄に顔だけはいいから、黙っていたら空気が浄化されるし、無駄に顔だけがいいから、見ながら飲む紅茶は最高に美味しくなるし、何かしてあげたら、「サンキュー」って見せる笑顔は殺人級に悪どいし……。

    ――1ヶ月程たって、ふと思った。

    どうしてこの研究室にあの人が居ないの?

    どうしてあの人が居なくなって清々したはずなのに日がたつ程に不安になるの?

    どうしてあんないい意味でも悪い意味でもずば抜けて個性的な人が居なくなったのに陛下は平気なの?

    『新助手~。囚人からめぼしい男、拐ってきてくれないか?    囚人なら足がつかないだろう?    ……女体化とか、夢じゃね?    ……』

     ……そうね、あと、1年は帰ってこなくていいかも。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

    
    
    城のバルコニーから陛下が頭を下げている。

    「職務は概ね終わらせた。この国は私がいなくても大丈夫だ。」

    「後は新国王に任せる。」

    「――私は愛する者を取り戻しに行く。」

    「退位させて欲しい。」

    目の前の光景を見て妙にイラついてる私がいた。あの人が見ていたら、「何だ?更年期か?」なんて言われて一発おみまいしているところだと思う。

    「――遅いんじゃないですか?」

    思わず口に出た言葉はストンと胸に落ちていき、更に続いていく。

    「そりゃ無茶苦茶で、ハチャメチャで発明オタクの変態ですから?    その上、龍神に守られてるから踏み潰されても生きてるような人でしょうけど?

    ――あの日、あの人がはってくれた結界のお陰で私の村はモンスターから守られました。寸での所でした。あの時、幼かった私を守る母の背まで魔物の爪が迫っていました。

    そして先の戦争では主人は心臓に穴が開きました。けれどあの人が届けてくれたエリクサーで命を救われました。それでも今度は頭を撃ち抜かれて死んでしまった。けれどあの人の特急エリクサーで生き返る事が出来た。

    私みたいに人生をあの人に助けられた人間が沢山います。

    ……陛下だけじゃない。国中に愛され感謝されてる唯一無二の人なんです。    

    あの人は国の宝でしょう?    国宝を拐われて直ぐに探しにいかないで政務をちまちまやってたなんて、我らが国王陛下は女体化しちゃったのかと思いました。」

    「――つべこべ言ってないで、早く行って!!     」

    

    ――気が付いたら辺りは歓声に包まれ、バルコニーに陛下はいなかった。

    「私……ただ漏れちゃって、た?    」

    「うん。この国1番の男前だった。」

    私が頭を抱えていると弛い感じのルカ様が隣にそっと立っていた。

    「取り合えず、カレンがあの人の事、すっごい好きなのは分かったよ?    」

    「そういえばカレンみないなのをツンデレって言うんだって。あの人、言ってた。」

    キラキラ笑顔でルカ様に言われて、私は消えてなくなってしまいたかった。だってあの人しぶといから絶対生きてるし、まぁ、生きてないと許さないし。帰ってきたら絶対ニヤニヤ笑って、それで……それで……。

    「……大丈夫。あの人、ゴキブリみたいにしぶといから。」

    上を向いて辛うじて堪えた私の涙は、頷いた拍子に瞳から決壊してしてしまった。

    

    
    
    
    
    

      
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