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BL大賞エントリー続編(1ヶ月限定)
110 両思いになった後は受けが拐われるのがベタでしょう。10 ※
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最後のパーツをカチャリとはめると俺は達成感で満たされた。
「信じられない。まさか、完成したのですか?」
そのまさかのまさかだ。俺は万次郎に得意気に頷いた。
「そんな、こんな夢みたいな事が。」
万次郎は何故か生気の抜けたような顔をしてフラフラと何処かへ行ってしまった。
「感激で言葉も出ないか、万次郎。」
俺は浮かれていた。浮かれすぎていた。俺って天才過ぎるだろう?とか浮かれまくっていた。大々的にセレモニーをして国中の民にこの成功を知らしめるとへえかが言ったのも、さもありなんと傲っていた。そうだ、俺は傲っていたんだ。
「――あり?」
セレモニーの最中に何も起こらず世界が凍りつき俺も凍りついた時にやっと気付いた。いつも無表情なへえかのグレイの瞳が初めて揺れたのを俺は騎士に手足を拘束されながらただ、見つめる事しか出来なかった。
――ジャリ。
手足を冷たい鎖で拘束され、俺は自分のバカさ加減に茫然自失で開いた口が塞がらなかった。ポカーン。だ。
俺は一体何をしていたんだ。拐われて、あれは仕方ない。サダ子だぞ?あれは仕方なかった。サダ子が出たらあれしかなかった。
しかし、その後がまずかった。エリクサーを求められてるのに、頼まれてもないのにセントラルヒーリングを作りだした。 エリクサーなら1ヶ月もあれば出来るのに1年以上もかけて国中に行き渡るセントラルヒーリングを作るなんて。イカれてるとしか思えない。俺は愛するアレンを思い出しもせず、発明に夢中になって。これじゃあ愛想をつかされても仕方がねぇな。けどあいつそんな俺が大好きだからそれはねぇか。
冷凍庫の中のような牢屋で、俺は凍死しそうになる寸前にヒールを唱えて何とか生きていた。ヒールってすげぇの。水も食料も与えられず餓死しそうになってもヒールを唱えて何とか回復できちゃうの。流石は天人の血。でも魔力があんまりないからヒールは1日2回までだった。凍死するか、餓死するか、俺の命は魔力次第。こんな事ならもうちょっとレベルあげておけば良かったなんて後悔してももう遅い。
一体何日たったのか、横たわり、ピクリとも動かせなくなった指先を見つめながら、宝物の赤い瞳を思っていた。アレンより先に死ぬわけにはいかない、約束を破って俺が先に死んだら、あいつもう駄目になるって分かってたのに、どうして俺は1つの事に夢中になったらこうなっちまうんだと後悔してもしきれなくて涙も流れなかった。ただただ、死ぬわけにはいかないと気力だけで何とか生きていた。
ヒール、ヒール、ヒール……。
あれ?今日、何回唱えた?死にそうなのに、ヒールが効かない。嘘だろ?俺はこんな所で死ぬのか?俺はまたあいつを一人にしちまうっていうのか。嫌だ嫌だ。絶対に嫌だ。幸せにするって言ったんだ。この世で一番強くて美しい極上の男が、俺みたいな醜男が居ないと駄目なんて、なんて贅沢な人生。そんな人生諦められるか?
「死ん、で、たまるか、っての。」
俺はもう半分死んでるような体を気力で動かし、中心に手を添えた。
「……ん……ふ……」
ポーションはねぇが、俺の精液だけでも効力が何かあるかもしれない。 干からびた体から出るか分からねぇが、俺にはもうこれしかなかった。アレン。アレン。最後にやった日を思い出す。
『愛してる、って言った。ライが。ああっ……』
『ああっ……んんっ……』
パチュンッ、パチュンッ、何度も吐き出した俺の腹の中から溢れ出す白濁をかき混ぜながら、アレンが恍惚の表情で打ち付けてくる。
――愛してる。なんてありふれた言葉であんなに喜ぶなら何度だって言ったのに。 あの時のアレンの凄絶な美しさを思い出すだけで達してしまいそうになる。死にかけてるってのに男って奴は……。
「……んんっ……はぁ、はぁ……。」
手に吐き出された自身の白濁を震える手を辛うじて操りながら口許へ導いていく。何日も何も口にしていなかったとはいえ嫌悪感は拭えないが世界で一番大切な奴を誰にも渡したくない一身でペロリと舐めた。俺が死んだと知ったらアレンは死ぬかもしれない。そんなの絶対に許せなかった。神にだって、悪魔にだってアレンをやるつもりはない。アレンは、この俺の、だ。
「――おお、ユージェラムよ。貴方のご慈悲に感謝します。」
いくら天人の血が入っているとはいえ、数滴の精液だけを飲んで完全復活とはいかなかった俺は、僅かばかりの気力の回復を果たしたが不本意ながら命の灯火が消えようとしていた。滅茶滅茶、生にしがみついていたからこのまま死んでいたら悪霊になっていたと思う。しかし俺は悪霊にならずに生き残った。消え行く意識の中で、俺を救った万次郎はこの国の神に祈っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
明けましておめでとうございます。
11月限定連載復活のはずが、中断してしまい申し訳ありませんでした。
BL小説大賞では沢山投票してくださって本当にありがとうございました。夢は砕けましたがとても嬉しかったです。
