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番外編

89 その後のチャラ男君と芝生頭君

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キュルキュルキュルキュルキュル……時は遡って、十数年前……。



先生が忽然と学園から消えた後、第1王子だった彼の存在そのものがこの世から消えた。彼の噂をすることさえ許されず彼の名は禁句となり、人々の記憶からも消えていってしまった。全ては彼が国王の子ではないと判明した為だったが彼の存在すら許されないこの世界ではそれさえも無かった事になった。

もう先生は何処にも存在しない。

落ち込む俺を親衛隊なる男達が励ましに来るが、男に励まされても元気は出ない。出る筈がない。

何故なら俺は女の子が好きだから。

そう、実際の俺は真面目で大人しくて努力家。チャラくなんてない。家柄は良くて魔力が莫大にあってもこんな学園に入るつもりなんてなかった。

俺の可愛い従妹が

『学園に入って殿方同士の恋愛を見て来てくださいな。そして私に教えて下さい。』

なんて言うまでは。

生粋のお嬢様の従妹は領地が隣同士の為にいつも一緒に遊んでいた。俺は従妹で可愛い彼女と結婚するつもり満々だった。メロメロに惚れていたんだ。

「成人したら結婚しよう。」

「無理ですわ。私、殿方同士の恋愛模様をたくさん知りたいのです。ルカ様があの学園に入られて教えて下さったら卒業なさった後、考えてもよろしくてよ?」

彼女は男同士の恋愛を好む女の子だった。

「ルカ様は顔が麗しくていらっしゃるのだから、もっとチャラい感じで行きましょう!」

もう勝手にしてくれ。

俺は彼女が言うがままに自分を偽り誰とでも寝るチャラい男として入学した。

彼女のプロデュースは完璧で俺は今や抱かれたい男第3位の人気だ。

全く嬉しくない。

こんな従妹に夢中な男嫌いの俺が先生に恋したのはあまりにもイレギュラーな事だった。

だって男だよ?背も同じくらいだし、体格もかわらないのに……何!?あの細くて白い首。この学園に来て初めて勃ったよ。先生には辛うじてチャラく言ったけど、その日は泣いたよ。男相手に勃ったなんて従妹には報告出来なかったよ。絶対に喜ぶに決まってる!

……でもさあの着込んでる服の中が気になって気になって仕方なくなって、

『あ、俺たまってるんだ。』

って気付いた。この男ばかりの学園に入ってからそんな気になれず全然抜いてなかったんだ。意を決して部屋で抜いてると最後は先生の首に吸い付いてる所を思い浮かべてイった。

取り合えず先生としてみるかと迫ったらエロいし体綺麗だしで夢中になってたらミンチにされたよ。

もうガクブルだよね。

けどけどあの素顔見ちゃったら……こりゃ仕方ないわ、と。  俺、正常だったわ、と。

だって天使だよ?性別なんて関係ないだろ?

でも相手はこの国の第1王子で天使みたいに綺麗で男前。最強だった。俺なんかが釣り合う筈がないよな。

燻る思いを胸に側に居るだけで幸せだった。

――まさか先生が居なくなるなんて思ってもみなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


困ったなぁ。俺は途方に暮れていた。目の前にはこの学園では可愛いと言われる部類の男。

「僕、ルカ様になら何をされてもいいです!お願いします!抱いて下さい!」

校舎の死角にあたるこの場所で俺はグイグイ迫られていた。

ないわ~。

「子猫ちゃん。シたいのは山々なんだけどぉ、先約があるんだよねぇ。ごめんねぇ。」

顔の前に両手を合せ困った顔で謝る。いつもならこれで諦めてくれるのだが今日は違った。

「そう仰られると思って僕、準備してきたんです!」

そう言って服をどんどん脱いでいく男。

ひぃー!ケツの穴こっちに向けんなぁ!気持ち悪い!!

恐怖で固まっていると男は俺のズボンに手をかけ脱がし俺の中心をくわえようと口をパクリと開けた。

ひぃー!思わず突き飛ばした。

「きゃっ!」

「きゃ」ってなんだ。「きゃ」って!

裸で地面に尻餅をつく男にもう恐怖しかない。

「何をしている!」

俺が恐怖に戦いていると突如現れた緑色の髪の男が木刀を振りかざしてきた。

咄嗟に魔法で防御したが威力が強くて腕がジンジンする。

「嫌がる相手に無理矢理とは!このクズが!殺されたくなかったら失せろ!」

「……お前、嫌いだ。」

チャラ男の仮面を被らず素で返す。

顔もいつものヘラヘラではなく無表情になっているが知ったこっちゃない。嫌いな男に迫られ怯えていたのにその男を襲った事にされて殺されかけるなんて!この男勘違いも甚だしい!ムカつく。ムカついてしょうがない。無駄に爽やかで顔が良いこの男にむかっ腹が立つ!俺だって短髪にして爽やかになりたかった。チャラ男なんかになりたくなかった。

「やめてー!僕の為に争わないで下さーい!」

裸の男が悲劇のヒロインの如く叫んでいる。

俺は空を見上げた。

何だこれは俺は女の子が好きだ。

でも、女の子じゃなくても先生が好きだ。

つまりお前なんか好きじゃない。

……先生ぇ、今何処にいるんだよぉ?

ジワリと溢れ出る涙を拭うと俺はその場から逃げたした。
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