新年早々ひどい目にあっているラインハルトです。重ね重ね申し訳ありません。
これからはノンストップでいきます(本当!?)ので最後までお読み下さると幸いです。
「信じられない。まさか、完成したのですか?」
そのまさかのまさかだ。俺は万次郎に得意気に頷いた。
「そんな、こんな夢みたいな事が。」
万次郎は何故か生気の抜けたような顔をしてフラフラと何処かへ行ってしまった。
「感激で言葉も出ないか、万次郎。」
俺は浮かれていた。浮かれすぎていた。俺って天才過ぎるだろう?とか浮かれまくっていた。大々的にセレモニーをして国中の民にこの成功を知らしめるとへえかが言ったのも、さもありなんと傲っていた。そうだ、俺は傲っていたんだ。
「――あり?」
セレモニーの最中に何も起こらず世界が凍りつき俺も凍りついた時にやっと気付いた。いつも無表情なへえかのグレイの瞳が初めて揺れたのを俺は騎士に手足を拘束されながらただ、見つめる事しか出来なかった。
――ジャリ。
手足を冷たい鎖で拘束され、俺は自分のバカさ加減に茫然自失で開いた口が塞がらなかった。ポカーン。だ。
俺は一体何をしていたんだ。拐われて、あれは仕方ない。サダ子だぞ?あれは仕方なかった。サダ子が出たらあれしかなかった。
しかし、その後がまずかった。エリクサーを求められてるのに、頼まれてもないのにセントラルヒーリングを作りだした。 エリクサーなら1ヶ月もあれば出来るのに1年以上もかけて国中に行き渡るセントラルヒーリングを作るなんて。イカれてるとしか思えない。俺は愛するアレンを思い出しもせず、発明に夢中になって。これじゃあ愛想をつかされても仕方がねぇな。けどあいつそんな俺が大好きだからそれはねぇか。
冷凍庫の中のような牢屋で、俺は凍死しそうになる寸前にヒールを唱えて何とか生きていた。ヒールってすげぇの。水も食料も与えられず餓死しそうになってもヒールを唱えて何とか回復できちゃうの。流石は天人の血。でも魔力があんまりないからヒールは1日2回までだった。凍死するか、餓死するか、俺の命は魔力次第。こんな事ならもうちょっとレベルあげておけば良かったなんて後悔してももう遅い。
一体何日たったのか、横たわり、ピクリとも動かせなくなった指先を見つめながら、宝物の赤い瞳を思っていた。アレンより先に死ぬわけにはいかない、約束を破って俺が先に死んだら、あいつもう駄目になるって分かってたのに、どうして俺は1つの事に夢中になったらこうなっちまうんだと後悔してもしきれなくて涙も流れなかった。ただただ、死ぬわけにはいかないと気力だけで何とか生きていた。
ヒール、ヒール、ヒール……。
あれ?今日、何回唱えた?死にそうなのに、ヒールが効かない。嘘だろ?俺はこんな所で死ぬのか?俺はまたあいつを一人にしちまうっていうのか。嫌だ嫌だ。絶対に嫌だ。幸せにするって言ったんだ。この世で一番強くて美しい極上の男が、俺みたいな醜男が居ないと駄目なんて、なんて贅沢な人生。そんな人生諦められるか?
「死ん、で、たまるか、っての。」
俺はもう半分死んでるような体を気力で動かし、中心に手を添えた。
「……ん……ふ……」
ポーションはねぇが、俺の精液だけでも効力が何かあるかもしれない。 干からびた体から出るか分からねぇが、俺にはもうこれしかなかった。アレン。アレン。最後にやった日を思い出す。
『愛してる、って言った。ライが。ああっ……』
『ああっ……んんっ……』
パチュンッ、パチュンッ、何度も吐き出した俺の腹の中から溢れ出す白濁をかき混ぜながら、アレンが恍惚の表情で打ち付けてくる。
――愛してる。なんてありふれた言葉であんなに喜ぶなら何度だって言ったのに。 あの時のアレンの凄絶な美しさを思い出すだけで達してしまいそうになる。死にかけてるってのに男って奴は……。
「……んんっ……はぁ、はぁ……。」
手に吐き出された自身の白濁を震える手を辛うじて操りながら口許へ導いていく。何日も何も口にしていなかったとはいえ嫌悪感は拭えないが世界で一番大切な奴を誰にも渡したくない一身でペロリと舐めた。俺が死んだと知ったらアレンは死ぬかもしれない。そんなの絶対に許せなかった。神にだって、悪魔にだってアレンをやるつもりはない。アレンは、この俺の、だ。
「――おお、ユージェラムよ。貴方のご慈悲に感謝します。」
いくら天人の血が入っているとはいえ、数滴の精液だけを飲んで完全復活とはいかなかった俺は、僅かばかりの気力の回復を果たしたが不本意ながら命の灯火が消えようとしていた。滅茶滅茶、生にしがみついていたからこのまま死んでいたら悪霊になっていたと思う。しかし俺は悪霊にならずに生き残った。消え行く意識の中で、俺を救った万次郎はこの国の神に祈っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
明けましておめでとうございます。
11月限定連載復活のはずが、中断してしまい申し訳ありませんでした。
BL小説大賞では沢山投票してくださって本当にありがとうございました。夢は砕けましたがとても嬉しかったです。
新年早々ひどい目にあっているラインハルトです。重ね重ね申し訳ありません。
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